「みゆは自分を押し殺して人に寄り添ってんだよ?なんでそこまでして、ここにいるやつらのことを救おうとするのか、あたしには理解できない」
この言葉に、ニアちゃんのみゆへの心配な気持ちが現れたと感じた。
押し殺して寄り添っているなんてことはない。それでも、ニアちゃんにはそう見えていて。
それは、みゆを見つけた最初の頃の私と重なった。
みゆはじっと話を聞く。
「それで結局自分が疲れてたら、元も子もない。楽になるためにここへ来たはずなのに。普通から逃げるためにここへ来たはずなのに、これじゃあ何も…」
ニアちゃんが、苦しそうな顔をする。
そうか。二人は、普通から遠ざかろうと、一時の周囲の注目をかえりみることなく、ここへやってきた。
そうしてでも、ここへ来たい理由があった。
「みゆはずっと、苦しむことになる」
普通じゃなくなったほうが楽なのに、と、小さくニアちゃんが呟いた。
苦しんでいるのは、みゆだけじゃない。ニアちゃんもだよ。
しかし、ニアちゃんは墜ちてしまった。暗闇の、かろうじて光が見える場ところへ。
それならば。
「普通」にとらわれて自分を見失うならば、そんな縛りから抜け出して、その先で光を見つければいいんだよ。
普通だとか、普通じゃないとか。
そんなこと、もういいんだよ。
みゆが口を開いて、こう言った。
「あたしは苦しんでなんかない。みんなの笑顔が見られることなんて、すごい嬉しいことだから」
「でも、みんなっていうのはみゆが依存されて…」
「これは依存じゃない。違うよ、ニア」
みゆが、ニアちゃんの手を強く握る。
そして、こう言った。
「ニアが思ってるよりも、ここはあったかいよ」
ニアちゃんは、じっとみゆを見つめていた。その眼差しには、数々もの不安や葛藤が混ざっているように見えた。
自分はもう光のさす方へ行かないと決めたはず。それなのに、どうしてか心が揺らぐ。
強がらなくていいんだよ。人を頼っていいんだよ。
そう言いたいけれど、ニアちゃんにこんなありきたりな言葉を言うには遅いような気がして。
私の中でも、伝えたいことがぐちゃぐちゃになって、言葉が出てこなかった。
散々裏切られて、何かを信じることが怖くなってしまったあなたの心に、私たちはどう寄り添えばいい?
今はただ、あなたの手に灯る温もりを頼りにしてほしい。そう思った。
もうその手を離さなくていいんだよ。
それでも、ニアちゃんはみゆの手を振りほどいた。
「そんなことわかってるよ、最初から」
すぐにでも消えてしまいそうな、小さな声だった。
「あたしはそれを信じられない。…怖い。みゆみたいに、そこまでしてここの人の役に立とうとするのは」
ふとこぼれた「怖い」という言葉が、私の身体に浸透していくようだった。
「ここにどんなやつがいるって言うんだよ」
そんなニアちゃんの発言に、私はとっさに反応した。
「ここには、頑張る人たちがいるんだよ」
ほしかげ界隈の人々を傷つけることは、やめてほしかった。
みんな、もうこれ以上傷を負えないほどの、深く重いものを抱えているから。
私にはその苦しみを全て理解することなんかできない。
何もかも、見聞きしただけで相手を理解することなんて、本当の理解ではない。
自分が経験して、同じ境遇や、同じ思いを感じなければ、到底全て理解できない。
だからこそ、ここがある。
悩みを打ち明けることならば、見知らぬ大人や、顔も見られないネット上の友達でもいいのかもしれない。
でも、その悩みや葛藤を、親身になって聞いてくれる人がいるとするならば。
そっと寄り添って、冷え切った心をじんわりと温めてくれるような人がいるとするならば。
それはきっと、見知らぬ大人でもない、ネットの友達でもない。
似た者同士、なのだ。
本当に心の拠り所となるのは、同じような経験をして、同じような場所に立って、同じような思いをした人たちであるのではないか。
私はここに来て、そう思うようになった。
「一緒に今と向き合って、前を向こうとしている人たちが、ここにはいるんだよ!」
それだけは、わかってほしかった。
思わず声を張ってしまい、落ち着け、と自分に言い聞かせて深呼吸をする。
自分でも、これほどほしかげ界隈を大切に想うようになる日が来るなんて考えてもいなかった。
「私も初めは怖かったよ。みゆがどうしてこんなことをしてるのか、不安になったときもあった」
みゆが目を見開いて、申し訳なさそうな表情を浮かべる様子が見えた。
「でも、気がついた。ここにいる人たちは、みんな前を向こうとしてるの。ずっとここに居座っているだけじゃない。仲間とたくさん話して、痛みを分け合って、もう一度前を向こうと思える場所だってわかったんだよ」
