「よーしっ!」
翌日の昼休み。
僕は昨日と同じ長ラン姿に着替えると、下駄箱で靴を履き替えて自分に気合いを入れた。
「待て待て待て」
だが、中庭に意気揚々と向かおうとすると、肩を急に掴まれて足を止められてしまった。
「お前、またアレをやるつもりなのか?」
振り返ると、僕の肩を掴んでいたのは穂高君だった。
僕は振り返って穂高君を見上げると、大きく頷いてみせた。
「やり続ける。穂高君がバスケを再開してくれるまで」
(あっ……)
昨日よりも緊張が緩和されたのか、僕はすんなりと言葉が出てきたことに自分で驚く。
すると、急に話し出した僕に穂高君も驚いたのか、一瞬目を丸くしたが、すぐに溜め息をついた。
「……なんで、そこまでして俺にバスケをして欲しいんだ? お前に関係ないだろ?」
(関係ない……そうだよ! けど!)
僕は手に力を込めると、真っ直ぐ穂高君の目を見つめた。
「そんなの! 穂高君がカッコいいからに決まってるじゃないか!」
「……? は?」
「まず、ドリブルを始めた瞬間からもうヤバいんだ。目が鋭くなってさ! パスを出すときも、ボールを持ったまま周りを見渡すあの視線! あと穂高君のパスは力強くて、男前すぎるんだ!」
「……え、あっ……」
早口で畳みかけるように喋り出した僕の勢いに押された穂高君は、僕から一歩後退った。
だが、僕も追いかけるように穂高君にさらに詰め寄った。
「でも一番はやっぱりシュートの瞬間だと思うんだ! ボールを持ち上げて膝を軽く曲げて、跳び上がるあの瞬間! つい、こっちの息が止まってしまうんだ! ゴールに吸い込まれるようなボールの軌道が完璧すぎてさ!」
「ま、待……」
「待たない!」
「……!」
顔を赤らめて僕の話を遮ろうとする穂高君を一蹴して、僕はノンストップで話し続けた。
「だいたいさ! バスケなんてチームスポーツなんだから、一人でミスを背負いこむ必要なんてないだろ! 穂高君を責めた仲間がいたか? いなかったよね? 怪我は治ったんだから、一回失敗したくらいで辞めようとするなんてダサすぎるんだよ!」
(あっ……)
穂高君のすごさを伝えるつもりだったはずが、思わず余計なことまで言ってしまったことに気が付いた僕は、背中に冷や汗が感じた。
「い、今のはちょっと言い過ぎて……」
言い訳をしようとするが、急に片手で顔を覆い隠して顔を背けた穂高君は、肩を震わせていた。
(ぼ、僕は一体なんてことを……!)
応援するはずが穂高君を傷つけてしまったと、僕は頭の中がパニックに陥ってしまう。
「ご、ごめ……!」
「アハハハハッ」
「……!」
急いで謝ろうとした瞬間、突然腹を抱えて笑い出した穂高君に、僕は呆気にとらえて目を丸くしてしまう。
「えっ、あっ……」
「あーあ……サンキューな。なんか俺、ダッセーことしてんなって、やっと目が覚めたわ」
笑い過ぎたのか、目に浮かんだ涙を拭いながら顔を上げた穂高君の姿は、僕がずっと見てきた穂高君だった。
「穂高君……」
僕がずっと見てきた穂高君の姿を取り戻してくれた気がして、僕の目から安堵の溜め息のようにスッと一筋の涙が零れ落ちた。
「おいおい、なんでお前が泣くんだよ。ったく……」
穂高君は僕の顔にそっと指先を伸ばすと、頬を伝った涙を優しく拭ってくれた。
「穂高君……」
「なぁ、いまさらだけどさ。お前の名前、もう一度教えてくれないか?」
「えっ……?」
霞む視界で穂高君の顔を見つめると、穂高君の口元は笑っていた。
初めて間近で見る穂高君の笑顔に、僕は自分の心臓が途端に跳ね上がったのを感じた。
「名前だよ、名前。お前の」
「ぼ、僕? 僕は七瀬朔太郎……」
「七瀬、な。サンキュー、七瀬。俺のこと見捨てないでくれて」
「そ、そんな見捨てるだなんて! 僕が穂高君にそんなことするはずないだろ!」
「そうだな。だって……」
穂高君は言いかけると、自分の口元を片手で覆い隠した。
「うん……お前がまさか俺のことを応援してくれていたなんて、思ってもみなかったからさ……けど俺、もう一度頑張るから。だからこれからも、俺のこと応援してくれないか?」
「……! ああ! もちろんだ!」
僕の思いがやっと届いた。
安堵から僕は必死に何度も頷いて見せると、穂高君は笑った。
まるで試合に勝ったときのような、最高な笑顔で。
翌日の昼休み。
僕は昨日と同じ長ラン姿に着替えると、下駄箱で靴を履き替えて自分に気合いを入れた。
「待て待て待て」
だが、中庭に意気揚々と向かおうとすると、肩を急に掴まれて足を止められてしまった。
「お前、またアレをやるつもりなのか?」
振り返ると、僕の肩を掴んでいたのは穂高君だった。
僕は振り返って穂高君を見上げると、大きく頷いてみせた。
「やり続ける。穂高君がバスケを再開してくれるまで」
(あっ……)
昨日よりも緊張が緩和されたのか、僕はすんなりと言葉が出てきたことに自分で驚く。
すると、急に話し出した僕に穂高君も驚いたのか、一瞬目を丸くしたが、すぐに溜め息をついた。
「……なんで、そこまでして俺にバスケをして欲しいんだ? お前に関係ないだろ?」
(関係ない……そうだよ! けど!)
