正反対な僕たちは

文化祭当日。
前日の雨が嘘のように晴れ渡り、校内は他校の生徒や保護者でごった返していた。

葵と翔太が企画した「ホラー喫茶」は大盛況。受付も接客も順調に回り、シフトの交代時間が近づいていた。

(......このあと、休憩時間だ)

翔太はズボンのポケットの中で、握りしめたパンフレットの感触を確かめていた。前日のあの屋上で、泣きじゃくる葵を抱きしめてから、翔太の中で彼女への想いは溢れんばかりに膨らんでいる。

(葵ちゃんと一緒に、文化祭回りたいな......。照れくさいけど、ちゃんと誘おう)

「一ノ瀬さーん!シフト代わったよ、お疲れ様!」
「ありがとうございます。......日向くんも、お疲れ様でした」

葵がエプロンを外し、控え室から出てくる。
翔太は意を決して、「ねえ、葵ちゃん。この後の休憩なんだけどーー」と口を開かけようとした、その時だった。

「あ、一ノ瀬さん!探したよ〜!」

割り込んできたのは、他クラスの男子数人だった。

「うちのクラスの中庭ライブ、もうすぐ始まるんだけど一緒に見に行かない?一ノ瀬さん、この後休憩なんでしょ?お礼にジュース奢るよ!」
「あ......えっと......」

突然の誘いに、葵は困惑したように立ち尽くす。
男子生徒たちは「行こうよー!」と楽しそうに葵を囲んでいる。

それを見た翔太の足が、ピタリと止まった。

(......あ)

胸の奥が、ぎゅっと嫌な音を立てて痛む。
葵は綺麗で、可愛くて、成績も学年トップ。前日見せてくれたあの儚げで愛おしい素顔は自分しか知らないけれど、表向きの彼女はやっぱり誰からも憧れられる存在だ。

(おれなんかより、あっちと回ったほうが楽しいのかな......。昨日あんなにかっこいいいこと言ったのに、俺、何してるんだろ)

急に自信がなくなって、ポケットの中のパンフレットを握りつぶす。
葵に断られるのが怖くて、翔太は引きつった笑顔を貼り付けた。

「あ、じゃあ俺、次のシフトの準備あるから......じゃあね!」

逃げるように葵から背を向け、その場を走り去ってしまった。

「あ、日向くん......!待って......!」

葵の手が空を切る。他クラスの男子からの誘いなんて、一瞬で頭から吹き飛んでいた。