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おばあちゃん家に帰ってからは、スイカ割り。先輩は「右と左がわからない」なんてわけのわからない事を言って、俺にスイカを割らせてくれた。三人で大笑いして食べたスイカは、冷たくて甘くて本当に美味しかった。
次の日は、先輩が買ってきてくれたレモン色のビーチサンダルで川に入った。
先輩は「俺はいい」なんて言ってたけど、一度入ったら「懐かしいな」なんて結局、二人で夕方まではしゃいだ。
その次の日は、おばあちゃんの畑の手伝い。汗だくになりながら、トマトやきゅうりの収穫をした。
「甘いから食べてみろ」なんて何個も俺に野菜を渡してくる先輩を見て、おばあちゃんも笑ってた。
……気づけば旅行も残り一日。
「う、動けない……食べすぎた…」
収穫したきゅうりやトマト、おばあちゃんの夜ご飯、満腹で縁側に倒れ込んだ。
「じゃ、これは俺が食う」
先輩が手に持ってるのは、真ん中で割ると半分になる棒がニ本付いてるアイス。
「いや、アイスなら俺も!!」
慌てて起き上がる俺に、パキッと割ったアイスを半分渡して、どすんって縁側に座った先輩。
「ふぅー」とため息を吐いて、空を見てる先輩は、いつもより大人びて見える。
「なんか……縁側に座ってると先輩、いつもすごく大人に見えます」
「なんだそれ」
「うーん……いつもより静かだからですかね」
「俺、いつもそんな喋んないだろ」
「確かに」って俺が笑うと、先輩も少しだけ口元を緩ませた。そして珍しくドスの効かない小さな声で言った。
「ありがとな」
「え?」
「ばあちゃん、喜んでた。俺が友達連れてきたって」
そうだ……明日、帰るんだ。
縁側から見えるプラネタリウムみたいな空も、おばあちゃん家の庭も、今日で最後になるのかな。
「ほんと楽しかったです。俺こそありがとうございます」
「俺も。楽しかった」
先輩も楽しんでくれてた……その言葉がすごく嬉しい。
ここに来る前は、ただ学校が同じってだけの先輩と後輩。でも、ここに来て先輩を知る度に何かが変わっていった気がする。友達でもない、ただの先輩と後輩でもない、何か。その”何か”は、まだわからない。
胸の奥の方が苦しくなるのはどうしてだろう。
帰りたくないから?それとも……。
帰ったらきっと、ただの先輩と後輩に戻る。今はそれが何より嫌だ。
そんな気持ちを振り払うように顔を上げた時、「やるか、花火」って先輩が立ち上がった。
縁側に並んだ色違いのビーチサンダルを履いて庭に出ると、先輩は小さなロウソクに火をつけた。
「ほら、江花やってみろ」
「たまには先輩が先にどうぞ」
先輩がつけた線香花火の小さな火の玉はだんだん大きくなって、ぱちぱちと音を立てながら光る。落ちないように一生懸命光ってるけど、先輩の手が大きくて、火の玉がすごく小さく見える。
「うわぁー」
はしゃぎながら俺が火をつけた時、「足の上に落とすなよ」って先輩は笑った。
「線香花火得意なんです、俺」
「なんだそれ」
虫の声、微かに聞こえる川の音。
混ざり合う夏の夜の音を聞きながら先輩と並んで線香花火を見つめる。
この時間がずっと続いてほしい……そう思うのは、この景色と線香花火と、綺麗な夜のせいだよね?
「あー……終わっちゃった」
最後の一粒が落ちると、ロウソクを吹き消して縁側に腰を下ろす。
「また、やるか。花火」
え?それって、来年もまた一緒に?
そんな意味じゃないかもしれない。
でも気づいた時には、「はい!!」って大きく頷いていた。
線香花火の袋を片付けた先輩が、どすんと隣に腰を下ろした時、床についていた俺の手のすぐ隣に先輩の手が置かれた。
かすかに触れる手に小さく体温を感じる。
離れようとしたけど、やめた。
先輩も動かない。
だから、俺もそのままでいた。
かすかに触れているだけなのに、こんなに鼓動が速くなるのは……どうしてだろう。
先輩はただ黙って、空を見ている。
気にしてないのかな?俺だけ?
