【長編版】無能の少女は鬼神に愛され娶られる



「本来でしたら私が喰われるべきですが、千牙さんから請け負った仕事も全うしたい……。上手く言霊を操れるか自信がなかったのですが、この草だけ、成功しました。あとは私がもっと頑張って、こういう草を沢山作れたら良いかなと……」

「しかし、倒れるほどの頑張りは良くない。おぬしがハチに命を無駄にしないよう諭すのと同じで、私だって、勿論ハチやスズだって、おぬしに無理を強いたいわけではない。小夜もそうだろう」

千牙の言葉に、三人が大きく頷く。これには咲も謝罪するしかなかったようだ。

「すみません……。とにかく、可能なのかどうかを、知りたかったので……」
「おぬしらしいが、それでも体は大事にしてほしい。おぬしがおぬし自身を大事にせずに、だれが出来ると言うのだ」

少し子供に諭すような千牙に、咲が神妙に頷く。しかし明るい未来を思ったのか、笑みを浮かべた。

「ひとつ、成功したのであれば、上手くやれるようになって、同じような草を作れるはずです。まだ時間は掛かると思いますが、きっと里の方や、妖界の方々の問題が解決できると思うんです。今の皆さんの飢えは私の責任なので、この件については頑張らせてください」

体を大事にしろと言い聞かせたそばから意気込む咲を、たまらない想いで見つめる。

「そうだな。まあ、適度に頼む。成功への算段が付いたら、眞人にも報告しよう。人界の長であるあいつも、この報告はきっと喜ぶはずだ」
「はい。千牙さんだけでなく、陛下のご懸念も払拭できるのでしたら、それは嬉しいです」

でも、と咲は続けた。千牙は、彼女の言いたいことをきちんと聞こうと、胸に捕らえた咲を少し離して、肩に手を置いたまま話を促した。

「三人を、怒らないでくださいね? あの方たちに問題を教えて貰わなかったら、私は妖界の問題を知らないままここに居続けたと思うので……」

視線を三人の鬼たちにやる咲と同じ動きを、する。三人の鬼は、千牙の視線にまた膝を飛び上がらせたが、口許を苦笑に緩めると、幾分安心した表情に変わった。

「飢えた鬼が人間にどう当たるのかは見当が付くが……。咲の言葉に免じて、許してやろう」

放免の言葉に、三人が深い安堵で頭を下げると共に、咲に向かって破顔した。

「御寮さま、ありがとう! 俺ら、妖界中に、触れ回ってくるぜ!」
「あと少しで、腹がいっぱいになるってよ!」
「もう飢えなくていいんだってよ!」

喜色満面の彼らに、咲の行いの素晴らしさを実感する。しかし彼らの喜びが彼女の一層の無理に繋がらないよう、釘を刺さねばならない。