〇数日後・昼休み
神統学舎・神具実習室
澪と紬、神具を前に自主練
紬「うおおおお!」
パチッ
失敗
紬「なんでぇぇぇ!?」
八雲「やかましい」
紬「先生は黙ってて!」
澪、思わず笑う
実習室の入口
一人の男子生徒が立っている
青柳 朔
無造作な茶髪
少し鋭い目つき
気怠げな雰囲気
丙組生徒
朔(またやってる)
昼休みになるたび
澪と紬はここへ来る
昨日も一昨日もその前も――毎日
失敗ばかりしているのに
紬「くそー!」
朔(飽きねぇのかよ)
壁にもたれたまま眺める
少し見つめた後に
朔「……意味あるのか」
澪たちが振り返る
紬「何が?」
朔「それ」
神具を見る
朔「毎日やってるだろ」
紬「自主練だよ!」
朔「ふーん」
少し沈黙
朔「どうせ結果なんて変わらないのに」
朔「俺ら丙組だぞ」
しん
紬の表情が曇る
昨日の実習
甲組との圧倒的な差
朔「結局、生まれ持った才能の差だ」
ぽつり
朔「頑張ったって無駄だろ」
澪「……そんなことないです」
朔「え?」
澪「私も」
少し迷う
澪「昨日まではそう思ってました」
神具を見る
脳裏をよぎる
柔らかく光った神具
久遠の言葉
『できるようになるって言ったでしょ』
澪「でも」
澪「諦めたら」
澪「本当に何も変わらないと思うんです」
朔「……」
澪「私もまだ全然できません」
澪「でも」
澪「少しだけ前に進めたから」
澪「もう少し頑張ってみたいんです」
しーんと静寂
朔「……貸してくれ」
澪「え?」
朔「神具」
朔「少しやってみたい」
澪の顔がぱっと明るくなる
澪「はい!」
紬「おっ」
八雲「ほう」
朔、神具の前へ立つ
慎重に神具に手を添える
神気を流す
沈黙
何も起きない
朔「……」
八雲「一回で出来るなら苦労しねぇ」
紬「そうそう!」
紬「私なんて何回失敗してると思ってんの!」
八雲「数えるのも面倒だ」
紬「ひどっ!」
澪、くすっ
朔もほんの少しだけ口元を緩めた
紬「ていうか君」
朔「?」
紬「名前なんだっけ」
朔「……クラスメイトの名前くらい覚えろよ」
紬「覚えるの苦手なんだよね」
朔「……青柳。青柳 朔」
紬「朔ね!」
紬、澪を見る
紬「澪、朔!」
澪「う、うん」
澪「青柳くん」
朔「……好きに呼べば」
〇翌日・昼休み
神具実習室
澪、紬、朔の三人で自主練
扉の外
丙組女子生徒がこちらを見ている
紬「あ」
女子生徒「……」
目が合う
女子生徒「……私も」
少し迷ったのち
女子生徒「参加していい?」
澪「!」
澪「もちろん!」
女子生徒、少し驚く
紬「大歓迎」
女子生徒「……ありがと」
少し気まずそうに視線を逸らす
八雲「なら座れ」
女子生徒「はい」
〇さらに数日後
実習室
神具を囲む丙組の生徒たち
以前よりずっと賑やか
神具に向かう者
教え合う者
失敗して騒ぐ者
紬「増えたねぇ」
八雲「見れば分かる」
紬「先生はそういうとこだぞ」
八雲「何がだ」
少し離れた場所
澪はそんな光景を見ている
澪(みんな……)
自然と頬が緩む
わいわい
笑い声が響く
〇校舎二階
窓。
麗華がその様子を見ている
麗華「……」
澪が笑っている
丙組が笑っている
ぎりっ
歯ぎしり
麗華(どうして)(あなたがそんな顔をするの)
女子生徒「麗華さん」
男子生徒「見ました?」
女子生徒「丙組の人たち」
男子生徒「神具を使ってるんです」
麗華「……そうみたいね」
女子生徒「しかも昼休みに自主練ですって」
男子生徒「おかしくないですか?」
女子生徒「あんな落ちこぼれ達が」
男子生徒「神具なんて使って」
女子生徒「私たちですら自由に触れないのに」
