〇神域・朝
珍しく身支度を整える久遠
澪「お出かけですか?」
久遠「会合」
澪「会合……」
久遠「出ないと爺共がうるさいからさ」
澪「分かりました」
久遠、くるっと振り返る
久遠「本当は行きたくない」
澪「え?」
久遠「澪を置いていくから」
澪「……」
久遠「連れていけないし」
不満そう
澪「だ、大丈夫です」
久遠「大丈夫じゃない」
真顔
澪「……」
久遠「なるべく早く帰る」
影が揺れる
消える直前
久遠「……ここで」
「待っていてくれる?」
澪「……はい」
「お待ちしています」
久遠、微かに微笑む
影が消える
しん
静かな神域
〇神域・昼
ソファで本を読んでいた澪
いつの間にか眠っている
――夢
【回想】
柔らかな光
影たちが楽しそうに揺れている
幼い少女の笑い声
幼い澪「見て!」
小さな手
影たちが嬉しそうに集まる
場面が変わる
幼い澪「ありがとう!」
影たちが揺れる
優しい空気
誰かの手
頭を撫でる温もり
???「澪」
振り返る
光で顔は見えない
再度、場面が変わる
夕暮れ
静かな神域
幼い澪、泣いている
幼い澪「もう……会えないの?」
???「もし」
優しい声
???「その世界を捨てたいと願うなら」
???「迎えに行く」
【回想終了】
澪「っ……!」
目を覚ます
呼吸が乱れている
頭を押さえる
澪「いた……」
ずきり。頭痛
胸の奥がざわつく
澪(今の夢……)
懐かしかった
でも思い出せない
澪(何か大切なことを、忘れてるような気がする)
澪(……あれは、誰……?)
〇神域・夕方
影が揺れる
久遠が現れる
澪、ぱたぱたと駆け寄って出迎え
澪「おかえりなさい」
自然に顔が綻ぶ
久遠、僅かに目を見開く
澪「あ……」
反射的な言動だった
澪(そういえば私、こうして久遠様を出迎えるの初めてだ)
久遠「……ただいま」
久遠がほのかに微笑む
澪「……!」
顔が熱くなる
久遠「どうしたの」
澪「な、なんでもありません」
久遠「そう」
澪(この間から、私変だ……)
胸がどくんと鳴る
久遠「澪は、変わらないね」
澪「え?」
久遠、少し目を細める。どこか懐かしいものを見るような目
澪(あ、また……)
久遠「……いや」
視線を逸らす。
澪(久遠様は時々)
澪(私じゃない誰かを見ているみたい)
〇神域・夜(澪自室)
静かな神域
机に向かって勉強している
しかし同じページを何度も読んでいた
澪(”変わらない”……)
昼間の夢
久遠の言葉が何度も頭を巡る
澪(何が……?)
ぱたり
本を閉じる
澪(大切なことだった気がするのに)
(思い出せない……)
ぼんやりと、夢の中の景色が浮かぶ。
澪(どうしてあんなに懐かしかったんだろう)
胸の奥がざわつく
澪「迎えに行く……」
ぽつり
無意識に零れる
その言葉に、ずきん
なぜだか胸が痛んだ
澪「……」
窓の外を見る
夜空
星が瞬いている
澪(久遠様)
自然と名前を思い浮かべる
静かな銀灰色の瞳
時に怖いくらい大事にしてくれる優しさ
神域で過ごした日々
澪の口元が少しだけ緩む
澪(明日も頑張ろう)
ぽつりと呟く
胸の奥の違和感を抱えたまま、夜は静かに更けていく
〇女子寮・麗華個室
夜
静かな部屋
麗華、一人
机の前に立ち尽くしている
その表情は険しい
脳裏に浮かぶ。
『僕は澪を選んだ』
『――君じゃない』
ぎりっ
握った拳が震える
麗華「どうして……」
机の引き出しを開く
奥にしまわれていた小さな包み
麗華「……」
麗華父『これは神代家の術式だ』
『未熟者なうちは軽々しく使うな』
麗華、しばらく見つめる
【回想】
神代家
俯く澪
叱責されても、召使のように扱われても、何も言い返さない
『……はい』
『申し訳ありません』
麗華(あの女は)
(一生そうやって生きていくんだと思っていた)
(誰にも選ばれず)
(誰にも愛されず)
(ただ俯いたまま)