この言葉に、ニアちゃんのみゆへの心配な気持ちが現れたと感じた。
押し殺して寄り添っているなんてことはない。それでも、ニアちゃんにはそう見えていて。
それは、みゆを見つけた最初の頃の私と重なった。
みゆはじっと話を聞く。
「それで結局自分が疲れてたら、元も子もない。楽になるためにここへ来たはずなのに。普通から逃げるためにここへ来たはずなのに、これじゃあ何も…」
ニアちゃんが、苦しそうな顔をする。
そうか。二人は、普通から遠ざかろうと、一時の周囲の注目をかえりみることなく、ここへやってきた。
そうしてでも、ここへ来たい理由があった。
「みゆはずっと、苦しむことになる」
普通じゃなくなったほうが楽なのに、と、小さくニアちゃんが呟いた。
苦しんでいるのは、みゆだけじゃない。ニアちゃんもだよ。
しかし、ニアちゃんは墜ちてしまった。暗闇の、かろうじて光が見える場ところへ。
それならば。
「普通」にとらわれて自分を見失うならば、そんな縛りから抜け出して、その先で光を見つければいいんだよ。
普通だとか、普通じゃないとか。
そんなこと、もういいんだよ。
みゆが口を開いて、こう言った。
「あたしは苦しんでなんかない。みんなの笑顔が見られることなんて、すごい嬉しいことだから」
「でも、みんなっていうのはみゆが依存されて…」
「これは依存じゃない。違うよ、ニア」
みゆが、ニアちゃんの手を強く握る。
そして、こう言った。
「ニアが思ってるよりも、ここはあったかいよ」
ニアちゃんは、じっとみゆを見つめていた。その眼差しには、数々もの不安や葛藤が混ざっているように見えた。
自分はもう光のさす方へ行かないと決めたはず。それなのに、どうしてか心が揺らぐ。
強がらなくていいんだよ。人を頼っていいんだよ。
そう言いたいけれど、ニアちゃんにこんなありきたりな言葉を言うには遅いような気がして。
私の中でも、伝えたいことがぐちゃぐちゃになって、言葉が出てこなかった。
散々裏切られて、何かを信じることが怖くなってしまったあなたの心に、私たちはどう寄り添えばいい?
今はただ、あなたの手に灯る温もりを頼りにしてほしい。そう思った。
もうその手を離さなくていいんだよ。
それでも、ニアちゃんはみゆの手を振りほどいた。
「そんなことわかってるよ、最初から」
すぐにでも消えてしまいそうな、小さな声だった。
「あたしはそれを信じられない。…怖い。みゆみたいに、そこまでしてここの人の役に立とうとするのは」
ふとこぼれた「怖い」という言葉が、私の身体に浸透していくようだった。
「ここにどんなやつがいるって言うんだよ」
そんなニアちゃんの発言に、私はとっさに反応した。
「ここには、頑張る人たちがいるんだよ」
ほしかげ界隈の人々を傷つけることは、やめてほしかった。
みんな、もうこれ以上傷を負えないほどの、深く重いものを抱えているから。
私にはその苦しみを全て理解することなんかできない。
何もかも、見聞きしただけで相手を理解することなんて、本当の理解ではない。
自分が経験して、同じ境遇や、同じ思いを感じなければ、到底全て理解できない。
だからこそ、ここがある。
悩みを打ち明けることならば、見知らぬ大人や、顔も見られないネット上の友達でもいいのかもしれない。
でも、その悩みや葛藤を、親身になって聞いてくれる人がいるとするならば。
そっと寄り添って、冷え切った心をじんわりと温めてくれるような人がいるとするならば。
それはきっと、見知らぬ大人でもない、ネットの友達でもない。
似た者同士、なのだ。
本当に心の拠り所となるのは、同じような経験をして、同じような場所に立って、同じような思いをした人たちであるのではないか。
私はここに来て、そう思うようになった。
「一緒に今と向き合って、前を向こうとしている人たちが、ここにはいるんだよ!」
それだけは、わかってほしかった。
思わず声を張ってしまい、落ち着け、と自分に言い聞かせて深呼吸をする。
自分でも、これほどほしかげ界隈を大切に想うようになる日が来るなんて考えてもいなかった。
「私も初めは怖かったよ。みゆがどうしてこんなことをしてるのか、不安になったときもあった」
みゆが目を見開いて、申し訳なさそうな表情を浮かべる様子が見えた。
「でも、気がついた。ここにいる人たちは、みんな前を向こうとしてるの。ずっとここに居座っているだけじゃない。仲間とたくさん話して、痛みを分け合って、もう一度前を向こうと思える場所だってわかったんだよ」



