◆七瀬side
休み時間に席でスマホをいじっていると、クラスメイトの武田が馴れ馴れしく肩に手を置いてくる。
「七瀬、なにしてんの?」
「バイト探してる」
肩に置かれた手を払いながら答えると、武田は「ええ!?」と大袈裟にリアクションした。
「駅前のBonBonで働いてんじゃん? やめんの? なんで?」
鬱陶しく思いながらも、スマホを裏返して机に置いた。
「もっと時給のいいバイトないかなって」
適当に理由を言うと、武田は「あー」と納得したように頷く。
「時給低いとモチベ下がるよな。うちも上げてほしいわー」
そういえば、武田はラーメン屋でバイトをしているんだった。前にクラスメイトと食べに行ったとき、頭にタオルを巻いたおっちゃんにこっぴどく怒鳴られているのを目撃した。
どこの店でも、金を稼ぐのは大変らしい。パワハラじみた扱いがないだけ、うちのバイト先はまともなのだろう。
できればやめたくないけど、そうも言っていられない事態に陥っている。俺がキョウさんに、キスをしてしまったからだ。
「いっそ配信でもしてみれば? 七瀬のビジュなら投げ銭で相当稼げるだろ」
「あー、ゲーム実況ならアリだなぁ」
冗談半分でのってみると、武田はだっはっはと笑い出す。その声に引き寄せられるように、次々と人が集まってきた。
「おまえら、なに盛り上がってんの?」
「七瀬がゲーム実況するってー」
「マジかよ! それなら、あのホラーゲームやってほしい!」
外野がどんどん盛り上がっていく。いつの間にか、バイトの話からおすすめのゲームの話に変わっていた。
適当に相槌を打っていると、ふとスマホカバーに挟んだサンクスカードが目に留まる。そのせいで、あの日の苦々しい出来事が蘇った。
『俺が変われたのは、七瀬のおかげ。ありがとう。お礼をしないとね』
キョウさんからそう言われたとき、胸の奥がざわついた。もう俺なんて用済みだと言われたような気分になったからだ。
もっと俺を見ろ。他のやつなんて見るな。その澄んだ瞳に、俺だけを映してほしい。その結果が、あの強奪みたいなキスだ。
恋なんてしたくなかったけど、ここまでくれば認めざるを得ない。
俺は、キョウさんが好きだ。もう自分では制御できないくらい、好きになっていた。
多分、キョウさんの価値観では、男同士の恋愛はナシだろう。花火大会の日に、キョウさんとならキスしたいと言ったときも、速攻逃げられた。本気だったからこそ、あれは結構凹んだ。
このまま隣に居続けたら、俺自身が関係をぶち壊してしまう。そうなる前に、距離を置くことにした。
新しいバイト先が見つかったら、アイスクリーム屋はやめよう。それであの人との関係も終わりだ。
「次、移動教室じゃね?」
「だな。行こうぜー」
周りで騒いでいたクラスメイトが、興味を失ったように離れていく。俺も机の中から教科書を取り出して、立ち上がった。
スマホカバーを閉じると、うるっとした瞳のゆるかわと目が合う。
なんだよ? こっち見んな。文句あんのか?
無言のまま、ゆるかわに圧を送る。そんな自分も、どうしようもなく子どもっぽく思えて、嫌になった。
休み時間に席でスマホをいじっていると、クラスメイトの武田が馴れ馴れしく肩に手を置いてくる。
「七瀬、なにしてんの?」
「バイト探してる」
肩に置かれた手を払いながら答えると、武田は「ええ!?」と大袈裟にリアクションした。
「駅前のBonBonで働いてんじゃん? やめんの? なんで?」
鬱陶しく思いながらも、スマホを裏返して机に置いた。
「もっと時給のいいバイトないかなって」
適当に理由を言うと、武田は「あー」と納得したように頷く。
「時給低いとモチベ下がるよな。うちも上げてほしいわー」
そういえば、武田はラーメン屋でバイトをしているんだった。前にクラスメイトと食べに行ったとき、頭にタオルを巻いたおっちゃんにこっぴどく怒鳴られているのを目撃した。
どこの店でも、金を稼ぐのは大変らしい。パワハラじみた扱いがないだけ、うちのバイト先はまともなのだろう。
できればやめたくないけど、そうも言っていられない事態に陥っている。俺がキョウさんに、キスをしてしまったからだ。
「いっそ配信でもしてみれば? 七瀬のビジュなら投げ銭で相当稼げるだろ」
「あー、ゲーム実況ならアリだなぁ」
冗談半分でのってみると、武田はだっはっはと笑い出す。その声に引き寄せられるように、次々と人が集まってきた。
「おまえら、なに盛り上がってんの?」
「七瀬がゲーム実況するってー」
「マジかよ! それなら、あのホラーゲームやってほしい!」
外野がどんどん盛り上がっていく。いつの間にか、バイトの話からおすすめのゲームの話に変わっていた。
適当に相槌を打っていると、ふとスマホカバーに挟んだサンクスカードが目に留まる。そのせいで、あの日の苦々しい出来事が蘇った。
『俺が変われたのは、七瀬のおかげ。ありがとう。お礼をしないとね』
キョウさんからそう言われたとき、胸の奥がざわついた。もう俺なんて用済みだと言われたような気分になったからだ。
もっと俺を見ろ。他のやつなんて見るな。その澄んだ瞳に、俺だけを映してほしい。その結果が、あの強奪みたいなキスだ。
恋なんてしたくなかったけど、ここまでくれば認めざるを得ない。
俺は、キョウさんが好きだ。もう自分では制御できないくらい、好きになっていた。
多分、キョウさんの価値観では、男同士の恋愛はナシだろう。花火大会の日に、キョウさんとならキスしたいと言ったときも、速攻逃げられた。本気だったからこそ、あれは結構凹んだ。
このまま隣に居続けたら、俺自身が関係をぶち壊してしまう。そうなる前に、距離を置くことにした。
新しいバイト先が見つかったら、アイスクリーム屋はやめよう。それであの人との関係も終わりだ。
「次、移動教室じゃね?」
「だな。行こうぜー」
周りで騒いでいたクラスメイトが、興味を失ったように離れていく。俺も机の中から教科書を取り出して、立ち上がった。
スマホカバーを閉じると、うるっとした瞳のゆるかわと目が合う。
なんだよ? こっち見んな。文句あんのか?
無言のまま、ゆるかわに圧を送る。そんな自分も、どうしようもなく子どもっぽく思えて、嫌になった。