わからないけど、今はこのままがいい。
明日が来なければいいのに、なんて思ったのは初めてだった。
おばあちゃん家に帰ってからは、スイカ割り。先輩は「右と左がわからない」なんてわけのわからない事を言って、俺にスイカを割らせてくれた。三人で大笑いして食べたスイカは、冷たくて甘くて本当に美味しかった。
次の日は、先輩が買ってきてくれたレモン色のビーチサンダルで川に入った。
先輩は「俺はいい」なんて言ってたけど、一度入ったら「懐かしいな」なんて結局、二人で夕方まではしゃいだ。
その次の日は、おばあちゃんの畑の手伝い。汗だくになりながら、トマトやきゅうりの収穫をした。
「甘いから食べてみろ」なんて何個も俺に野菜を渡してくる先輩を見て、おばあちゃんも笑ってた。
……気づけば旅行も残り一日。
「う、動けない……食べすぎた…」
収穫したきゅうりやトマト、おばあちゃんの夜ご飯、満腹で縁側に倒れ込んだ。
「じゃ、これは俺が食う」
先輩が手に持ってるのは、真ん中で割ると半分になる棒がニ本付いてるアイス。
「いや、アイスなら俺も!!」
慌てて起き上がる俺に、パキッと割ったアイスを半分渡して、どすんって縁側に座った先輩。
「ふぅー」とため息を吐いて、空を見てる先輩は、いつもより大人びて見える。
「なんか……縁側に座ってると先輩、いつもすごく大人に見えます」
「なんだそれ」
「うーん……いつもより静かだからですかね」
「俺、いつもそんな喋んないだろ」
「確かに」って俺が笑うと、先輩も少しだけ口元を緩ませた。そして珍しくドスの効かない小さな声で言った。
「ありがとな」
「え?」
「ばあちゃん、喜んでた。俺が友達連れてきたって」
そうだ……明日、帰るんだ。
縁側から見えるプラネタリウムみたいな空も、おばあちゃん家の庭も、今日で最後になるのかな。
「ほんと楽しかったです。俺こそありがとうございます」
「俺も。楽しかった」
先輩も楽しんでくれてた……その言葉がすごく嬉しい。
ここに来る前は、ただ学校が同じってだけの先輩と後輩。でも、ここに来て先輩を知る度に何かが変わっていった気がする。友達でもない、ただの先輩と後輩でもない、何か。その”何か”は、まだわからない。
胸の奥の方が苦しくなるのはどうしてだろう。
帰りたくないから?それとも……。
帰ったらきっと、ただの先輩と後輩に戻る。今はそれが何より嫌だ。
そんな気持ちを振り払うように顔を上げた時、「やるか、花火」って先輩が立ち上がった。
縁側に並んだ色違いのビーチサンダルを履いて庭に出ると、先輩は小さなロウソクに火をつけた。
「ほら、江花やってみろ」
「たまには先輩が先にどうぞ」
先輩がつけた線香花火の小さな火の玉はだんだん大きくなって、ぱちぱちと音を立てながら光る。落ちないように一生懸命光ってるけど、先輩の手が大きくて、火の玉がすごく小さく見える。
「うわぁー」
はしゃぎながら俺が火をつけた時、「足の上に落とすなよ」って先輩は笑った。
「線香花火得意なんです、俺」
「なんだそれ」
虫の声、微かに聞こえる川の音。
混ざり合う夏の夜の音を聞きながら先輩と並んで線香花火を見つめる。
この時間がずっと続いてほしい……そう思うのは、この景色と線香花火と、綺麗な夜のせいだよね?
「あー……終わっちゃった」
最後の一粒が落ちると、ロウソクを吹き消して縁側に腰を下ろす。
「また、やるか。花火」
え?それって、来年もまた一緒に?
そんな意味じゃないかもしれない。
でも気づいた時には、「はい!!」って大きく頷いていた。
線香花火の袋を片付けた先輩が、どすんと隣に腰を下ろした時、床についていた俺の手のすぐ隣に先輩の手が置かれた。
かすかに触れる手に小さく体温を感じる。
離れようとしたけど、やめた。
先輩も動かない。
だから、俺もそのままでいた。
かすかに触れているだけなのに、こんなに鼓動が速くなるのは……どうしてだろう。
先輩はただ黙って、空を見ている。
気にしてないのかな?俺だけ?
わからないけど、今はこのままがいい。
明日が来なければいいのに、なんて思ったのは初めてだった。



