広場から一歩外に出ると、暗くなってからの町はやはり慣れがたいもので、まだ少しだけ怖さが残っている。
みゆとゆのあくんは、二人なら大丈夫だと言ってくれたが、年下であろうるのあちゃんと二人きりだと、どこか頼りない。
「さなちゃん、もうすぐ着くよ!」
意外と早くそう言われ、私はきょろきょろと辺りを見回してみる。
軽食が買えそうなところなんて、あるかな…?
るのあちゃんが左へ曲がったので、路地裏へ入るのかなと思ったら。
そこには、ネオンの看板が輝くお店が立ち並んでいた。
「ここ、なに…!?」
「うちのお気に入りの場所!今日はこのお店にしようかなって」
るのあちゃんが指差した先には、パフェという文字がポップなフォントで書かれていた。
外観はネオンで彩られており、とても可愛らしい。
怖さなんかは忘れて、可愛さに胸がときめいていた。
「このお店は、昼間は軽食、夜はパフェを売ってるの。これくらいの時間に来ると、どっちも買えちゃうんだよ!」
「いいね!全部美味しそう」
メニューを見ると、たくさんの種類のパフェが並んでいた。軽食も、美味しそうなものがたくさん。
パフェはいわゆる「夜パフェ」というものらしく、このお店では食べ歩きがてきるくらいのサイズで提供しているようだ。
みずみずしいフルーツ系から、濃厚なチョコレート系まで。
これは、選べない…!
「ゆのあとみゆもいるから、四つ買って帰ろっか。さなちゃん決まった?」
「私はチョコレート…。いや、やっぱイチゴ…、いや、やっぱりキャラメルバナナ!」
めちゃめちゃ迷ってたんだね、と笑うるのあちゃんが、いつもよりも可愛く見えた。
私も中学生の頃は、こんな風に友達と出かけて遊んでたな。
高校が別々になってから、疎遠になってしまったあの頃の友達。
こうやって、私たちの人との関わりは巡っていく。
そしてまた巡り合えるときが来るのかもしれない。
悩みに悩んだあげく、ゆのあくんにはフルーツをたっぷりと使ったパフェ、みゆには少し大人な味のパフェを注文。
るのあちゃんは、ショコラストロベリーなんて名前の悪魔的美味しさであろうパフェを注文した。
甘いものばかりだと飽きちゃうから、と、からあげとポテトが入ったボックスも買った。
二人でお金を払おうとすると、店員さんに声をかけられた。
「学生証はお持ちですか?うち学割キャンペーン中で」
「それなら私が…」
バッグから生徒手帳を取り出して、店員さんに見せた。
生徒手帳ってバッグのどこにしまっておくべきなのか未だにわかってないんだよね、と思っていたが、そんな軽い考えは、すぐにふっと消えた。
るのあちゃんが、驚いたような、でも驚きとは少し違うような、複雑な表情をしていたから。
私たちはパフェたちが出来上がるまで、お店の中で待っていた。
声をかけようかという考えが浮かんで、すぐ。
「…うちも」
るのあちゃんが、口を開いた。
「うちも、高校生になりたかった」
お店の中にかかる音楽が、遠のいていく感覚だった。
るのあちゃんは、私と目を合わせない。横顔が、ゆのあくんにそっくりだった。
「…それは、どういうことか、訊いてもいい?」
私がそう言うと、るのあちゃんは笑った。
「さなちゃんは優しいね」
また、言われた。あのときは、みゆに。
優しいだなんて、そんな言葉を紡ぎながら、つらい顔をしないで。
優しい。そんなの、今はいいんだよ。
「さなちゃんが本当に優しい子なんだって、今確信した。…ずっと疑ってた。こんな子がここに来るわけない、何か裏があるはずって思ってた」
るのあちゃんは、ゆっくりとそう話す。
声が違う。元気な声じゃなくて、落ち着いた、どこか大人っぽい声。
でも、幼さは消えない。
「だからうち、キャラ作ってたの。ごめんね。本当はゆのあみたいにサバサバしてる。こんな…、はつらつとしてない」
きっと、私が怪しまれることも無理のないことだ。
制服を着たまま、ここへ毎週来て。
ただの普通の高校生なのに。
…また、普通。普通という言葉が出てくる。
「うちは、本当にゆのあに迷惑ばっかかけてる。ゆのあはずっとうちを守ってくれてる。あの頃から」
私は、るのあちゃんを見つめる。
私とるのあちゃんは、少ししか背丈が変わらないと思っていた。
しかし、もしもるのあちゃんが、この厚底のローファーを履いていなかったら。
幼くて、傷だらけで、それでも生きているぬくもりが、隣に在る。
「でも、うちだって、自分で自分のことを守れるようにならないといけない」
震える声。
るのあちゃんが、首元をさする。
見間違いでなければ、首の後ろの下部に、痣があった。
「…私も、みゆに守られてばっかじゃだめだ。るのあちゃん、私もそこは一緒だよ」
この言葉が励ましになったのかはわからない。
所詮、るのあちゃんとゆのあくんがどうしてここへ来たのかも、私は知らない。
それでも、その言葉に祈りを込める。
あなたは、きっともう大丈夫だと。
るのあちゃんが、私の顔を見た。涙は出ていない。でも、どこかに痛みを背負う、みゆと同じ表情。
「さなちゃん。絶対、悪い奴らに巻き込まれちゃだめだからね」
力強いるのあちゃんの言葉は、私の耳から、全身を駆け巡った。
みゆとゆのあくんは、二人なら大丈夫だと言ってくれたが、年下であろうるのあちゃんと二人きりだと、どこか頼りない。
「さなちゃん、もうすぐ着くよ!」
意外と早くそう言われ、私はきょろきょろと辺りを見回してみる。
軽食が買えそうなところなんて、あるかな…?
