〇講堂
しん
静まり返る講堂
澪「わ、私ですか?」
日輪「うん」
澪「は、はい」
立ち上がる
日輪「そのままでいいよ」
日輪、かつかつと歩いて澪のそばへ
生徒たち「なんで丙組?」
「神代澪って……」
「あの推薦入学の……」
ざわざわひそひそ
日輪が澪の前に立つ
日輪「初めまして」
澪「は、初めまして」
日輪「うんうん」
にこにこ
まるで珍しい動物を見るような目
澪(見られてる……)
日輪「なるほど」
日輪「確かに興味深い」
澪「え?」
日輪「さて」
日輪、生徒たちへ向き直る
日輪「みんなは何のためにこの学舎へ来たのかな」
男子生徒「神子になるためです」
日輪「うん」
日輪「その通り」
講堂が静まる
日輪「神子は神々と契約し」
「人々を守り」
「神と人を繋ぐ存在だ」
生徒たちが頷く
日輪「ここにいる全員が神子候補」
「卒業し、試験を突破した者だけが神子になれる」
紬(小声)「うっ……試験……」
朔(小声)「そこ反応するとこかよ」
日輪「でもね」
日輪「世の中には神子より有名な存在がいる」
ざわっ
日輪「愛し子だ」
生徒たちが顔を見合わせる。
女子生徒「……!」
男子生徒「愛し子……」
日輪「では質問」
「神子と愛し子の違いは?」
麗華、迷わず手を挙げる
日輪「どうぞ」
麗華「神子は神と契約し、人々を守る存在」
「愛し子は神に選ばれた特別な存在です」
日輪「うん」
麗華「神との結びつきが強く」
「深い寵愛を受ける資格を持つ者」
日輪「なるほど」
頷く
日輪「教科書的には正解だ」
麗華、僅かに安堵する
日輪「でも、一番大事な部分が抜けている」
ざわっ
麗華「……」
日輪「神子は資格だ」
「努力で辿り着ける」
「才能も必要だろう」
「けれど愛し子は違う」
しん
講堂が静まり返る
日輪「愛し子は」
「神が選ぶだけでは成立しない」
生徒たち「?」
日輪「人もまた」
「神を選ばなければならない」
生徒たちが息を呑む。
麗華、目を見開く
日輪「どれほど優秀でも」
「どれほど神力が強くても」
「人が望まなければ愛し子にはなれない」
生徒たち「……」
日輪「逆も同じだ」
「人が望んでも」
「神が望まなければ成立しない」
日輪「愛し子とは」
「神と人が互いに選び合った存在なんだ」
澪「……」
澪(互いに選び合う……)
日輪「だから難しい」
「愛し子は試験で決まらない」
「成績でも決まらない」
「神気の量だけでも決まらない」
日輪「心だ」
麗華の拳がぎゅっと握られる
日輪「神が人を想い」
「人が神を想う」
「その両方が揃って初めて成立する」
日輪「だから本来」
「神は簡単に愛し子を選ばない」
「ましてや四柱ならなおさらだ」
講堂が静まり返る
日輪「愛し子は、人の理を外れることになる」
「そして数百年」
「数千年を神と共に生きることになるからね」
日輪の視線が澪へ向く
日輪「神代澪」
澪「は、はい」
講堂中の視線が澪へ集まる
日輪「もし」
「ある神から愛し子になってほしいと言われたら」
生徒たちの間にどよめきが広がる
生徒たち「!」
麗華「……!」
日輪「その時」
「君はどうする?」
澪「え……」
澪、答えられない
日輪「神に選ばれた」
「それだけで頷く?」
澪「……」
脳裏をよぎる
神域でのこと
「僕の花嫁」そう言った久遠
逃げられない、と恐怖したこと
でも、優しい瞳、声
練習を手伝ってくれたこと
澪「……分かりません」
日輪「そうだよね」
日輪、柔らかく笑う
日輪「簡単には決められない」
「それが普通だ」
澪「……」
日輪「だから愛し子は」
「神に選ばれるだけじゃ駄目なんだよ」
その時
ざわり
講堂の床を影が走る
全員「!?」
黒い影が集まり
人の形を取る
紬「あっ」
朔「は?」
麗華「……!」
影の中から現れたのは――久遠
しん……
講堂中が息を呑む
日輪「あ」
久遠「日輪」
日輪「授業中だけど?」
久遠「知ってる」
静かな声
久遠「――あまり僕の愛し子を困らせないでくれるかな」
