──ミーンミンミンミン。
田舎の朝はアラームなんていらない。
セミの大合唱と差し込む朝日。
目覚ましよりもずっと早く目が覚めた。
廊下に出ると美味しそうな匂いがして、キッチンには朝食の準備をするおばあちゃんの小さな背中が見えた。
「おはようございます」
「あら、おはよう。随分早いねぇ。よく眠れた?」
「はい!もうぐっすり」
朝から優しい笑顔を向けてくれるおばあちゃん。笑った時の口元はやっぱり先輩に似ている。
……そういえば先輩は?
居間を探しても、先輩はいない。
「小春なら早くから庭にいたけど、散歩にでも出たのかしら」
「俺、ちょっと見てきます!」
玄関から外に出ると思わず深呼吸したくなるほど空気が澄んでいて、心地よかった。
庭を見渡しても先輩はいなくて、なんとなく畑に続く一本道を歩く。山のふもとを流れる川の音が近づいてきた時、大きな人影がこちらに向かって来るのが見える。
手を振りながら小走りで駆け寄る俺に気づくと「起きたか」なんて言いながら、差し出された小さめの袋。
「え?これ……」
受け取って中を覗くと、ビーチサンダルが二足。
小さい方はレモン色。大きい方はオレンジ色。
もしかして昨日俺が言ったから?
……いや、だとしてもこの近くにお店なんてあったっけ?確か駅にはなかったはず。
「先輩、どこで?」
「駅の反対側のスーパー」
駅までだって距離があるのに、わざわざ買いに行ってくれたんだ。
「嬉しい……ありがとうございます」
「サイズ合えばいいけど。明日、入るか」って先輩が指さした先には、山のふもとを流れる川。
「は、入りたいっ!!入ります!!」
「あとこれも、売ってたから」
そう言って先輩がポケットから取り出したのは、小さな袋。……線香花火!?
俺は線香花火が一番好きだ。
でも、先輩に話したことあったっけ?
「俺、線香花火が好きって先輩に話しましたっけ?」
「いや、今聞いた。江花も好きなんだな、線香花火」
江花も?ってことは……
「先輩も好きなんですか!?」
「ああ、毎年ここに来た時は縁側でやってる」って口元を緩める先輩。
「帰るぞ。んで、朝飯食って出発だな」
「はいっ!」
先輩の好きなものをまたひとつ知れた気がして、なんだか嬉しかった。
───
「い、いちご食べてるー!!」
「あれトマトだろ」
「いちごですよ!!」
「良い食いっぷりだな」
果実園には、想像以上にたくさんのゴリラがいて、興奮が抑えきれない。とにかくはしゃいで写真を沢山撮った。飼育員さんいわく、果実園という名前は、施設の周りが全部果物畑だかららしい。
「あっ!あの子、先輩にちょっと似てる」
「江花はあいつ」
「ちょ、あの子赤ちゃんじゃないですかー!かわいい」
なんてふざけながら園内を歩き回って、お昼はおばあちゃんが持たせてくれたおにぎりと売店のソフトクリームを食べた。その後もただ一緒にゴリラを見ていたら、あっという間に閉園時間になってしまった。
「なんか、一瞬でした……」
「研究出来たか?」
「はい!なんかもう、過去最高のレポートが書ける予感しかしないです」
「そうか、ならよかった」
オレンジ色に染まったエントランス。
前を歩く大きな背中をカメラロールに残した。果実園で撮った写真の最後が、ゴリラじゃなくて、先輩になったって事は先輩には秘密……かな。
田舎の朝はアラームなんていらない。
セミの大合唱と差し込む朝日。
目覚ましよりもずっと早く目が覚めた。
廊下に出ると美味しそうな匂いがして、キッチンには朝食の準備をするおばあちゃんの小さな背中が見えた。
「おはようございます」
「あら、おはよう。随分早いねぇ。よく眠れた?」
「はい!もうぐっすり」
朝から優しい笑顔を向けてくれるおばあちゃん。笑った時の口元はやっぱり先輩に似ている。
……そういえば先輩は?
居間を探しても、先輩はいない。
「小春なら早くから庭にいたけど、散歩にでも出たのかしら」
「俺、ちょっと見てきます!」
玄関から外に出ると思わず深呼吸したくなるほど空気が澄んでいて、心地よかった。
庭を見渡しても先輩はいなくて、なんとなく畑に続く一本道を歩く。山のふもとを流れる川の音が近づいてきた時、大きな人影がこちらに向かって来るのが見える。
手を振りながら小走りで駆け寄る俺に気づくと「起きたか」なんて言いながら、差し出された小さめの袋。
「え?これ……」
受け取って中を覗くと、ビーチサンダルが二足。
小さい方はレモン色。大きい方はオレンジ色。
もしかして昨日俺が言ったから?
……いや、だとしてもこの近くにお店なんてあったっけ?確か駅にはなかったはず。
「先輩、どこで?」
「駅の反対側のスーパー」
駅までだって距離があるのに、わざわざ買いに行ってくれたんだ。
「嬉しい……ありがとうございます」
「サイズ合えばいいけど。明日、入るか」って先輩が指さした先には、山のふもとを流れる川。
「は、入りたいっ!!入ります!!」
「あとこれも、売ってたから」
そう言って先輩がポケットから取り出したのは、小さな袋。……線香花火!?
俺は線香花火が一番好きだ。
でも、先輩に話したことあったっけ?
「俺、線香花火が好きって先輩に話しましたっけ?」
「いや、今聞いた。江花も好きなんだな、線香花火」
江花も?ってことは……
「先輩も好きなんですか!?」
「ああ、毎年ここに来た時は縁側でやってる」って口元を緩める先輩。
「帰るぞ。んで、朝飯食って出発だな」
「はいっ!」
先輩の好きなものをまたひとつ知れた気がして、なんだか嬉しかった。
───
「い、いちご食べてるー!!」
「あれトマトだろ」
「いちごですよ!!」
「良い食いっぷりだな」
果実園には、想像以上にたくさんのゴリラがいて、興奮が抑えきれない。とにかくはしゃいで写真を沢山撮った。飼育員さんいわく、果実園という名前は、施設の周りが全部果物畑だかららしい。
「あっ!あの子、先輩にちょっと似てる」
「江花はあいつ」
「ちょ、あの子赤ちゃんじゃないですかー!かわいい」
なんてふざけながら園内を歩き回って、お昼はおばあちゃんが持たせてくれたおにぎりと売店のソフトクリームを食べた。その後もただ一緒にゴリラを見ていたら、あっという間に閉園時間になってしまった。
「なんか、一瞬でした……」
「研究出来たか?」
「はい!なんかもう、過去最高のレポートが書ける予感しかしないです」
「そうか、ならよかった」
オレンジ色に染まったエントランス。
前を歩く大きな背中をカメラロールに残した。果実園で撮った写真の最後が、ゴリラじゃなくて、先輩になったって事は先輩には秘密……かな。



