正反対な僕たちは

辿り着いたのは、普段は鍵がかかっているはずの、雨の降る屋上への踊り場。
葵は冷たい壁に背中を預け、ズルズルと膝から崩れ落ちた。

呼吸が浅い。視界が滲む。
「優等生の一ノ瀬葵」の限界が、音を立ててバラバラに崩れていく。

(もう、無理......。私、完璧なんかじゃない......)

その時、バンッ!と激しい音を立てて重いドアが開いた。

「ハァ......ハァ......っ!見つけた......!」

息を切らして立っていたのは、翔太だった。
葵は青ざめた顔で首を振る。

「来ないで......お願いだから、見ないで......!戻って仕事を......」
「仕事なんてどうでもいい!!」

いつも穏やかな翔太が、見たこともないほど大きな声を張り上げた。
翔太は葵の前にしゃがみ込むと、彼女の細い腕を、決して痛くないけれど振り払えない強さでギュッと掴んだ。

「頼むから、俺の前でまで完璧でいようとしないでよ......!」
「っ......」
「手帳も見た。親のプレッシャーも知ってる。でもさ、葵ちゃんが壊れちゃったら何の意味もないんだよ!クラスのことも、文化祭のことも、俺に頼ればいいじゃん!なんで全部一人で背負おうとするんだよ......!」

翔太の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。自分のために本気で怒り、本気で泣いてくれようとしている。

「完璧じゃなくていい......っ!情けなくても、弱くても、俺はそのままの葵ちゃんが好きなのに......!」

「あ......」

まっすぐで、温かくて、あまりにも優しい言葉。
それが葵の心に張り詰めていた最後の糸を、プツリと切った。