(私より上になるなんて)
(あり得ない)
【回想終了】
麗華「私の方が相応しいのに」
包みを開く
中には一枚の符
麗華、それを握りしめる
麗華「もう一度」
「思い知らせてあげる」
麗華「本当に選ばれるべきなのが」
「誰なのか」
〇翌日・神統学舎
実習場(外)
甲組・乙組・丙組合同
八雲「今日の試験は神具起動の応用」
「簡易結界の維持だ」
八雲「今までやってきた基礎の延長だ」
「慌てるな」
生徒たち「はい!」
試験開始
生徒たちが順番に神具へ神気を流していく
澪の番
澪(大丈夫)
(ちゃんと練習した)
神気を流す
ふわっ
神具が光る
半透明の結界が形成される
結界が形成される
紬「おっ」
朔「前より安定してるな」
澪、ほっと息を吐く
八雲「維持しろ」
澪「……!」
結界が揺らぐ
澪、神気を流し続ける
その時
少し離れた場所
麗華、袖の中で符を握る
麗華(あなたは私には敵わない)
ぱきっ
符にひびが入る
しん
誰もいない校舎裏
風が吹く
喝「へえ」
いつの間にか男が立っている
――渇
黒い瞳が細められる
渇「面白いことをする」
視線の先
実習場
麗華
そして澪
渇「嫉妬」
「いいな」
「実に人間らしい」
くつり
喉の奥で笑う。
渇「少しだけ」
「手伝ってやろう」
指先から黒い神気が滲む
どこかへ吸い込まれるように消える
渇「さて」
「どんな顔を見せてくれる?」
〇実習場
ぴし
澪「……?」
結界に小さな亀裂
八雲「?」
天城が眉をひそめる
ぴしっ。
亀裂が広がる。
神具が不安定に明滅する
澪「え……?」
次の瞬間
どん!!!
結界が暴走。
生徒たち「!!」
紬「澪!」
八雲「全員下がれ!」
麗華「……え?」
思わず目を見開く
膨れ上がる神力
神具が軋むような音を立てる
麗華(まさか……)
袖の中、握った符を見つめる
麗華(ここまで……?)
ぴしっ
結界に亀裂が広がる。
麗華(そんなはず……)
暴走した神力が渦を巻く
その一部が鋭く収束する
まるで刃
しゅっ――
山城「え?」
甲組生徒一人、反応が遅れる。
次の瞬間
頬を赤い線が走る
山城「っ!?」
たらり
血が伝う
女子生徒「きゃああっ!」
騒然
山城は腰を抜かす
山城「な……」
「なんだよ今……!」
神力の刃が再び山城へ向かう
天城「っ!」
ばん!!
天城が神力で弾き飛ばす
八雲「全員伏せろ!」
教師たちが暴走を抑え込む
どん!!
轟音
やがて静寂
煙が晴れていく
床にはひび割れた神具
生徒たち
「壊れた……」
「嘘だろ……」
澪「……」
呆然
少し後
天城「状況を確認する」
教師神たちが調査を始める
八雲が神具を拾い上げる
教師神「神具そのものに異常は見当たりません」
教師神「暴走の起点は第三結界点」
教師神「記録上、最後に神気を流したのは神代澪です」
ざわっ
紬「そんなわけ――」
朔「待て」
八雲「まだ何も決まってない。軽々しく口にするな」
生徒たちも押し黙る
澪「私は……」
麗華「そんな……」
悲しそうな声
全員が振り向く
麗華の脳裏
山城の頬を流れる血
暴走する結界
握った指先が少し震える
ほんの一瞬
罪悪感にも似た感情
しかし、澪の顔を見て
『僕は澪を選んだ』
『――君じゃない』
久遠の台詞が脳裏に響く
ぎりっ
麗華「でも……」
わざと少し迷うように
麗華「被害を受けた山城君は」
「以前、澪さんを注意したことがあったんです」
しん
山城も顔を上げる
甲組生徒「……そういえば」
別の生徒「前に揉めてたよな」
ざわざわ
紬「ちょっと待って!」
朔「飛躍しすぎだろ」
麗華「ごめんなさい」
「私の考えすぎかもしれません」
伏し目がちに
麗華「ただ……」
言葉を濁す
澪「……」
天城「神代澪」
突き刺さる周囲の視線
昔なら俯いていた
けれど――
澪、顔を上げる
天城「詳しい話を聞かせてもらう」
澪「……はい」
