「お前のせいで誤解があった」
「一体なんのお話でしょうか?」
寝所で巴を寝かしつけたあと、実弥はその足で真人を呼び出し責めた。
「……九尾の婆さんの件だ」
密かに訪ねていた九尾の狐の老女を、女人などと表現する真人が原因だった。
真人は女全般を女人と呼び丁重に扱うところがある。
元は三十を過ぎたいい大人なので子供の姿で手持無沙汰な分、真人は常に女から可愛がられるよう努めているそうだが、思わぬ弊害が出たものだ。
寝所で深刻な顔をして何を言い出すかと思えば、巴は夜伽を提案してきた。
あの会話があった日の出来事のため、原因はそれしかない。そう見当付けている。
真人からは、九尾の元に通っているとまた蘆屋家の一派があらぬ勘繰りをすると提言されただけだ。
少々柄の悪い彼らは血気盛んで偉大なる父ーー蘆屋道満亡き後も蘆屋家に妄信的だ。そのため勝手に動き始めるかもしれない。
だから止めた方がいいという意味だったが、巴は実弥が女の元に通っていると考えたようだ。
九尾の老女の屋敷には若い女狐も居るが、婚姻した手前遊んでなどいない。
遊女に変化させ貴族らに取り入って得た情報を買っていただけである。
だが、そんな事をいちいち説明する実弥ではない。
念のため手練れが良いと突き放したが、巴は良くも悪くもしぶといところがある。
妙な頑張りを見せないでもらいたいものだ。
「それで、無理矢理寝かしつけてきたと。奥方様に優しい言葉をかけてあげました?」
かいつまんで真人のせいで気遣われたことを窘めると急に不安気な顔をされた。
「さぁな。どう受け取ったかなんざ分からない」
「もっと大事にしてくださいよ」
「している」
「式神としてではなくてですね……」
真人は巴を気に入っているようで、巴が何をして過ごしていたか、何に興味を抱いているか訊かずとも報告してくる。
「奥方様は美しくて勤勉で、ここにも馴染んで下さってます……それに実弥様のお好きなものをお持ちなのに、毎日よく耐えられますね」
恨めしそうに言えば、稚児の姿で下世話なことを零し溜息をつかれた。
おおよそ豊満な胸の話だろう。
「仮初の相手だ。手放す予定の式神に手をつける奴がいたら、そいつはとんだ阿呆だろ」
「一体なんのお話でしょうか?」
寝所で巴を寝かしつけたあと、実弥はその足で真人を呼び出し責めた。
「……九尾の婆さんの件だ」
密かに訪ねていた九尾の狐の老女を、女人などと表現する真人が原因だった。
真人は女全般を女人と呼び丁重に扱うところがある。
元は三十を過ぎたいい大人なので子供の姿で手持無沙汰な分、真人は常に女から可愛がられるよう努めているそうだが、思わぬ弊害が出たものだ。
寝所で深刻な顔をして何を言い出すかと思えば、巴は夜伽を提案してきた。
あの会話があった日の出来事のため、原因はそれしかない。そう見当付けている。
真人からは、九尾の元に通っているとまた蘆屋家の一派があらぬ勘繰りをすると提言されただけだ。
少々柄の悪い彼らは血気盛んで偉大なる父ーー蘆屋道満亡き後も蘆屋家に妄信的だ。そのため勝手に動き始めるかもしれない。
だから止めた方がいいという意味だったが、巴は実弥が女の元に通っていると考えたようだ。
九尾の老女の屋敷には若い女狐も居るが、婚姻した手前遊んでなどいない。
遊女に変化させ貴族らに取り入って得た情報を買っていただけである。
だが、そんな事をいちいち説明する実弥ではない。
念のため手練れが良いと突き放したが、巴は良くも悪くもしぶといところがある。
妙な頑張りを見せないでもらいたいものだ。
「それで、無理矢理寝かしつけてきたと。奥方様に優しい言葉をかけてあげました?」
かいつまんで真人のせいで気遣われたことを窘めると急に不安気な顔をされた。
「さぁな。どう受け取ったかなんざ分からない」
「もっと大事にしてくださいよ」
「している」
「式神としてではなくてですね……」
真人は巴を気に入っているようで、巴が何をして過ごしていたか、何に興味を抱いているか訊かずとも報告してくる。
「奥方様は美しくて勤勉で、ここにも馴染んで下さってます……それに実弥様のお好きなものをお持ちなのに、毎日よく耐えられますね」
恨めしそうに言えば、稚児の姿で下世話なことを零し溜息をつかれた。
おおよそ豊満な胸の話だろう。
「仮初の相手だ。手放す予定の式神に手をつける奴がいたら、そいつはとんだ阿呆だろ」



