〇神域・夜
机の上
実習で使われていたものとよく似た神具
澪、目を丸くする
澪「神具……?」
久遠「うん」
澪「どうして……」
久遠「練習するんでしょ?」
澪「で、でも……」
澪、実習場での天城の言葉を思い出す
『極めて貴重な品である』
『破損した場合、代替は容易ではない』
澪「こんな簡単に使っていいものじゃ……」
久遠「いいよ」
即答
澪「え?」
久遠「僕のだから」
澪、固まる
久遠「昔使ってたやつ」
澪「昔……」
久遠「たぶん数百年ぶりに出した」
澪「数百年!?」
久遠、きょとん
久遠「変?」
澪(感覚が違いすぎる……)
久遠「壊れても別に構わないし」
澪「か、構ってください!」
久遠「そう?」
澪「そうです!」
久遠、少しだけ笑う
久遠「じゃあ壊さないように頑張ろう」
澪「そういう問題じゃない気が……」
久遠「違う?」
澪「違わないですけど……」
思わず言い返してから、はっとする
澪(久遠様の前で、こんな風に話したのは初めてかも)
久遠は気にした様子もなく、神具を澪の前へ置く
久遠「やろう」
澪、神具を見る
今日の実習
麗華の光
甲組の笑い声。
天城の評価。
『今のお前に神具は扱えない』
ぎゅっと拳を握る
澪「……やります」
久遠、少しだけ目を細める
〇神域・自主練
澪、神具へ神気を流す
失敗。もう一度
また失敗
何度やっても反応しない
澪「っ……」
悔しい
澪(でも)
久遠、隣で見ている
久遠「今日はここまでにする?」
澪「しません」
即答
久遠、少し目を見開く
澪「……もう少し」
久遠「そう」
少しだけ嬉しそう
ふっ
神具の奥で、小さな光が灯る
澪「!」
澪「今……!」
慌てて神具を見つめる。
光はすぐ消える
それでも、確かに光った
久遠「うん」
澪「光りました!」
久遠「光ったね」
澪、思わず笑顔
久遠、その顔を見る
久遠「ほら」
澪「え?」
久遠「できた」
澪、神具を見る
澪「……はい」
久遠「できるようになるって言ったでしょ」
澪、目を瞬く
澪「でも、本当に少しだけです」
久遠「最初から完璧な人なんていないよ」
澪「久遠様は?」
久遠「どうだったかな」
久遠「随分昔のことだから」
久遠、少し遠い目
澪、目を瞬く
澪(改めて感じる)
(目の前にいるのは、人ではなく神なのだと)
澪、改めて神具を見る
ほんの一瞬
それでも確かに光った
たったそれだけなのに
胸の奥が少し温かい
澪(私にも、できるのかもしれない)
その夜
澪は遅くまで神具と向き合い続けた
〇翌日・昼休み
紬「澪―、ご飯食べ行こ」
澪「あ、ごめん……ちょっと今日は、やりたいことがあって」
澪、手に神具が入った包み
紬「そっかー……ん?」
紬がそれを目にとめる
紬「それ、何もってるの?」
澪「え、えっと……神具、かな」
紬「神具!?」
周囲の丙組も思わず振り返る
澪「あの……久遠様が貸してくださって」
紬「またあの神様か!!」
澪、少し笑う。
澪「これを使って、練習しようと思って」
紬「練習……」
澪「……?」
澪、少し迷って
澪「一緒にやる?」
紬「やる!!」
紬、即答
〇実習場
澪と紬、二人で自主練
失敗
失敗
失敗
紬「むずっ!」
澪「うん……」
紬「ていうかさ、昨日の甲組なんなの!?」
紬「なーにが『やっぱり丙組だな』よ!」
澪、思わず吹き出す
そこへ八雲が通りかかる
八雲「何してる」
紬「ぎゃっ!」
澪「八雲先生」
八雲、神具を見て足を止める
八雲「……それ」
澪「あ……」
八雲「一体どうした?」
澪「久遠様に、お借りしました」
沈黙
八雲、目を閉じる
八雲「あー……」
深いため息
澪を見ながら
八雲(神域に住まわせてるだけじゃ飽き足らず)
(今度は神具まで持たせたのか)
八雲(聞いてはいたが……)(本当に特別なんだな)
澪「?」
八雲「あー、分かった」
八雲、その場に腰かける