男子生徒「八雲先生もいるらしいですよ」
女子生徒「本当に許可してるんでしょうか」
男子生徒「八雲先生ですからね」
「万年丙組担当って聞きましたよ」
くすくす
麗華、窓の外を見る
遠く
神具を囲む澪たち
楽しそうな笑い声
澪も笑っている
ぎゅっ
麗華、拳を握る
麗華「……そうね」
全員、麗華を見る
麗華「神具は特別なものだもの」
麗華「誰が扱っても同じ、というわけではないわ」
男子生徒「ですよね」
麗華「本来なら」
少し間
麗華「相応しい者が扱うべきだと思うの」
女子生徒「確かに……」
男子生徒「宝の持ち腐れだな」
女子生徒「麗華さんみたいな人が使うなら分かるけど」
麗華「……」
否定しない
男子生徒「ちょっと見てきます」
女子生徒「私も」
麗華「……」
少し間。
麗華「行きましょう」
甲組生徒たち「はい」
〇神具実習室
わいわい自主練中
八雲一時不在
扉が開く
甲組の生徒たち
その後ろには麗華
実習室の空気が変わる
紬「……何?」
男子生徒「へぇ」
女子生徒「本当に神具じゃない」
紬「帰って」
男子生徒「どれどれ?」
紬「ちょっと!」
男子生徒「何だよその態度」
「俺たちは甲組だぜ」
紬「だから何よ」
女子生徒「落ちこぼれは、黙って言うこと聞きなさいってことよ」
紬「な……っ」
朔やほかの丙組生徒がぴくりと反応
男子生徒「俺らが使った方が有意義だろ」
男子生徒、神具の前へ
澪「……やめてください」
男子生徒「ちょっと借りるだけだって」
勝手に手を添える
神気を流す
ふわっ
神具が強く輝く
甲組「ほら!」
男子生徒「やっぱりな」
女子生徒「使う人次第ね」
男子生徒「宝の持ち腐れじゃん」
朔「返せよ」
男子生徒「しつこいな」
ここで、麗華が前へ出る
麗華「貸してくださる?」
甲組「麗華さん!」
男子生徒、慌てて場所を譲る
麗華、神具の前へ
澪と目が合う
麗華「神具は正直なものよ」
澪「……」
麗華「誰が扱うべきか」
麗華「ちゃんと分かっている」
麗華、鏡面へ手を添える
ふわぁっ――
先ほどよりも強い光
実習室が金色に照らされる
甲組「すごい……!」
女子生徒「さすが神代家……!」
男子生徒「やっぱり麗華さんだ!」
麗華、静かに微笑む
そして
澪を見る
麗華「努力は立派だと思うわ」
澪「……っ」
麗華「でも」
麗華「結果が伴わなければ意味はないでしょう?」
しん
実習室が静まる
澪、言葉を失う
麗華「神具が可哀想だもの」
麗華「本来の力を発揮できなくて」
甲組生徒たち「そうだ」「その通りよ」
男子生徒「麗華さん」
「今日からこの神具は、我ら甲組が使いましょう!」
麗華「そうね」
「そこを譲ってくださる? 丙組のみなさん」
男子生徒「ほら、どけよ」
紬「はぁ!?」
紬、キレる
女子生徒「ここも、今後は私たちが使うから」
朔「おい……!」
神具を挟んで揉み合いになる
澪(久遠様が貸してくれた、大切な――)
澪「やめてください……!」
ガタッ
台座が揺れる
全員「!」
神具が傾く
澪「危ない!」
ぐらり
銀の神具が台座から滑り落ちる
女子生徒「きゃっ!」
男子生徒「うわっ!」
誰も動けない
澪だけが、手を伸ばそうとして――届かない
その瞬間、床に落ちた影が伸びる
しゅるり
黒い影が神具を包み込む
全員「……!?」
神具は地面に触れる寸前で止まる
しん……
甲組固まる
紬「え」
澪「……!」
影がゆらりと揺れる
神具がゆっくり澪の手元へ戻る
麗華、目を見張る
男子生徒「な……」
女子生徒「今の何……」
麗華(影……)(久遠様が、守った……?)
