色彩は嘘を暴く

事件から三ヶ月が経ち、後宮には爽やかな新緑の季節が訪れていた。
そして、皇帝の寝所である「乾清宮」の隣には、本当に前代未聞の部屋――通称『看守室』が誕生していた。

部屋の主である私は、贅沢な紫檀の机に頬杖をつきながら、目の前に座るこの国の最高権力者を冷ややかな目で見つめていた。

「雪。今日の朝廷は実につまらない報告ばかりでね。私は一刻も早く、君の淹れたお茶が飲みたくて仕方がなかったんだよ」

皇帝・冽は、極上の甘い微笑みを浮かべながら、私の手を取ろうと指先を滑らせてくる。
だが、彼の口元から立ち上っているのは、【薄汚れた、真っ黒な嘘の煙】だった。

「陛下。はい、今のセリフは零点ですわ」

私は容赦なく彼の手を扇でピシャリと叩いた。

「手厳しいな、我が家の看守殿。一体どこが嘘だと言うんだい?」
「お茶が飲みたかったというのは本当でしょうね。ですが『朝廷がつまらなかった』というのは大嘘です。東部国境の静家の残党を、今日朝一番の審議で見事に一網打尽にされ、心の中で快哉を叫んでいたのが丸見えですわ。そんな真っ黒な煙を吐いて私に甘えるのはおやめください」
「くっ……。本当にお前には何も隠せないな」

冽は観念したように苦笑すると、いつもの冷酷で知的な「本音の顔」に戻った。同時に黒い煙が消え去り、彼の周囲には、私だけに見せる【深く穏やかな、心地よい桃色の煙】が優しく広がる。

「だが、お前がここへ来てから、後宮の空気は実に清々しい。他の妃たちも、お前が私の隣で『嘘の監視』をしていると知ってから、妙な陰謀を企てて甘い罠を仕掛けてくることがなくなった。おかげで政務に集中できる」
「それは良かったですわ。私の存在が、後宮の健全な防犯システムになっているようで何よりです」

私がフッと笑うと、冽は私の手首を掴み、今度は逃がさないように指を絡めてきた。
彼の口元からは、煙が一切出ていない。

「雪。私は今、お前に一つも嘘を吐いていない。……今夜は、このまま私の傍から離れるな」

肌に触れる彼の体温は、三ヶ月前よりもずっと温かかった。彼の全身から溢れる、混じり気のない純粋な桃色の光が、私の白い衣服を、そして私の凍りついていた心をも、優しく包み込んでいく。

「……仕方がありませんわね。陛下のその本音の色彩に免じて、今夜は特別に居残り監視をして差し上げます」

私たちは視線を交わし、言葉にならない確かな絆を確かめ合うように、静かに唇を重ねた。
愛のない契約から始まった私たちの婚姻生活は、これからも世界で一番カラフルで、世界で一番誠実な「騙し合い」として続いていくのだろう。