*
新聞による一報は瞬く間に国の隅々まで知れ渡った。協定調印以降、常に贄の影に怯えていた人々は歓喜に沸いた。
「贄制度を改めてくれる巫女さまだと!?」
「本当ならすごくありがたいことじゃないの!」
「これでいつお鉢が回ってくるかに怯えずに済む!」
「素晴らしいお方が現れたものだなあ!」
「どんなお方なのだろう! きっと美しく聡明なお方に違いない!」
人々の喜びはおにかみの里にも届いていた。眞人からの書簡には国の湧きようがつぶさに記されており、人妖の調停以来、常に人界に対する責任を負ってきた千牙は、心からこの件に関して開放感を覚えていた。
文は続く。
「眞人が咲を救いの巫女として神々へ紹介してほしいと言ってきている。人界への披露目も行うそうだ。おぬしは長きにわたる人界の苦しみを解放したもの。人界での披露目は、当然であろう」
「そんな……。私は自分の命の代わりをと思っただけで、それはつまり自分本位な気持ちの結果なのに……」
恐縮する咲に、千牙は穏やかな瞳を向ける。
「命あるもの、誰だって己が生を失いたくないだろう。はかない存在である朧だってそうなのだ。咲が命を惜しんで策を練ったことは、別段とがめられることではない」
「そうですよ、俺だって悪食ものに喰われることを思ったら、やっぱり恐ろしいですから」
ハチが千牙に同調する。
「咲さまが人々に認められるなんて、私、例えようもなく嬉しいです!」
一方、千牙の言葉にはしゃぐのはスズだ。
「長。人界でお披露目があるということは、もちろん咲さまは最高位の賓客として招かれるのですよね!? 私、これまで以上に素晴らしいお着物を選びます!」
「ああ、頼む。神々への挨拶のあと、民への披露目を行い、夜には国の要人を集めたパーティーがあるらしい。行事進行は向こうに任せれば良いが、今回の人界への訪問は人界からの正式な招待によるものだから、それ相応の身なりでないと困るな。しかし、披露目のあとのパーティーは洋式だから、里で見繕うのは難しい。一連の行事の前に余裕を持ち、デパートメントで洋装を仕立てよう」
「で、ぱあ、……とめん、と……?」