八雲「何してる」
八雲戻ってくる
静まり返る
八雲、状況を見て全部察する
八雲「自主練してる連中の邪魔とは」
八雲「甲組も暇なんだな」
男子生徒「ち、違います」
八雲「違うか?」
誰も答えられない
澪、大切そうに神具を抱えている
傷ひとつついていない
澪(……よかった……)
男子生徒「で、でもこいつらが貴重な神具を独占なんて――」
八雲「ちなみに」
八雲「お前らが勝手に触ってたそれ」
八雲「影神様の私物だ」
しん……
甲組「え?」
女子生徒「か、影神様……?」
男子生徒「は……?」
顔面蒼白
八雲「命拾いしたな」
「傷ひとつでもつけようものなら、どうなっていたか」
甲組、息をのむ
麗華、澪の手に収まる神具を見る
ぎりっ
麗華(なんで、澪ばかり)
澪、ふと顔を上げる
麗華と目が合う
ぞくり
凍りつくような視線
麗華(認めない)
(そんなはずがない)
(選ばれるのは私よ)
麗華、踵を返す
甲組の生徒たちも後に続く
澪「……」
澪、胸騒ぎ
神統学舎・神具実習室
澪と紬、神具を前に自主練
紬「うおおおお!」
パチッ
失敗
紬「なんでぇぇぇ!?」
八雲「やかましい」
紬「先生は黙ってて!」
澪、思わず笑う
実習室の入口
一人の男子生徒が立っている
青柳 朔
無造作な茶髪
少し鋭い目つき
気怠げな雰囲気
丙組生徒
朔(またやってる)
昼休みになるたび
澪と紬はここへ来る
昨日も一昨日もその前も――毎日
失敗ばかりしているのに
紬「くそー!」
朔(飽きねぇのかよ)
壁にもたれたまま眺める
少し見つめた後に
朔「……意味あるのか」
澪たちが振り返る
紬「何が?」
朔「それ」
神具を見る
朔「毎日やってるだろ」
紬「自主練だよ!」
朔「ふーん」
少し沈黙
朔「どうせ結果なんて変わらないのに」
朔「俺ら丙組だぞ」
しん
紬の表情が曇る
昨日の実習
甲組との圧倒的な差
朔「結局、生まれ持った才能の差だ」
ぽつり
朔「頑張ったって無駄だろ」
澪「……そんなことないです」
朔「え?」
澪「私も」
少し迷う
澪「昨日まではそう思ってました」
神具を見る
脳裏をよぎる
柔らかく光った神具
久遠の言葉
『できるようになるって言ったでしょ』
澪「でも」
澪「諦めたら」
澪「本当に何も変わらないと思うんです」
朔「……」
澪「私もまだ全然できません」
澪「でも」
澪「少しだけ前に進めたから」
澪「もう少し頑張ってみたいんです」
しーんと静寂
朔「……貸してくれ」
澪「え?」
朔「神具」
朔「少しやってみたい」
澪の顔がぱっと明るくなる
澪「はい!」
紬「おっ」
八雲「ほう」
朔、神具の前へ立つ
慎重に神具に手を添える
神気を流す
沈黙
何も起きない
朔「……」
八雲「一回で出来るなら苦労しねぇ」
紬「そうそう!」
紬「私なんて何回失敗してると思ってんの!」
八雲「数えるのも面倒だ」
紬「ひどっ!」
澪、くすっ
朔もほんの少しだけ口元を緩めた
紬「ていうか君」
朔「?」
紬「名前なんだっけ」
朔「……クラスメイトの名前くらい覚えろよ」
紬「覚えるの苦手なんだよね」
朔「……青柳。青柳 朔」
紬「朔ね!」
紬、澪を見る
紬「澪、朔!」
澪「う、うん」
澪「青柳くん」
朔「……好きに呼べば」
〇翌日・昼休み
神具実習室
澪、紬、朔の三人で自主練
扉の外
丙組女子生徒がこちらを見ている
紬「あ」
女子生徒「……」
目が合う
女子生徒「……私も」
少し迷ったのち
女子生徒「参加していい?」
澪「!」
澪「もちろん!」
女子生徒、少し驚く
紬「大歓迎」
女子生徒「……ありがと」
少し気まずそうに視線を逸らす
八雲「なら座れ」
女子生徒「はい」
〇さらに数日後
実習室
神具を囲む丙組の生徒たち
以前よりずっと賑やか
神具に向かう者
教え合う者
失敗して騒ぐ者
紬「増えたねぇ」
八雲「見れば分かる」
紬「先生はそういうとこだぞ」
八雲「何がだ」
少し離れた場所
澪はそんな光景を見ている
澪(みんな……)
自然と頬が緩む
わいわい
笑い声が響く
〇校舎二階
窓。
麗華がその様子を見ている
麗華「……」
澪が笑っている
丙組が笑っている
ぎりっ
歯ぎしり
麗華(どうして)(あなたがそんな顔をするの)
女子生徒「麗華さん」
男子生徒「見ました?」
女子生徒「丙組の人たち」
男子生徒「神具を使ってるんです」
麗華「……そうみたいね」
女子生徒「しかも昼休みに自主練ですって」
男子生徒「おかしくないですか?」
女子生徒「あんな落ちこぼれ達が」
男子生徒「神具なんて使って」
女子生徒「私たちですら自由に触れないのに」
