式神の従属婚 〜悪辣陰陽師は出来損ないの騰蛇を娶る〜

真人(まひと)は実弥の信奉者だ。
きっかけは六年前に遡る。

薬師であった真人は旅の途中、村の少年が犬の妖に喰い殺されそうになっているのを見つけた。
慌てて助けたところ、その少年の家族がもてなしたいから泊まっていけと言ったのだ。

天気も悪く、雨宿りがてら宿泊させてもらうことにしたが、その夜に真人は襲われた。

その少年の一家はみな犬神憑きで、旅人を騙して連れ帰っては喰い殺していたのだ。

瀕死の状態の真人はその家から必死に這い出たが、しかし引きずり戻されそうになり、もう駄目かと観念した。

その時だ。
実弥が現れ、犬神を全て斬り伏せ助けてくれたのだ。

それだけでない。
既に虫の息だった真人に「禁術でよければ生きながらえさせてやる」と言ったのだ。

禁術の代償に身体は稚児となってしまったが大した事ではなかった。

ただし犬神に殺されかけたことで犬神を寄せ付ける体質となっており、そんな真人に実弥は術を施した数珠を与えてくれた。

数珠を持っていれば身を守れるという。

真人は命拾いしたことで、実弥について行くことに決め、そして陰陽道を師事して欲しいと願い出た。

初めこそ拒否されたが、しぶとくついて行くと最終的に実弥は真人を歓迎した。

理由は真人が薬術に詳しかったことと、呪具を集める愛好家であることが判明したからである。

意気投合とまではいかないが、実弥もまた呪具を集めていたのだ。

以来行動を共にしているが、実弥は真人のように純粋に呪具に魅入られているから集めているわけでなく、残穢を祓うために集めているらしい。

そして特殊な呪具は陰陽領を滅するためにも必要だと言っている。

なんでも父親の復讐のためだという。

その復讐の過程として、実弥は最近になって十二天将という安倍家が使役する式神を強奪すべく召喚術を展開したのだが、現れたのは騰蛇の一族らしき娘だった。