僕は手に力を込めると、真っ直ぐ穂高君の目を見つめた。
「そんなの! 穂高君がカッコいいからに決まってるじゃないか!」
「……? は?」
「まず、ドリブルを始めた瞬間からもうヤバいんだ。目が鋭くなってさ! パスを出すときも、ボールを持ったまま周りを見渡すあの視線! あと穂高君のパスは力強くて、男前すぎるんだ!」
「……え、あっ……」
早口で畳みかけるように喋り出した僕の勢いに押された穂高君は、僕から一歩後退った。
だが、僕も追いかけるように穂高君にさらに詰め寄った。
「でも一番はやっぱりシュートの瞬間だと思うんだ! ボールを持ち上げて膝を軽く曲げて、跳び上がるあの瞬間! つい、こっちの息が止まってしまうんだ! ゴールに吸い込まれるようなボールの軌道が完璧すぎてさ!」
「ま、待……」
「待たない!」
「……!」
顔を赤らめて僕の話を遮ろうとする穂高君を一蹴して、僕はノンストップで話し続けた。
「だいたいさ! バスケなんてチームスポーツなんだから、一人でミスを背負いこむ必要なんてないだろ! 穂高君を責めた仲間がいたか? いなかったよね? 怪我は治ったんだから、一回失敗したくらいで辞めようとするなんてダサすぎるんだよ!」
(あっ……)
穂高君のすごさを伝えるつもりだったはずが、思わず余計なことまで言ってしまったことに気が付いた僕は、背中に冷や汗が感じた。
「い、今のはちょっと言い過ぎて……」
言い訳をしようとするが、急に片手で顔を覆い隠して顔を背けた穂高君は、肩を震わせていた。
(ぼ、僕は一体なんてことを……!)
応援するはずが穂高君を傷つけてしまったと、僕は頭の中がパニックに陥ってしまう。
「ご、ごめ……!」
「アハハハハッ」
「……!」
急いで謝ろうとした瞬間、突然腹を抱えて笑い出した穂高君に、僕は呆気にとらえて目を丸くしてしまう。
「えっ、あっ……」
「あーあ……サンキューな。なんか俺、ダッセーことしてんなって、やっと目が覚めたわ」
笑い過ぎたのか、目に浮かんだ涙を拭いながら顔を上げた穂高君の姿は、僕がずっと見てきた穂高君だった。
「穂高君……」
僕がずっと見てきた穂高君の姿を取り戻してくれた気がして、僕の目から安堵の溜め息のようにスッと一筋の涙が零れ落ちた。
「おいおい、なんでお前が泣くんだよ。ったく……」
穂高君は僕の顔にそっと指先を伸ばすと、頬を伝った涙を優しく拭ってくれた。
「穂高君……」
「なぁ、いまさらだけどさ。お前の名前、もう一度教えてくれないか?」
「えっ……?」
霞む視界で穂高君の顔を見つめると、穂高君の口元は笑っていた。
初めて間近で見る穂高君の笑顔に、僕は自分の心臓が途端に跳ね上がったのを感じた。
「名前だよ、名前。お前の」
「ぼ、僕? 僕は七瀬朔太郎……」
「七瀬、な。サンキュー、七瀬。俺のこと見捨てないでくれて」
「そ、そんな見捨てるだなんて! 僕が穂高君にそんなことするはずないだろ!」
「そうだな。だって……」
穂高君は言いかけると、自分の口元を片手で覆い隠した。
「うん……お前がまさか俺のことを応援してくれていたなんて、思ってもみなかったからさ……けど俺、もう一度頑張るから。だからこれからも、俺のこと応援してくれないか?」
「……! ああ! もちろんだ!」
僕の思いがやっと届いた。
安堵から僕は必死に何度も頷いて見せると、穂高君は笑った。
まるで試合に勝ったときのような、最高な笑顔で。