男子生徒「八雲先生もいるらしいですよ」
女子生徒「本当に許可してるんでしょうか」
男子生徒「八雲先生ですからね」
「万年丙組担当って聞きましたよ」
くすくす
麗華、窓の外を見る
遠く
神具を囲む澪たち
楽しそうな笑い声
澪も笑っている
ぎゅっ
麗華、拳を握る
麗華「……そうね」
全員、麗華を見る
麗華「神具は特別なものだもの」
麗華「誰が扱っても同じ、というわけではないわ」
男子生徒「ですよね」
麗華「本来なら」
少し間
麗華「相応しい者が扱うべきだと思うの」
女子生徒「確かに……」
男子生徒「宝の持ち腐れだな」
女子生徒「麗華さんみたいな人が使うなら分かるけど」
麗華「……」
否定しない
男子生徒「ちょっと見てきます」
女子生徒「私も」
麗華「……」
少し間。
麗華「行きましょう」
甲組生徒たち「はい」
〇神具実習室
わいわい自主練中
八雲一時不在
扉が開く
甲組の生徒たち
その後ろには麗華
実習室の空気が変わる
紬「……何?」
男子生徒「へぇ」
女子生徒「本当に神具じゃない」
紬「帰って」
男子生徒「どれどれ?」
紬「ちょっと!」
男子生徒「何だよその態度」
「俺たちは甲組だぜ」
紬「だから何よ」
女子生徒「落ちこぼれは、黙って言うこと聞きなさいってことよ」
紬「な……っ」
朔やほかの丙組生徒がぴくりと反応
男子生徒「俺らが使った方が有意義だろ」
男子生徒、神具の前へ
澪「……やめてください」
男子生徒「ちょっと借りるだけだって」
勝手に手を添える
神気を流す
ふわっ
神具が強く輝く
甲組「ほら!」
男子生徒「やっぱりな」
女子生徒「使う人次第ね」
男子生徒「宝の持ち腐れじゃん」
朔「返せよ」
男子生徒「しつこいな」
ここで、麗華が前へ出る
麗華「貸してくださる?」
甲組「麗華さん!」
男子生徒、慌てて場所を譲る
麗華、神具の前へ
澪と目が合う
麗華「神具は正直なものよ」
澪「……」
麗華「誰が扱うべきか」
麗華「ちゃんと分かっている」
麗華、鏡面へ手を添える
ふわぁっ――
先ほどよりも強い光
実習室が金色に照らされる
甲組「すごい……!」
女子生徒「さすが神代家……!」
男子生徒「やっぱり麗華さんだ!」
麗華、静かに微笑む
そして
澪を見る
麗華「努力は立派だと思うわ」
澪「……っ」
麗華「でも」
麗華「結果が伴わなければ意味はないでしょう?」
しん
実習室が静まる
澪、言葉を失う
麗華「神具が可哀想だもの」
麗華「本来の力を発揮できなくて」
甲組生徒たち「そうだ」「その通りよ」
男子生徒「麗華さん」
「今日からこの神具は、我ら甲組が使いましょう!」
麗華「そうね」
「そこを譲ってくださる? 丙組のみなさん」
男子生徒「ほら、どけよ」
紬「はぁ!?」
紬、キレる
女子生徒「ここも、今後は私たちが使うから」
朔「おい……!」
神具を挟んで揉み合いになる
澪(久遠様が貸してくれた、大切な――)
澪「やめてください……!」
ガタッ
台座が揺れる
全員「!」
神具が傾く
澪「危ない!」
ぐらり
銀の神具が台座から滑り落ちる
女子生徒「きゃっ!」
男子生徒「うわっ!」
誰も動けない
澪だけが、手を伸ばそうとして――届かない
その瞬間、床に落ちた影が伸びる
しゅるり
黒い影が神具を包み込む
全員「……!?」
神具は地面に触れる寸前で止まる
しん……
甲組固まる
紬「え」
澪「……!」
影がゆらりと揺れる
神具がゆっくり澪の手元へ戻る
麗華、目を見張る
男子生徒「な……」
女子生徒「今の何……」
麗華(影……)(久遠様が、守った……?)
八雲「何してる」
八雲戻ってくる
静まり返る
八雲、状況を見て全部察する
八雲「自主練してる連中の邪魔とは」
八雲「甲組も暇なんだな」
男子生徒「ち、違います」
八雲「違うか?」
誰も答えられない
澪、大切そうに神具を抱えている
傷ひとつついていない
澪(……よかった……)
男子生徒「で、でもこいつらが貴重な神具を独占なんて――」
八雲「ちなみに」
八雲「お前らが勝手に触ってたそれ」
八雲「影神様の私物だ」
しん……
甲組「え?」
女子生徒「か、影神様……?」
男子生徒「は……?」
顔面蒼白
八雲「命拾いしたな」
「傷ひとつでもつけようものなら、どうなっていたか」
甲組、息をのむ
麗華、澪の手に収まる神具を見る
ぎりっ
麗華(なんで、澪ばかり)
澪、ふと顔を上げる
麗華と目が合う
ぞくり
凍りつくような視線
麗華(認めない)
(そんなはずがない)
(選ばれるのは私よ)
麗華、踵を返す
甲組の生徒たちも後に続く
澪「……」
澪、胸騒ぎ