珍しく身支度を整える久遠
澪「お出かけですか?」
久遠「会合」
澪「会合……」
久遠「出ないと爺共がうるさいからさ」
澪「分かりました」
久遠、くるっと振り返る
久遠「本当は行きたくない」
澪「え?」
久遠「澪を置いていくから」
澪「……」
久遠「連れていけないし」
不満そう
澪「だ、大丈夫です」
久遠「大丈夫じゃない」
真顔
澪「……」
久遠「なるべく早く帰る」
影が揺れる
消える直前
久遠「……ここで」
「待っていてくれる?」
澪「……はい」
「お待ちしています」
久遠、微かに微笑む
影が消える
しん
静かな神域
〇神域・昼
ソファで本を読んでいた澪
いつの間にか眠っている
――夢
【回想】
柔らかな光
影たちが楽しそうに揺れている
幼い少女の笑い声
幼い澪「見て!」
小さな手
影たちが嬉しそうに集まる
場面が変わる
幼い澪「ありがとう!」
影たちが揺れる
優しい空気
誰かの手
頭を撫でる温もり
???「澪」
振り返る
光で顔は見えない
再度、場面が変わる
夕暮れ
静かな神域
幼い澪、泣いている
幼い澪「もう……会えないの?」
???「もし」
優しい声
???「その世界を捨てたいと願うなら」
???「迎えに行く」
【回想終了】
澪「っ……!」
目を覚ます
呼吸が乱れている
頭を押さえる
澪「いた……」
ずきり。頭痛
胸の奥がざわつく
澪(今の夢……)
懐かしかった
でも思い出せない
澪(何か大切なことを、忘れてるような気がする)
澪(……あれは、誰……?)
〇神域・夕方
影が揺れる
久遠が現れる
澪、ぱたぱたと駆け寄って出迎え
澪「おかえりなさい」
自然に顔が綻ぶ
久遠、僅かに目を見開く
澪「あ……」
反射的な言動だった
澪(そういえば私、こうして久遠様を出迎えるの初めてだ)
久遠「……ただいま」
久遠がほのかに微笑む
澪「……!」
顔が熱くなる
久遠「どうしたの」
澪「な、なんでもありません」
久遠「そう」
澪(この間から、私変だ……)
胸がどくんと鳴る
久遠「澪は、変わらないね」
澪「え?」
久遠、少し目を細める。どこか懐かしいものを見るような目
澪(あ、また……)
久遠「……いや」
視線を逸らす。
澪(久遠様は時々)
澪(私じゃない誰かを見ているみたい)
〇神域・夜(澪自室)
静かな神域
机に向かって勉強している
しかし同じページを何度も読んでいた
澪(”変わらない”……)
昼間の夢
久遠の言葉が何度も頭を巡る
澪(何が……?)
ぱたり
本を閉じる
澪(大切なことだった気がするのに)
(思い出せない……)
ぼんやりと、夢の中の景色が浮かぶ。
澪(どうしてあんなに懐かしかったんだろう)
胸の奥がざわつく
澪「迎えに行く……」
ぽつり
無意識に零れる
その言葉に、ずきん
なぜだか胸が痛んだ
澪「……」
窓の外を見る
夜空
星が瞬いている
澪(久遠様)
自然と名前を思い浮かべる
静かな銀灰色の瞳
時に怖いくらい大事にしてくれる優しさ
神域で過ごした日々
澪の口元が少しだけ緩む
澪(明日も頑張ろう)
ぽつりと呟く
胸の奥の違和感を抱えたまま、夜は静かに更けていく
〇女子寮・麗華個室
夜
静かな部屋
麗華、一人
机の前に立ち尽くしている
その表情は険しい
脳裏に浮かぶ。
『僕は澪を選んだ』
『――君じゃない』
ぎりっ
握った拳が震える
麗華「どうして……」
机の引き出しを開く
奥にしまわれていた小さな包み
麗華「……」
麗華父『これは神代家の術式だ』
『未熟者なうちは軽々しく使うな』
麗華、しばらく見つめる
【回想】
神代家
俯く澪
叱責されても、召使のように扱われても、何も言い返さない
『……はい』
『申し訳ありません』
麗華(あの女は)
(一生そうやって生きていくんだと思っていた)
(誰にも選ばれず)
(誰にも愛されず)
(ただ俯いたまま)
