「頼むっ!」
広い屋内に満ちた湿った空気の中で、幾重にも重なる水の音が響いていた。
十八歳という、まだまだこれからの人生の中で、今までこんなにも切実に願った試合があっただろうか。
四百メートルをひたすら進むその姿は、あまりにも美しかった。
折り返しでナイフのように身体が折れ曲がる姿は鋭く、それでいて優雅で、まるで海の住人のようだった。
「がんばれ! あと半分!」
胸の奥がやけに騒ぎ、焦りと興奮が静かに入り混じっていくのがわかる。
水中を進む相手に届くわけがないとわかっていても、俺は声を張り上げ、必死になって応援していた。
いつも穏やかだと言われている俺――由良淳が、子供のように泣きそうになりながら誰かのために声を上げているなんて、誰もが驚くだろう。
目の前で繰り広げられているのは、競泳の自由形。選手たちは皆クロールを選び、勢いよく水面を駆けていた。
俺が応援している田邉啓介もクロール――のはずだった。
けれど、田邉は一番不利な平泳ぎを選んでいた。
自由形で平泳ぎなんて。
そんな驚きの声が観客席に広がり、ざわめきとなっていた。
勝てるわけがない。
誰もがそう言っていた。
俺だって、頭では解っていた。
そのはずなのに、折り返した頃には誰もが田邉を応援していた。
田邉は一位との差を腕ひとつ分にまで縮めていた。
白熱した空気が会場を熱気で満たしていく。
あと数メートル。
目が離せない接戦の中、結果を告げる電子ホーンが高らかに会場へ響き渡った。
広い屋内に満ちた湿った空気の中で、幾重にも重なる水の音が響いていた。
十八歳という、まだまだこれからの人生の中で、今までこんなにも切実に願った試合があっただろうか。
四百メートルをひたすら進むその姿は、あまりにも美しかった。
折り返しでナイフのように身体が折れ曲がる姿は鋭く、それでいて優雅で、まるで海の住人のようだった。
「がんばれ! あと半分!」
胸の奥がやけに騒ぎ、焦りと興奮が静かに入り混じっていくのがわかる。
水中を進む相手に届くわけがないとわかっていても、俺は声を張り上げ、必死になって応援していた。
いつも穏やかだと言われている俺――由良淳が、子供のように泣きそうになりながら誰かのために声を上げているなんて、誰もが驚くだろう。
目の前で繰り広げられているのは、競泳の自由形。選手たちは皆クロールを選び、勢いよく水面を駆けていた。
俺が応援している田邉啓介もクロール――のはずだった。
けれど、田邉は一番不利な平泳ぎを選んでいた。
自由形で平泳ぎなんて。
そんな驚きの声が観客席に広がり、ざわめきとなっていた。
勝てるわけがない。
誰もがそう言っていた。
俺だって、頭では解っていた。
そのはずなのに、折り返した頃には誰もが田邉を応援していた。
田邉は一位との差を腕ひとつ分にまで縮めていた。
白熱した空気が会場を熱気で満たしていく。
あと数メートル。
目が離せない接戦の中、結果を告げる電子ホーンが高らかに会場へ響き渡った。



