狐に嫁入り

 傷の処置、療養、静養――。
 それらが終わった途端、日々は目まぐるしく動き始めた。
 正式に屋敷へと迎えられて、女中らの鋭い視線は痛くて、けれどもその人たちが職を辞するということは不思議と一件もなくて。
 寧ろ、これからが大変なのではないかと、初は背水の覚悟を決め直した。

 意外だったのは、それらが落ち着いた後に村から届いた手紙によれば、村や母への送金は、初が屋敷で治療を受けている間に済まされていたという事実。
 存外、確と約束を守る類の人間なのか。
 或いはただ本当に、夫婦問題や後継ぎ問題が、心底疎ましかったが故か。
 ともあれそれが果たされただけでも、決定的な何かが起こるまでは頑張ってやろうと思えた。

 ――決定的な何か。

 それは、嫁いだ家を出るに足る危機か。
 或いは反対に、家を出ないと決められるような嬉々か。
 それは――それだけは、絶対にないと言い張れる。
 あんなの、自分の好きな性格では決してないから。

 それに――。