正反対な僕たちは

文化祭の準備が始まって一週間。
放課後の教室で、実行委員の予算案をまとめていた時のことだった。

「葵ちゃん、ちょっとそっちの領収書見せてーーあ」

作業の手を止めて葵の机に近づいた翔太は、葵が席を外した隙に、開かれっぱなしになっていた彼女の手帳が目に入ってしまった。

(うわ、すごい......)

そこにあったのは、翔太の想像を絶する光景だった。
黒、赤、青のペンで、隙間なくびっしりと書き込まれたスケジュール。

『〇〇模試過去問 2年分』
『塾 難関大対策講義』
『文化祭資料作成(予備日なし)』
『次回実力テスト 全教科満点必須』

ページの隙間には、消せるペンで何度も書き直されたような跡と、小さな文字で『休むな』と書かれた自分への殴り書き。
「余白」なんてどこにもない。息を吐く暇すら自分に許していないような、あまりにも息苦しい手帳。

「日向くん?......あ」

資料を持って戻ってきた葵が、翔太の視線に気づいてサッと手帳を閉じた。
一瞬だけ、葵の瞳に動揺と、「見られたくない部分を見られた」という怯えの色が走る。

「......勝手に見ないでください」
「ごめん......ただ、すごいスケジュールだなと思って。葵ちゃん、家でも全然休めてないんじゃない?」

翔太が心配そうに尋ねると、葵はいつもの「完璧な仮面」を貼り直し、冷ややかに微笑んだ。

「当たり前です。学年トップを維持するのは、そういうことですから。......親にも『1位じゃない葵に価値はない』と言われていますし。別に、大したことありません」

平然と言ってのける葵。けれど、その手帳を握りしめる指先が、微かに震えているのを翔太は見逃さなかった。

(......この人、ずっと一人でこんな重いものを背負って戦ってきたんだ)

胸が締め付けられるような愛おしさと、切なさが翔太の中に押し寄せた。