式神の従属婚 〜悪辣陰陽師は出来損ないの騰蛇を娶る〜

鎖骨に白の鱗が一つ。

これが唯一、巴を騰蛇(とうだ)の一族たらしめるものだった。

そのせいで式神にも人間にも属する事が出来ず、粗末な扱いをされ飼い殺されている。

巴に自由などない。

――あぁ、ここから出てみたい。

生まれながらにして所有物で、出来損ないで、年中咲き誇る不思議な桃の花より先の外の世界を見た事がない。

日が登る前の静かな闇を眺めてはいつも密かに願っていた。

自分が本当に神の使いであるならば、この悲痛は届いているはずなのに、しかし神は一度も巴に道を示してはくれない。

もしくはそれが天啓なのか。

お前に自由などないと告げられているようで、侘しさからいつも頬に涙が伝う。

巴の朝はそうして涙を一筋流して始まり、皆が寝静まるまで心を殺しようやく終わる。

だから空に禍々しい暗雲が立ち込めた日、本能で感じたのだ。

自由を得るにはこの呼びかけに応じるしかないと。