〇久遠の領域・寝室
久遠に手を取られたままの澪
澪「花嫁……?」
呆然と久遠を見つめる。
澪「ここは……どこですか……?」
久遠「僕の神域」
澪、目を見開く
澪『神域』
澪『それは限られた高位神のみが持つ領域』
澪『神力によって創られた、神だけの世界』
澪(まさか……)
ぽん
久遠が手を叩く
空気が変わる
久遠「そうだ」
「お腹は空いてない?」
澪「……え?」
〇食事処・静かな座敷
灯りだけが揺れている
窓はあるのに、外の景色は見えない
ただ、暗い影が広がっているだけ
音がない
緊張した様子で正座している澪
その隣に座る久遠
影が膳を運び、目の前に並べられる
豪華な食事
別の影が畳から伸びて、澪に箸が差し出される
澪、息を呑む。
戸惑いながら受け取る
指先が触れると、冷たい
澪(人じゃない)
箸を持つ手が止まる
澪(……でも)
澪(不思議と、怖くない)
久遠はにこにこと見守っている
澪「……あの」
久遠「ん?」
澪「どうして、私はここに……?」
澪(だって、私は――)
身を投げたことを思い出す澪
久遠「言っただろ?」
「捨てられたものを、もらった」
ごくり、と息を呑む澪
澪「……あなたは……」
「神様、なのですか?」
久遠「――僕の名は久遠」
澪「……!」
澪(”久遠”様といえば、四柱の……!)
澪『この世界には、神がいる』
四柱のイメージ。
陽神・日輪
宵神・逢魔
禍神・喝
影神・久遠
澪『その中でも最上位の存在』
澪『世界の均衡を保つ――それが四柱』
澪(どうしてそんなお方が、私を……?)
久遠は微笑んだまま
久遠「まずは、食事をしよう。詳しい話はそれからね」
あまりに強大な存在を前に、箸を持つ手が震える澪
箸を取り落としそうになる
影が、音もなくそれを受け止める
久遠「ごめんね、最初からこうすればよかった」
久遠、影から箸を受け取る
澪の逃げ場を塞ぐように、距離を詰める
久遠「口を開けて」
澪、息を呑む
久遠のこの世ならざる美しい顔が、すぐそばにある
抗えない澪、ゆっくり口を開く
ぱくり
久遠、わずかに目を細める
久遠「――美味しい?」
澪『どうしてか――もう戻れない。そんな予感がした』
〇翌朝・寝室
ベッドでぱちりと目覚める澪
澪「ここは……」
澪(夢じゃ、なかった)
ベッドから部屋を見渡す
広々として豪華な、和洋折衷の部屋
(回想)久遠「ここが君の部屋だよ」と微笑んでいた久遠を思い出す。
ベッドから降りると、音もなく影たちが現れて綺麗な着物が差し出される。
澪「これを着るの……?」
迷った末に帯を外す澪
影が着付けを手伝う
影が音もなく動き、帯を結ぶ
触れているのに、温度がない
着替えたところで、襖の外から声がかかる
久遠「澪」
襖が音もなく開く
開くと、久遠の姿
久遠「よく似合うよ」
澪の着物姿ににっこり
久遠「さあ、朝餉に行こうか」
〇食事処
隣同士、距離が近い
久遠「澪、ほら」
久遠が澪にあーんと食べさせている
澪「あ、あの……っ」
澪「自分で食べられますので……」
久遠「いいの」「僕がそうしたいんだから」
久遠は澪に食べさせるのをやめない
澪は困惑した顔
久遠「ねえ、澪は何が好き?」
「澪が望むものなら、何でもあげるよ」
蕩けるように甘く囁く久遠
澪(おかしい)
澪(神の中には、人間に好意的な方もいる)
澪(けれど)
久遠「澪」
名前を呼ぶ声
澪(まるで)
澪(ずっと前から私を知っているみたいだ)
澪(私たちは初対面のはずなのに)
久遠「澪、これはどう? イチゴというんだ」
「人の世では、なかなか手に入らないらしいね」
イチゴを手でつまみ、澪の口元に運ぼうとする久遠
澪「……私のようなものに、ここまでしていただきありがとうございます」
澪「しかし……これ以上、久遠様のご厄介になる訳にはいきません」
澪(私なんかのために、尊きお方の手を煩わせてはいけない)
ぴた、と固まる久遠
澪「食事が終わりましたら、お暇させていただきます」
久遠「……許さないよ」
久遠から表情が消える
久遠「君はずっと、辛い目に合ってきたんだろう?」
久遠「ここには君を傷つけるものは何もない」
する……と久遠の手が頬に伸びる
久遠「だからずっと、いればいい」
優しく頬を包み、囁く
久遠「――君はもう、ここから出られない」
ひゅっと喉を鳴らす澪
本能的な恐怖に襲われ、後ろに退く
久遠の目が底光りするように澪をとらえる
澪「い、いや……っ」
震える足で立ち上がり、走り出す
はあ、はあ、と息を切らしながら広い屋敷をあてもなく走る
廊下がやけに長く感じる
どこまで行っても出口が見えない
出口の扉らしきものを見つける
手をかけて開けようとする
開かない
力を込める
びくともしない。
澪「……なんで……っ」
床から伸びてくる影が、足元に絡む
澪「……!」
久遠、背後からゆっくり近づく
久遠「ここでは、僕の意思がすべてだ」
久遠「外に出る必要はない」
美しいぞっとする笑みで、久遠が囁く
久遠「君は僕のものだ」
久遠に手を取られたままの澪
澪「花嫁……?」
呆然と久遠を見つめる。
澪「ここは……どこですか……?」
久遠「僕の神域」
澪、目を見開く
澪『神域』
澪『それは限られた高位神のみが持つ領域』
澪『神力によって創られた、神だけの世界』
澪(まさか……)
ぽん
久遠が手を叩く
空気が変わる
久遠「そうだ」
「お腹は空いてない?」
澪「……え?」
〇食事処・静かな座敷
灯りだけが揺れている
窓はあるのに、外の景色は見えない
ただ、暗い影が広がっているだけ
音がない
緊張した様子で正座している澪
その隣に座る久遠
影が膳を運び、目の前に並べられる
豪華な食事
別の影が畳から伸びて、澪に箸が差し出される
澪、息を呑む。
戸惑いながら受け取る
指先が触れると、冷たい
澪(人じゃない)
箸を持つ手が止まる
澪(……でも)
澪(不思議と、怖くない)
久遠はにこにこと見守っている
澪「……あの」
久遠「ん?」
澪「どうして、私はここに……?」
澪(だって、私は――)
身を投げたことを思い出す澪
久遠「言っただろ?」
「捨てられたものを、もらった」
ごくり、と息を呑む澪
澪「……あなたは……」
「神様、なのですか?」
久遠「――僕の名は久遠」
澪「……!」
澪(”久遠”様といえば、四柱の……!)