(私より上になるなんて)
(あり得ない)
【回想終了】
麗華「私の方が相応しいのに」
包みを開く
中には一枚の符
麗華、それを握りしめる
麗華「もう一度」
「思い知らせてあげる」
麗華「本当に選ばれるべきなのが」
「誰なのか」
〇翌日・神統学舎
実習場(外)
甲組・乙組・丙組合同
八雲「今日の試験は神具起動の応用」
「簡易結界の維持だ」
八雲「今までやってきた基礎の延長だ」
「慌てるな」
生徒たち「はい!」
試験開始
生徒たちが順番に神具へ神気を流していく
澪の番
澪(大丈夫)
(ちゃんと練習した)
神気を流す
ふわっ
神具が光る
半透明の結界が形成される
結界が形成される
紬「おっ」
朔「前より安定してるな」
澪、ほっと息を吐く
八雲「維持しろ」
澪「……!」
結界が揺らぐ
澪、神気を流し続ける
その時
少し離れた場所
麗華、袖の中で符を握る
麗華(あなたは私には敵わない)
ぱきっ
符にひびが入る
しん
誰もいない校舎裏
風が吹く
喝「へえ」
いつの間にか男が立っている
――渇
黒い瞳が細められる
渇「面白いことをする」
視線の先
実習場
麗華
そして澪
渇「嫉妬」
「いいな」
「実に人間らしい」
くつり
喉の奥で笑う。
渇「少しだけ」
「手伝ってやろう」
指先から黒い神気が滲む
どこかへ吸い込まれるように消える
渇「さて」
「どんな顔を見せてくれる?」
〇実習場
ぴし
澪「……?」
結界に小さな亀裂
八雲「?」
天城が眉をひそめる
ぴしっ。
亀裂が広がる。
神具が不安定に明滅する
澪「え……?」
次の瞬間
どん!!!
結界が暴走。
生徒たち「!!」
紬「澪!」
八雲「全員下がれ!」
麗華「……え?」
思わず目を見開く
膨れ上がる神力
神具が軋むような音を立てる
麗華(まさか……)
袖の中、握った符を見つめる
麗華(ここまで……?)
ぴしっ
結界に亀裂が広がる。
麗華(そんなはず……)
暴走した神力が渦を巻く
その一部が鋭く収束する
まるで刃
しゅっ――
山城「え?」
甲組生徒一人、反応が遅れる。
次の瞬間
頬を赤い線が走る
山城「っ!?」
たらり
血が伝う
女子生徒「きゃああっ!」
騒然
山城は腰を抜かす
山城「な……」
「なんだよ今……!」
神力の刃が再び山城へ向かう
天城「っ!」
ばん!!
天城が神力で弾き飛ばす
八雲「全員伏せろ!」
教師たちが暴走を抑え込む
どん!!
轟音
やがて静寂
煙が晴れていく
床にはひび割れた神具
生徒たち
「壊れた……」
「嘘だろ……」
澪「……」
呆然
少し後
天城「状況を確認する」
教師神たちが調査を始める
八雲が神具を拾い上げる
教師神「神具そのものに異常は見当たりません」
教師神「暴走の起点は第三結界点」
教師神「記録上、最後に神気を流したのは神代澪です」
ざわっ
紬「そんなわけ――」
朔「待て」
八雲「まだ何も決まってない。軽々しく口にするな」
生徒たちも押し黙る
澪「私は……」
麗華「そんな……」
悲しそうな声
全員が振り向く
麗華の脳裏
山城の頬を流れる血
暴走する結界
握った指先が少し震える
ほんの一瞬
罪悪感にも似た感情
しかし、澪の顔を見て
『僕は澪を選んだ』
『――君じゃない』
久遠の台詞が脳裏に響く
ぎりっ
麗華「でも……」
わざと少し迷うように
麗華「被害を受けた山城君は」
「以前、澪さんを注意したことがあったんです」
しん
山城も顔を上げる
甲組生徒「……そういえば」
別の生徒「前に揉めてたよな」
ざわざわ
紬「ちょっと待って!」
朔「飛躍しすぎだろ」
麗華「ごめんなさい」
「私の考えすぎかもしれません」
伏し目がちに
麗華「ただ……」
言葉を濁す
澪「……」
天城「神代澪」
突き刺さる周囲の視線
昔なら俯いていた
けれど――
澪、顔を上げる
天城「詳しい話を聞かせてもらう」
澪「……はい」


