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人界で神隠しについて調査を行っていた千牙は、判然としないながらもこれ以上は成果なしと判断して、里に戻ってきた。
今までも何日か留守にすることはあったが、今回はいやに懐かしく感じる。鬼火を使って知らせは出してあるから自分の帰郷は知れていると思うが、何やら屋敷の方が騒がしい。そう思いながら門をくぐると、屋敷からスズが血相を変えて飛び出してきた。
「長! 咲さまが大変です!」
叫ばれた内容に、千牙も瞬間的に前庭を走り出した。スズが慌てた顔で迎えてくれて、事の顛末を知らせてくれる。
「咲さまが、畑仕事の最中に倒れてしまわれたんです!」
「畑仕事? どういうことだ」
「咲さまは、みんなに食料をとおっしゃって、草を栽培されていたのです」
スズの言っていることが、分からない。そんなことをする意味がないからだ。
「草? そんなものであやかしの腹は満たされぬだろう? お前はともかく、小夜は説明しなかったのか」
「小夜さまはご説明なさいました。ですが、咲さまはやらせてくれの一点張りで……。小夜さまが折れる形に……」
それにしたって、腹の足しにならないようなものを栽培しても意味がなかろう。疑問を胸に、屋敷内をドタドタと進んで、彼女の部屋の襖を開ける。そこには伸べられた布団に横たわり、目を潤ませているハチと、心配そうに枕元に付き添っている小夜に囲まれた咲がいた。そして彼女たちの傍に、屋敷のものではない鬼が三人居る。
とにかく千牙も枕元に駆け寄り、こちらを見て微笑む咲の額を撫ぜた。
「咲。なにをしてそのような体調になっているのだ。私は朧の名付けは頼んだが、畑を耕してくれと頼んだ覚えはない」
「千牙さん、お帰りなさい。朧の名付けは、お約束通り行ってました。安心なさってください」
「おぬしがこのような状態で、安心など出来るものか」
心配で何度も彼女の額を撫でる。気持ちよさそうに目を細める咲は、枕の横に置いていた、一本の草を千牙に見せた。