るのあちゃんが左へ曲がったので、路地裏へ入るのかなと思ったら。
そこには、ネオンの看板が輝くお店が立ち並んでいた。
「ここ、なに…!?」
「うちのお気に入りの場所!今日はこのお店にしようかなって」
るのあちゃんが指差した先には、パフェという文字がポップなフォントで書かれていた。
外観はネオンで彩られており、とても可愛らしい。
怖さなんかは忘れて、可愛さに胸がときめいていた。
「このお店は、昼間は軽食、夜はパフェを売ってるの。これくらいの時間に来ると、どっちも買えちゃうんだよ!」
「いいね!全部美味しそう」
メニューを見ると、たくさんの種類のパフェが並んでいた。軽食も、美味しそうなものがたくさん。
パフェはいわゆる「夜パフェ」というものらしく、このお店では食べ歩きがてきるくらいのサイズで提供しているようだ。
みずみずしいフルーツ系から、濃厚なチョコレート系まで。
これは、選べない…!
「ゆのあとみゆもいるから、四つ買って帰ろっか。さなちゃん決まった?」
「私はチョコレート…。いや、やっぱイチゴ…、いや、やっぱりキャラメルバナナ!」
めちゃめちゃ迷ってたんだね、と笑うるのあちゃんが、いつもよりも可愛く見えた。
私も中学生の頃は、こんな風に友達と出かけて遊んでたな。
高校が別々になってから、疎遠になってしまったあの頃の友達。
こうやって、私たちの人との関わりは巡っていく。
そしてまた巡り合えるときが来るのかもしれない。
悩みに悩んだあげく、ゆのあくんにはフルーツをたっぷりと使ったパフェ、みゆには少し大人な味のパフェを注文。
るのあちゃんは、ショコラストロベリーなんて名前の悪魔的美味しさであろうパフェを注文した。
甘いものばかりだと飽きちゃうから、と、からあげとポテトが入ったボックスも買った。
二人でお金を払おうとすると、店員さんに声をかけられた。
「学生証はお持ちですか?うち学割キャンペーン中で」
「それなら私が…」
バッグから生徒手帳を取り出して、店員さんに見せた。
生徒手帳ってバッグのどこにしまっておくべきなのか未だにわかってないんだよね、と思っていたが、そんな軽い考えは、すぐにふっと消えた。
るのあちゃんが、驚いたような、でも驚きとは少し違うような、複雑な表情をしていたから。
私たちはパフェたちが出来上がるまで、お店の中で待っていた。
声をかけようかという考えが浮かんで、すぐ。
「…うちも」
るのあちゃんが、口を開いた。
「うちも、高校生になりたかった」
お店の中にかかる音楽が、遠のいていく感覚だった。
るのあちゃんは、私と目を合わせない。横顔が、ゆのあくんにそっくりだった。
「…それは、どういうことか、訊いてもいい?」
私がそう言うと、るのあちゃんは笑った。
「さなちゃんは優しいね」
また、言われた。あのときは、みゆに。
優しいだなんて、そんな言葉を紡ぎながら、つらい顔をしないで。
優しい。そんなの、今はいいんだよ。
「さなちゃんが本当に優しい子なんだって、今確信した。…ずっと疑ってた。こんな子がここに来るわけない、何か裏があるはずって思ってた」
るのあちゃんは、ゆっくりとそう話す。
声が違う。元気な声じゃなくて、落ち着いた、どこか大人っぽい声。
でも、幼さは消えない。
「だからうち、キャラ作ってたの。ごめんね。本当はゆのあみたいにサバサバしてる。こんな…、はつらつとしてない」
きっと、私が怪しまれることも無理のないことだ。
制服を着たまま、ここへ毎週来て。
ただの普通の高校生なのに。
…また、普通。普通という言葉が出てくる。
「うちは、本当にゆのあに迷惑ばっかかけてる。ゆのあはずっとうちを守ってくれてる。あの頃から」
私は、るのあちゃんを見つめる。
私とるのあちゃんは、少ししか背丈が変わらないと思っていた。
しかし、もしもるのあちゃんが、この厚底のローファーを履いていなかったら。
幼くて、傷だらけで、それでも生きているぬくもりが、隣に在る。
「でも、うちだって、自分で自分のことを守れるようにならないといけない」
震える声。
るのあちゃんが、首元をさする。
見間違いでなければ、首の後ろの下部に、痣があった。
「…私も、みゆに守られてばっかじゃだめだ。るのあちゃん、私もそこは一緒だよ」
この言葉が励ましになったのかはわからない。
所詮、るのあちゃんとゆのあくんがどうしてここへ来たのかも、私は知らない。
それでも、その言葉に祈りを込める。
あなたは、きっともう大丈夫だと。
るのあちゃんが、私の顔を見た。涙は出ていない。でも、どこかに痛みを背負う、みゆと同じ表情。
「さなちゃん。絶対、悪い奴らに巻き込まれちゃだめだからね」
力強いるのあちゃんの言葉は、私の耳から、全身を駆け巡った。