澪・紬「え?」
八雲「さすがに一年坊主だけに神具の管理は任せられねぇ」
八雲「昼休みの間くらいは見ててやる」
紬「いいんですか!?」
八雲「壊した時に困るのは俺だからな」
紬「やっぱりこれも取り扱い要注意じゃん!」
八雲「当たり前だ」
紬「ひぃ」
澪、くすっと笑う
八雲「ほら」
「やるなら続けろ」
澪・紬
「はい!」
再び神具へ向き合う
失敗
失敗
失敗
紬「全然だめー!」
八雲「力みすぎだ」
紬「え?」
八雲「神気は押し込むもんじゃねぇ」
「流すんだ」
紬「流す……?」
八雲「川みたいにな」
紬「分からん!」
八雲「だろうな」
澪、その横で神具に手をかざす
澪(流す……)
しかし何も起こらない
澪(ダメだ)
八雲「神代」
澪「はい」
八雲「お前は逆だ」
澪「え?」
八雲「お前さ」
「どうせ自分なんかって思ってるだろ」
澪「……!」
八雲「神力にもそれが出てる」
澪、目を見開く。
八雲「お前、自分の神力を信じてねぇんだ」
澪「……」
八雲「だから無意識に抑え込む」
「出てこようとしてる神力まで引っ込めちまう」
澪、言葉を失う
八雲「神力ってのはな」
「思ってる以上に持ち主の影響を受ける」
八雲「お前が『どうせ無理だ』って思えば」
「神力もそう思うんだよ」
澪「……」
再び神具へ手を伸ばす
神力を流す
沈黙
何も起きない
澪、俯く
八雲「まあ一日で出来るなら誰も苦労しねぇ」
紬「それもそうだ!」
澪、苦笑する
にぎやかな室内
その様子を――
少し離れた校舎の窓から、麗華が見ている
麗華「……」
丙組
落ちこぼれ
本来なら自分とは住む世界が違う人間たち
その中心で、澪が笑っている
麗華(どうして……)
ぎゅっと拳を握る
麗華(どうしてあなたが)
視線が神具へ向く
麗華(神具……?)
麗華の目が細くなる
麗華(また)
(あなたなのね)
握りしめた拳に力が入る
麗華「……気に入らないわ」
机の上
実習で使われていたものとよく似た神具
澪、目を丸くする
澪「神具……?」
久遠「うん」
澪「どうして……」
久遠「練習するんでしょ?」
澪「で、でも……」
澪、実習場での天城の言葉を思い出す
『極めて貴重な品である』
『破損した場合、代替は容易ではない』
澪「こんな簡単に使っていいものじゃ……」
久遠「いいよ」
即答
澪「え?」
久遠「僕のだから」
澪、固まる
久遠「昔使ってたやつ」
澪「昔……」
久遠「たぶん数百年ぶりに出した」
澪「数百年!?」
久遠、きょとん
久遠「変?」
澪(感覚が違いすぎる……)
久遠「壊れても別に構わないし」
澪「か、構ってください!」
久遠「そう?」
澪「そうです!」
久遠、少しだけ笑う
久遠「じゃあ壊さないように頑張ろう」
澪「そういう問題じゃない気が……」
久遠「違う?」
澪「違わないですけど……」
思わず言い返してから、はっとする
澪(久遠様の前で、こんな風に話したのは初めてかも)
久遠は気にした様子もなく、神具を澪の前へ置く
久遠「やろう」
澪、神具を見る
今日の実習
麗華の光
甲組の笑い声。
天城の評価。
『今のお前に神具は扱えない』
ぎゅっと拳を握る
澪「……やります」
久遠、少しだけ目を細める
〇神域・自主練
澪、神具へ神気を流す
失敗。もう一度
また失敗
何度やっても反応しない
澪「っ……」
悔しい
澪(でも)
久遠、隣で見ている
久遠「今日はここまでにする?」
澪「しません」
即答
久遠、少し目を見開く
澪「……もう少し」
久遠「そう」
少しだけ嬉しそう
ふっ
神具の奥で、小さな光が灯る
澪「!」
澪「今……!」
慌てて神具を見つめる。
光はすぐ消える
それでも、確かに光った
久遠「うん」
澪「光りました!」
久遠「光ったね」
澪、思わず笑顔
久遠、その顔を見る
久遠「ほら」
澪「え?」
久遠「できた」
澪、神具を見る
