狐に嫁入り

 そんな日が数日――気付けば、半月ほど続いていた。
 日中は町へ仕事を探しに、それが終わったら屋敷で残った仕事。
 文句など言えよう筈も無かった。
 元よりそういう契約。そういう約束。
 朝貰えているだけでも有難い。
 仕事のない自分は今、この屋敷にいることで辛うじて生かされているようなものなのだ。
 たまに紅緒が持ち帰る食材を共にする時だけは、平時より腹は満たされる。
 それ以外の時に腹が満たされないのは、仕事に有り付けず、屋敷でもそれが見つけられないから。

 全ては自分の力不足。
 無力さが創り上げた現実だ。
 そんなことを痛感している時だというのに、

「君は――」

 今最も疎ましい顔と、鉢合わせてしまった。
 わざとらしい顔は、声音は、あの日の朝に見たものと同じ。
 その素性を知っている初からすれば、唯々気に食わないことこの上ない。

「少し瘦せましたか?」

「…………」

 初は答えない。
 交錯した視線まで逸らして、それを足元へと落として、向かう先へと足早に踏み出す。
 すれ違いざま、

「俺の盾になるって女が、どこで何をしてやがる」

 ぽそりと、そんなことを囁かれた。
 瞬く間にも、熱く沸いた血が頭に巡ってゆく。

 けれどもそれは、努めて抑えて。
 履き戻しそうな心地と共に息を吐いて。
 もう貴方には関係ないことでしょう――それだけ告げて、初はその場を去った。