影神様は私をとらえて逃がさない ~約束の花嫁~【マンガシナリオ】

〇神統学舎・講堂
入学式
大勢の新入生たち
神子候補たちが一堂に会している
麗華もその中に立っている
教師「これより本年度の入学式を執り行う」
名前が順番に呼ばれていく
教師神「神代麗華」
麗華「はい」
堂々と返事をする
周囲の視線
ひそひそ
生徒A「神代家の令嬢だ」
生徒B「代々神子を輩出してる家だろ?」
麗華、満足そうに微笑む
麗華(私は選ばれる)
麗華(神子になり)
麗華(いずれは愛し子に――)
教師「次」
一瞬、間が空く
教師「特別入学者」
教師「四柱・影神 久遠様推薦」
しん
会場が一瞬で静まり返る
生徒A「……推薦?」
生徒B「冗談だろ」
生徒C「四柱が人間を推薦するなんて聞いたことないぞ」
ざわっ
空気が一気に揺れる
教師「神代澪」
麗華「……は?」
目を見開く
麗華(どうして)
(どうしてあの女の名前が呼ばれるの――)
澪「……はい」
会場後方
澪がゆっくり立ち上がる
全員の視線が澪へ集まる
澪、居心地悪そうに肩をすくめる
麗華(なんで、ここにいるの)
教師「以上で新入生紹介を終える」
ざわめきは収まらない
生徒A「あの子、一体何者なんだ……?」
生徒B「四柱推薦って、まじなのかよ」
澪「……」
視線が痛い
麗華(ありえない)
(神子候補にすら選ばれなかった女よ)
(どうして四柱が――)
ぎり、と拳を握る

〇神統学舎・神気測定場
巨大な神晶石
透き通るような巨大な水晶が中央に鎮座している
新入生たちが息を呑む
その横に立つのは、天城(あまぎ)
長い銀髪を後ろで一つ結びにしている
冷たい眼差し
いかにも厳格そうな男
神統学舎教師
天城「これより神気測定を行う」
澪『神統学舎では、神力の量によって組が分けられる』
甲組・優秀な神子候補たち
乙組・一般的な神子候補たち
丙組・神力が乏しい者たち
各組の腕章と共にイメージカット
天城「順番に神晶石へ触れなさい」
生徒たちが次々と測定していく
神晶石が淡く光る
天城「乙組」
天城「乙組」
天城「丙組」
結果が発表されていく
丙組の腕章をつけられた生徒は、がっくりと肩を落として戻っていく
天城「神代麗華」
ざわっ
麗華が前へ出る
周囲「来た」
「神代家だ」
「甲組候補だろ」
麗華、堂々と神晶石へ手を置く
次の瞬間
眩い光
会場が白く染まる
周囲
「すごい……!」
「さすが……!」
天城、わずかに目を細める
天城「甲組」
腕章が手渡される
天城「神代家の名に恥じぬ結果だ」
麗華「ありがとうございます」
麗華、満足そうに微笑む
腕章を装着し、堂々と戻っていく
麗華(当然よ)
(私は選ばれる)
視線の先
澪が立っている
麗華(あの女とは違う)
天城「次」
天城「神代澪」
しん
会場が静まる
周囲
「来た……」
「久遠様推薦」
「どれだけの神力なんだ?」
全員の視線が集まる
麗華も息を呑む
麗華(四柱推薦)(何かあるはず……)
澪、おずおずと前へ出る
神晶石の前で立ち止まる
天城「触れなさい」
澪「……はい」
恐る恐る手を伸ばす
神晶石に触れる
しん
沈黙
何も起こらない
澪「……?」
周囲「え?」
「光らない?」
天城、眉をひそめる
神晶石を見つめる
天城「別の神晶石を」
教師「はい」
予備の神晶石が運ばれてくる
周囲
「やっぱり故障だったんだ」
「そうだよな」
澪、不安そうな顔
天城「もう一度」
澪「……はい」
再び手を触れる
しん
沈黙
何も起こらない
周囲
「……え?」
「こっちも?」
天城「……測定不能」
ざわっ
会場が揺れる
澪「……」
天城「測定結果は基準値未満」
「現時点で神子候補としての適性は認められない」
周囲
「え?」
「嘘だろ?」
「久遠様推薦なのに?」
麗華「……っ」
安堵する
麗華(なんだ)
(やっぱり)
(何も持っていないじゃない)
天城「丙組」
丙組の腕章が差し出される
澪「……はい」
腕章を受け取る
麗華(私は甲組)
(あの女は丙組)
(私の方が上よ)

〇神統学舎・廊下
神気測定終了後
生徒たちがそれぞれの教室へ向かっている
ひそひそ
ひそひそ
澪の周囲だけ、不自然に空間が空いている
生徒A「久遠様推薦だったのに……」
生徒B「まさか丙組とはな」
生徒C「推薦って、何かの間違いだったんじゃないか?」
澪「……」
俯いたまま歩く
澪(やっぱり)
(私なんかが選ばれるはずなかった)
(久遠様は、どうして私なんかを――)
その時
麗華「まさか本当に丙組になるなんて」
澪、足を止める
麗華が歩み寄ってくる
甲組の腕章を見せつけるように
麗華「少しは期待したのよ?」
麗華「影神様推薦なんて聞いた時は」
澪「……」
麗華「でも安心したわ」
くすり
麗華「やっぱりあなたは何も持っていなかったのね」
澪、唇を噛む
麗華
「神力も少ない」
「神子の適性もない」
「そんなあなたが」
少し顔を寄せる
麗華「どうやって久遠様を騙したの?」
澪「騙してなんて……!」
思わず声が漏れる
麗華「あら」
澪「……っ」
麗華の眼差しに、神代家での日々を思い出して怯む澪
麗華「じゃあ何?」
澪「……」
答えられない
麗華「答えられないのね」
麗華、満足そうに笑う
麗華「身の程を知りなさい」
そう言って立ち去る
澪、一人取り残される
ぎゅっと丙組の腕章を握る

〇神統学舎・管理室
教師たちが片付けをしている
机の上には回収された神晶石
教師A「しかし妙でしたね」
教師B「測定不能など聞いたことがありません」
しん
静寂
その時
ぴし
教師A「……?」
神晶石の表面
小さな亀裂
ぴし
ぴしぴし
教師B「なっ……!?」
教師A「ま、待て――」
パキィン!!
神晶石が砕け散る
教師B「そんな馬鹿な……!」
教師A「天城先生を呼べ!!」