澪「……はい」
久遠「できるようになるって言ったでしょ」
澪、目を瞬く
澪「でも、本当に少しだけです」
久遠「最初から完璧な人なんていないよ」
澪「久遠様は?」
久遠「どうだったかな」
久遠「随分昔のことだから」
久遠、少し遠い目
澪、目を瞬く
澪(改めて感じる)
(目の前にいるのは、人ではなく神なのだと)
澪、改めて神具を見る
ほんの一瞬
それでも確かに光った
たったそれだけなのに
胸の奥が少し温かい
澪(私にも、できるのかもしれない)
その夜
澪は遅くまで神具と向き合い続けた
〇翌日・昼休み
紬「澪―、ご飯食べ行こ」
澪「あ、ごめん……ちょっと今日は、やりたいことがあって」
澪、手に神具が入った包み
紬「そっかー……ん?」
紬がそれを目にとめる
紬「それ、何もってるの?」
澪「え、えっと……神具、かな」
紬「神具!?」
周囲の丙組も思わず振り返る
澪「あの……久遠様が貸してくださって」
紬「またあの神様か!!」
澪、少し笑う。
澪「これを使って、練習しようと思って」
紬「練習……」
澪「……?」
澪、少し迷って
澪「一緒にやる?」
紬「やる!!」
紬、即答
〇実習場
澪と紬、二人で自主練
失敗
失敗
失敗
紬「むずっ!」
澪「うん……」
紬「ていうかさ、昨日の甲組なんなの!?」
紬「なーにが『やっぱり丙組だな』よ!」
澪、思わず吹き出す
そこへ八雲が通りかかる
八雲「何してる」
紬「ぎゃっ!」
澪「八雲先生」
八雲、神具を見て足を止める
八雲「……それ」
澪「あ……」
八雲「一体どうした?」
澪「久遠様に、お借りしました」
沈黙
八雲、目を閉じる
八雲「あー……」
深いため息
澪を見ながら
八雲(神域に住まわせてるだけじゃ飽き足らず)
(今度は神具まで持たせたのか)
八雲(聞いてはいたが……)(本当に特別なんだな)
澪「?」
八雲「あー、分かった」
八雲、その場に腰かける
澪・紬「え?」
八雲「さすがに一年坊主だけに神具の管理は任せられねぇ」
八雲「昼休みの間くらいは見ててやる」
紬「いいんですか!?」
八雲「壊した時に困るのは俺だからな」
紬「やっぱりこれも取り扱い要注意じゃん!」
八雲「当たり前だ」
紬「ひぃ」
澪、くすっと笑う
八雲「ほら」
「やるなら続けろ」
澪・紬
「はい!」
再び神具へ向き合う
失敗
失敗
失敗
紬「全然だめー!」
八雲「力みすぎだ」
紬「え?」
八雲「神気は押し込むもんじゃねぇ」
「流すんだ」
紬「流す……?」
八雲「川みたいにな」
紬「分からん!」
八雲「だろうな」
澪、その横で神具に手をかざす
澪(流す……)
しかし何も起こらない
澪(ダメだ)
八雲「神代」
澪「はい」
八雲「お前は逆だ」
澪「え?」
八雲「お前さ」
「どうせ自分なんかって思ってるだろ」
澪「……!」
八雲「神力にもそれが出てる」
澪、目を見開く。
八雲「お前、自分の神力を信じてねぇんだ」
澪「……」
八雲「だから無意識に抑え込む」
「出てこようとしてる神力まで引っ込めちまう」
澪、言葉を失う
八雲「神力ってのはな」
「思ってる以上に持ち主の影響を受ける」
八雲「お前が『どうせ無理だ』って思えば」
「神力もそう思うんだよ」
澪「……」
再び神具へ手を伸ばす
神力を流す
沈黙
何も起きない
澪、俯く
八雲「まあ一日で出来るなら誰も苦労しねぇ」
紬「それもそうだ!」
澪、苦笑する
にぎやかな室内
その様子を――
少し離れた校舎の窓から、麗華が見ている
麗華「……」
丙組
落ちこぼれ
本来なら自分とは住む世界が違う人間たち
その中心で、澪が笑っている
麗華(どうして……)
ぎゅっと拳を握る
麗華(どうしてあなたが)
視線が神具へ向く
麗華(神具……?)
麗華の目が細くなる
麗華(また)
(あなたなのね)
握りしめた拳に力が入る
麗華「……気に入らないわ」


