「ここだ。眞人がここの品を推薦していた。風花も推していたから、間違いないと思う」
あやつが勧めるなど、おぬしにどんな格好をさせたいのだというところだが、風花も勧めるのなら確かなのだろうと思ってな、とは嘆息しながらの言だ。
咲は眼前にそびえる四角くて背の高い建物をぽかんと見上げる。壁は通りの商店と同様、石……、だろうか。邑でも里でも見ない建材に目をぱちぱちとさせた。壁のあちこちに彫り込んだとおぼしき装飾が施されていて、その瀟洒さに咲はとても圧倒される。
彼女を圧倒したのは、それだけではない。店内から明るく照らされている、和洋様々な商品の飾られたショウウインドウは言わずもがな、大きな硝子がはめ込まれた観音開きの正面扉は堂々たる風貌だし、なによりそこをひっきりなしに出入りする紳士淑女の多さに驚いた。
洋物を揃えている、と教えてもらっていたが、洋物を求めるがそんなに大勢居るとは思っておらず、その人数にぽかんとした。
立ち止まって間抜けな顔をしていたのだろう。咲を追い越して店に入っていく人々が振り返って怪訝な視線を向けてくる。そこではっと我に返り、もう一度背をしゃんと伸ばした。しかし、その姿勢を改めた様子もお上りさんと思われたのか、意気込む姿も笑われてしまう。
「す、すみません……、千牙さんまでおかしな目で見られてしまうところでした……」
意気消沈する咲の背を、千牙がぽん、とやさしく撫ぜた。着物越しで温度は分からないが、感じる彼の手の存在に、もう一度勇気を得る。隣を見上げれば、やさしい微笑みが彼女に向けられていた。
(そうよ。千牙さんがせっかく連れてきてくれたんだもの。その気持ちを無駄にしてはいけないわ)
その気持ちが伝わったのか、背に当ててくれる手をそのままに、咲は彼にいざなわれて大きな扉をくぐった。
「わ……」
しかし、またも目の前に広がった景色にぽかんと口を開いて立ち止まる。そこは建物の中だというのに、昼の屋外のようにまぶしかった。
硝子が幾重にも重なった、きらきらとまぶしい吊り下げの照明器具。整然と品物が陳列されており、選ぶ人々を笑顔で迎える店員たちにも覇気がある。
建物の中央部分は三階まで吹き抜けになっており、店の正面玄関の真っ直ぐ奥には上階へと繋がる階段が壁に沿って作られている。二階、三階の客は壁に沿って作られた手すりの内側の通路を、壁面にずらりと並んだ売り場を眺めながら歩いているようだ。
あやつが勧めるなど、おぬしにどんな格好をさせたいのだというところだが、風花も勧めるのなら確かなのだろうと思ってな、とは嘆息しながらの言だ。
咲は眼前にそびえる四角くて背の高い建物をぽかんと見上げる。壁は通りの商店と同様、石……、だろうか。邑でも里でも見ない建材に目をぱちぱちとさせた。壁のあちこちに彫り込んだとおぼしき装飾が施されていて、その瀟洒さに咲はとても圧倒される。
彼女を圧倒したのは、それだけではない。店内から明るく照らされている、和洋様々な商品の飾られたショウウインドウは言わずもがな、大きな硝子がはめ込まれた観音開きの正面扉は堂々たる風貌だし、なによりそこをひっきりなしに出入りする紳士淑女の多さに驚いた。
洋物を揃えている、と教えてもらっていたが、洋物を求めるがそんなに大勢居るとは思っておらず、その人数にぽかんとした。
立ち止まって間抜けな顔をしていたのだろう。咲を追い越して店に入っていく人々が振り返って怪訝な視線を向けてくる。そこではっと我に返り、もう一度背をしゃんと伸ばした。しかし、その姿勢を改めた様子もお上りさんと思われたのか、意気込む姿も笑われてしまう。
「す、すみません……、千牙さんまでおかしな目で見られてしまうところでした……」
意気消沈する咲の背を、千牙がぽん、とやさしく撫ぜた。着物越しで温度は分からないが、感じる彼の手の存在に、もう一度勇気を得る。隣を見上げれば、やさしい微笑みが彼女に向けられていた。
(そうよ。千牙さんがせっかく連れてきてくれたんだもの。その気持ちを無駄にしてはいけないわ)
その気持ちが伝わったのか、背に当ててくれる手をそのままに、咲は彼にいざなわれて大きな扉をくぐった。
「わ……」
しかし、またも目の前に広がった景色にぽかんと口を開いて立ち止まる。そこは建物の中だというのに、昼の屋外のようにまぶしかった。
硝子が幾重にも重なった、きらきらとまぶしい吊り下げの照明器具。整然と品物が陳列されており、選ぶ人々を笑顔で迎える店員たちにも覇気がある。
建物の中央部分は三階まで吹き抜けになっており、店の正面玄関の真っ直ぐ奥には上階へと繋がる階段が壁に沿って作られている。二階、三階の客は壁に沿って作られた手すりの内側の通路を、壁面にずらりと並んだ売り場を眺めながら歩いているようだ。