しん
静まり返る講堂
澪「わ、私ですか?」
日輪「うん」
澪「は、はい」
立ち上がる
日輪「そのままでいいよ」
日輪、かつかつと歩いて澪のそばへ
生徒たち「なんで丙組?」
「神代澪って……」
「あの推薦入学の……」
ざわざわひそひそ
日輪が澪の前に立つ
日輪「初めまして」
澪「は、初めまして」
日輪「うんうん」
にこにこ
まるで珍しい動物を見るような目
澪(見られてる……)
日輪「なるほど」
日輪「確かに興味深い」
澪「え?」
日輪「さて」
日輪、生徒たちへ向き直る
日輪「みんなは何のためにこの学舎へ来たのかな」
男子生徒「神子になるためです」
日輪「うん」
日輪「その通り」
講堂が静まる
日輪「神子は神々と契約し」
「人々を守り」
「神と人を繋ぐ存在だ」
生徒たちが頷く
日輪「ここにいる全員が神子候補」
「卒業し、試験を突破した者だけが神子になれる」
紬(小声)「うっ……試験……」
朔(小声)「そこ反応するとこかよ」
日輪「でもね」
日輪「世の中には神子より有名な存在がいる」
ざわっ
日輪「愛し子だ」
生徒たちが顔を見合わせる。
女子生徒「……!」
男子生徒「愛し子……」
日輪「では質問」
「神子と愛し子の違いは?」
麗華、迷わず手を挙げる
日輪「どうぞ」
麗華「神子は神と契約し、人々を守る存在」
「愛し子は神に選ばれた特別な存在です」
日輪「うん」
麗華「神との結びつきが強く」
「深い寵愛を受ける資格を持つ者」
日輪「なるほど」
頷く
日輪「教科書的には正解だ」
麗華、僅かに安堵する
日輪「でも、一番大事な部分が抜けている」
ざわっ
麗華「……」
日輪「神子は資格だ」
「努力で辿り着ける」
「才能も必要だろう」
「けれど愛し子は違う」
しん
講堂が静まり返る
日輪「愛し子は」
「神が選ぶだけでは成立しない」
生徒たち「?」
日輪「人もまた」
「神を選ばなければならない」
生徒たちが息を呑む。
麗華、目を見開く
日輪「どれほど優秀でも」
「どれほど神力が強くても」
「人が望まなければ愛し子にはなれない」
生徒たち「……」
日輪「逆も同じだ」
「人が望んでも」
「神が望まなければ成立しない」
日輪「愛し子とは」
「神と人が互いに選び合った存在なんだ」
澪「……」
澪(互いに選び合う……)
日輪「だから難しい」
「愛し子は試験で決まらない」
「成績でも決まらない」
「神気の量だけでも決まらない」
日輪「心だ」
麗華の拳がぎゅっと握られる
日輪「神が人を想い」
「人が神を想う」
「その両方が揃って初めて成立する」
日輪「だから本来」
「神は簡単に愛し子を選ばない」
「ましてや四柱ならなおさらだ」
講堂が静まり返る
日輪「愛し子は、人の理を外れることになる」
「そして数百年」
「数千年を神と共に生きることになるからね」
日輪の視線が澪へ向く
日輪「神代澪」
澪「は、はい」
講堂中の視線が澪へ集まる
日輪「もし」
「ある神から愛し子になってほしいと言われたら」
生徒たちの間にどよめきが広がる
生徒たち「!」
麗華「……!」
日輪「その時」
「君はどうする?」
澪「え……」
澪、答えられない
日輪「神に選ばれた」
「それだけで頷く?」
澪「……」
脳裏をよぎる
神域でのこと
「僕の花嫁」そう言った久遠
逃げられない、と恐怖したこと
でも、優しい瞳、声
練習を手伝ってくれたこと
澪「……分かりません」
日輪「そうだよね」
日輪、柔らかく笑う
日輪「簡単には決められない」
「それが普通だ」
澪「……」
日輪「だから愛し子は」
「神に選ばれるだけじゃ駄目なんだよ」
その時
ざわり
講堂の床を影が走る
全員「!?」
黒い影が集まり
人の形を取る
紬「あっ」
朔「は?」
麗華「……!」
影の中から現れたのは――久遠
しん……
講堂中が息を呑む
日輪「あ」
久遠「日輪」
日輪「授業中だけど?」
久遠「知ってる」
静かな声
久遠「――あまり僕の愛し子を困らせないでくれるかな」