澪『この世界には、神がいる』
四柱のイメージ。
陽神・日輪
宵神・逢魔
禍神・喝
影神・久遠
澪『その中でも最上位の存在』
澪『世界の均衡を保つ――それが四柱』
澪(どうしてそんなお方が、私を……?)
久遠は微笑んだまま
久遠「まずは、食事をしよう。詳しい話はそれからね」
あまりに強大な存在を前に、箸を持つ手が震える澪
箸を取り落としそうになる
影が、音もなくそれを受け止める
久遠「ごめんね、最初からこうすればよかった」
久遠、影から箸を受け取る
澪の逃げ場を塞ぐように、距離を詰める
久遠「口を開けて」
澪、息を呑む
久遠のこの世ならざる美しい顔が、すぐそばにある
抗えない澪、ゆっくり口を開く
ぱくり
久遠、わずかに目を細める
久遠「――美味しい?」
澪『どうしてか――もう戻れない。そんな予感がした』
〇翌朝・寝室
ベッドでぱちりと目覚める澪
澪「ここは……」
澪(夢じゃ、なかった)
ベッドから部屋を見渡す
広々として豪華な、和洋折衷の部屋
(回想)久遠「ここが君の部屋だよ」と微笑んでいた久遠を思い出す。
ベッドから降りると、音もなく影たちが現れて綺麗な着物が差し出される。
澪「これを着るの……?」
迷った末に帯を外す澪
影が着付けを手伝う
影が音もなく動き、帯を結ぶ
触れているのに、温度がない
着替えたところで、襖の外から声がかかる
久遠「澪」
襖が音もなく開く
開くと、久遠の姿
久遠「よく似合うよ」
澪の着物姿ににっこり
久遠「さあ、朝餉に行こうか」
〇食事処
隣同士、距離が近い
久遠「澪、ほら」
久遠が澪にあーんと食べさせている
澪「あ、あの……っ」
澪「自分で食べられますので……」
久遠「いいの」「僕がそうしたいんだから」
久遠は澪に食べさせるのをやめない
澪は困惑した顔
久遠「ねえ、澪は何が好き?」
「澪が望むものなら、何でもあげるよ」
蕩けるように甘く囁く久遠
澪(おかしい)
澪(神の中には、人間に好意的な方もいる)
澪(けれど)
久遠「澪」
名前を呼ぶ声
澪(まるで)
澪(ずっと前から私を知っているみたいだ)
澪(私たちは初対面のはずなのに)
久遠「澪、これはどう? イチゴというんだ」
「人の世では、なかなか手に入らないらしいね」
イチゴを手でつまみ、澪の口元に運ぼうとする久遠
澪「……私のようなものに、ここまでしていただきありがとうございます」
澪「しかし……これ以上、久遠様のご厄介になる訳にはいきません」
澪(私なんかのために、尊きお方の手を煩わせてはいけない)
ぴた、と固まる久遠
澪「食事が終わりましたら、お暇させていただきます」
久遠「……許さないよ」
久遠から表情が消える
久遠「君はずっと、辛い目に合ってきたんだろう?」
久遠「ここには君を傷つけるものは何もない」
する……と久遠の手が頬に伸びる
久遠「だからずっと、いればいい」
優しく頬を包み、囁く
久遠「――君はもう、ここから出られない」
ひゅっと喉を鳴らす澪
本能的な恐怖に襲われ、後ろに退く
久遠の目が底光りするように澪をとらえる
澪「い、いや……っ」
震える足で立ち上がり、走り出す
はあ、はあ、と息を切らしながら広い屋敷をあてもなく走る
廊下がやけに長く感じる
どこまで行っても出口が見えない
出口の扉らしきものを見つける
手をかけて開けようとする
開かない
力を込める
びくともしない。
澪「……なんで……っ」
床から伸びてくる影が、足元に絡む
澪「……!」
久遠、背後からゆっくり近づく
久遠「ここでは、僕の意思がすべてだ」
久遠「外に出る必要はない」
美しいぞっとする笑みで、久遠が囁く
久遠「君は僕のものだ」


