叙情的現象解体文学

『あなたの答えを教えてください』
 
A.
「必然性を求めるのは、人間が偶然に絶えきれないだけの話だから。
 だから、全世界人口八十億人のうちの二人が出会ったとか嘘。
 運命なんてものは存在しない。
 よくあるラブロマンスのような出会いは偶像。フィクションはフィクションだ。
 全てのことが偶発的に起こって、全てのことが必然で覆い隠されるだけ。
 俺さ、運命論者とか嫌いなんだよ」
 
B.
 間違っていても一向に構わないから、どうか生きていて欲しかった。
 どれだけ後ろ指を刺されようが、生きていて欲しかった。
 生きる意味とかなくてもいいから生きていて欲しかった。
 部屋から出られなくてもよかった。
 お金を稼げなくてもよかった。
 ただ、君がそばで呼吸してくれれば、充分だったのに。
 
A.
「そうだろ。例えば、人間は運命に従って結婚するはずだった。
 でも、現状見てみろよ。人間はマッチングアプリで作為的に出会っている。
 相手に求める条件を、強引に突きつけちゃったりしてさ。
 だから、運命的な出会いなんて、最初から存在しないんだ。
 お前さ、離婚する夫婦どれだけいると思ってるんだよ。分かるだろ。
 人間は、どうせ宇宙から見れば塵のような存在に過ぎないのさ。
 だから適当に暇を潰して生きてりゃいいんだよ。
 生きる意味を考えるのは、馬鹿のやることだからな
 気楽に生きろって」
 
B.
 きっと、生きること自体がどうしようもないくらい辛かったんだよね。
 私はね、頑張って生きるよ。
 きっと、君は命の大切さを身をもって教えてくれたんだよね。
 出会えてよかったと思ってるよ。心の底から。
 この短い人生の中で、偶然出会ったのは奇跡かもしれないね。
 ちょっと恥ずかしいけど、出会うべくして出会ったってことにしておこうよ。
 もう、君の体温が調節されることはないけれど、また会えるって知ってるの
 世界って、多分私たちのことだよ。そういうことにしておこう。
 またね、さようなら。
 
A.
「だからさ、なんで分からないかな。
 この世界に、意味なんかないんだよ。
 毎日、餓死や戦争で死ぬ子どもがいるのに、多くの人は泡銭で快楽を買ってる。
 必要以上の贅沢をする理由なんかないだろう。本当は。
 ストレスって概念は、わざと作り出してるだけなのさ。
 人間も、生殖を目的とした生き物でしかないんだよ。
 結局、どれだけ運命を誓っても、人間は不倫するだろ。
 誤魔化されているのかもしれないけど、人間は猿から進化した生き物に過ぎないのさ。
 だから、適当に暇を潰して生きてりゃいいんだよ。
 うまいもん食って、寝て、今みたいにタバコでも吸ってさ。
 脳を喜ばせて生きてりゃ大体うまくいくのさ」
 
 
「えっ、なんだよ。だからって別に俺は不倫したりしない。
 なんでかって?
 なんでだろうな。まぁ、面倒くさいからな。不倫したら。
 そう、難しいことは考えるなよ。考えるから苦しくなるのさ。
 もっと肩の力抜いて生きろよ。
 どうせ、俺達は大した人間じゃないんだからさ。
 普通に生きて、普通に死にゃあいいんだよ。
 誰でも特別だなんて、綺麗事なんだからさ。ちゃんと現実見ろよ」
 
X.
「列車の遅延をお知らせ致します。今日午後五時、本線内で人身事故が発生した影響で、列車の大幅な遅延が発生しております。現在、運転再開見込みは未定となっております。列車遅れまして、大変申し訳ありません。なお、代替輸送につきましては……」
 
 完