独りぼっちの妖狐の娘は、一匹狼の龍神と結ばれる

(ゆき)!早く来なさい」
「え……?」
 裏庭の掃除をしていると、突然、お客様の相手をしていたはずの母上が、こちらへやって来た。
「急ぎなさい!」
 なにがなんだか分からないまま、応接間にたどり着く。
龍城(りゅうじょう)さま。こちらです~」
 龍城(りゅうじょう)さま……?
 訳が分からない。
 龍城(りゅうじょう)家って、私たちあやかしの頂点に立つ家だよね?
 私に、なんの用が……?
 横を見ると、姉の(はな)がこちらをギロリと睨んでいた。
 ……私、なにかした?
「……孤ノ上(このうえ) (ゆき)。お前を嫁にもらいたい」
 え?
 この声って……?
「……ゆ、(ゆき)をですか?(はな)や、(りん)のほうが優秀ですが……」
「私は、孤ノ上(このうえ) (ゆき)が良いと言っているのだ」
 顔を上げる。
 ……やっぱり、さっきの……!
「初めまして、いや、さっき会ったね?龍城(りゅうじょう) (ひじり)だ」
 りゅ、龍城(りゅうじょう)家の人だったの!?
「なによ!ありえないわ!(ゆき)が選ばれるなんて!」
「黙れ」
 龍城(りゅうじょう)さんに睨まれて、大人しくなる姉上。
「ゆ、(ゆき)でよろしいのでしたら!今すぐにでも!」
「え、ちょ……。待ってよ……」
 私のことなんて置いてけぼりで、話が進んでしまう。
「……その前に、(ゆき)と二人で話がしたい。出て行ってくれるか?」
「ええ、もちろんです。(はな)(りん)嶺鴉(りょうあ)。出るわよ」
「……ほんと、なんでアンタなのよ」
 私の横を通り過ぎるとき、(りん)にそう言われてしまった。
 仕方ない。
 だって、私は使用人以下の人間だから。
「……断るなんて許さないわよ」
 母上は、私を睨みつけてくる。
 龍城(りゅうじょう)家との結婚なのだ。
 断れる訳がない。
 断ったら、この家での居場所は、もっとなくなる。
「……お前、自分を出来損ないと言っていたな」
「はい……」
「俺には、そうは見えない。お前は、強力な力を持っている」
 ……そんなはずない。
 だって、私は、一度も妖術なんて使えなくて……。
 孤ノ上(このうえ)家の出来損ないで……。
「……俺には分かる。訓練さえすれば、妖術も使えるようになるはずだ」
 嘘だ。
 そんなはずない。
 だって、どれだけ訓練しても、使えなかったんだから……。
「うちに来い。孤ノ上(このうえ)家の訓練が、お前には合っていなかったのかもしれない。……まあ、お前に拒否権はないが」
 なによそれ!
 ありえない!
 自分勝手すぎる!
「……気に食わないか?」
「いえ、そんなことは……」
 なにも家にない。
 私に、拒否権などないのだから。
「じゃあ、きまりだな」
 なにも言えなかった。
 私は、明後日、龍城(りゅうじょう)家へ嫁ぐことになった。