〇神域・夜
澪、一人で神具と向き合う
ぴかっ
自主練の成果で、一瞬だけ光らせることができた
でもすぐに消える
澪「流しすぎず……イメージ……」
そこへ久遠
久遠「まだやってたの」
澪「久遠様」
澪、手を止める
澪「……今日も駄目でした」
澪「あれから全然、進展がなくて……」
久遠「手」
澪「え?」
久遠「かざして」
澪、言われるまま手をかざす
久遠、澪の後ろへ回る
澪「っ」
肩が跳ねる
久遠「力入れすぎ」
後ろからそっと手を添える
澪(ち、近い……)
どくん
心臓が鳴る
久遠「もっと自然に」
久遠「息をするみたいに」
神気が流れる
ふわっ
神具が柔らかく光る
今までより、ずっと長く
澪「……!」
久遠「そう」
澪「できた……」
久遠「うん」
澪「できました……!」
久遠、少しだけ微笑む
久遠「澪ならできるって信じてた」
とくん
澪の胸が高鳴る
澪(ここに来たばかりの時は)
(怖いだけだったのに)
神具を見る
柔らかく光る銀の鏡。
澪(今は、こんなにも――)
久遠の手は、まだ自分の手の上にある
澪「……どうして」
久遠「え?」
澪「どうしてここまでしてくださるんですか」
久遠、一瞬だけ黙る
久遠「澪が困っていると放っておけないんだ」
久遠「……昔からね」
澪「え……?」
神具の光が静かに揺れる
少し沈黙
久遠「最近」
澪「?」
久遠「楽しそうだね」
澪「あ……」
紬や朔たちの顔が浮かぶ
澪「はい」
澪「みんな良い人で」
澪「自主練も楽しくて」
久遠「うん」
静かに頷く
久遠「よかった」
本当に嬉しそうに笑う
久遠「澪が笑うようになって」
久遠「安心した」
澪「……久遠様」
少し間
久遠「でも」
澪「?」
久遠「帰ってくるよね」
澪「え?」
久遠「ここに」
神域を見渡す
久遠「友達ができても」
久遠「学舎が楽しくても」
久遠「澪が帰ってくる場所は」
久遠「ここだよね?」
どくり
胸が鳴る
澪「それは……もちろんです」
久遠「ならいい」
久遠、満足そうに微笑む
澪(なんだろう)(今の……)
(少しだけ、寂しそうだった)
ふわり
神具がもう一度光る
柔らかな光が二人を包む
久遠「ほら」
澪「え?」
久遠「今の方が綺麗だった」
神具の光が、静かに二人を照らしていた
〇神具実習室
昼休み
澪、神具の前
そっと神気を流す
ふわっ
神具が柔らかく光る
以前より長く、以前より安定して
澪「……!」
紬「おお!」
朔「また光った」
女子生徒「すごい……」
澪「ま、まだ少しだけだから」
澪、照れる
紬「でも最初は全然だったじゃん」
朔「確かに」
女子生徒「私も頑張ろうかな……」
澪「一緒に頑張ろう」
女子生徒、少し驚く
女子生徒「……うん」
別の女子生徒「神代さんって」
澪「?」
女子生徒「もっと話しにくい人だと思ってた」
澪「……そうかな」
女子生徒「だって」
女子生徒「影神様の推薦だし」
朔「ましてや神域に住んでるしな」
女子生徒「なんていうか……」
「近寄りがたい感じだった」
澪「……そう見えてたんだ」
女子生徒「うん」
少し申し訳なさそうに笑う
女子生徒「でも違った」
女子生徒「普通だった」
紬「ただの澪だった」
朔「ただの神代だったな」
澪「あ、ありがとう……?」
くすくす
小さな笑いが起こる
以前なら考えられなかった
誰かと笑い合う時間
澪も笑う
八雲、少し離れた場所からその様子を見る
八雲(馴染んできたな)
初めて会った頃
俯いて、誰とも目を合わせなかった少女
今は違う
自然と人が集まっている
八雲、ふと思い出したように言う
八雲「そういや」
八雲「お前ら明日は自主練中止な」
全員「え?」
紬「なんで!?」
八雲「特別授業があるんだよ」
朔「特別授業?」
八雲「陽神が来る」
しん
全員固まる
女子生徒「……は?」
男子生徒「陽神様?」
紬「えっ」
紬「日輪様!?」
八雲「そう」
ざわあああっ
女子生徒「本物!?」
紬「やばい!」
朔「なんでそんな大事なこと今言うんだよ」
八雲「今思い出した」
紬「絶対嘘!」
わいわい
澪「日輪様……」
澪(久遠様と同じ、四柱のひとり)
紬「澪、反応薄くない?」
澪「そ、そうかな?」
紬「そうだよ! だって、あの四柱だよ!?」
朔「まぁ」
「普通に生きてりゃ神様なんてまず会えないしな」
女子生徒「ましてや四柱なんて」
男子生徒「一生お目にかかれない人の方が多いだろ」
紬「そうそう!」
「神子候補になったからって会えるわけでもないし!」
女子生徒「あー、でも」
「神隠しの話は聞いたことある」
澪「神隠し?」
紬「あっ、知ってる!」
「六歳くらいまでの子供が、たまに神域に迷い込むってやつ!」
女子生徒「帰ってきても神域の記憶はなくなるんだって」
紬「神様と遊んだとか言い出す子もいるらしいよ」
朔「作り話だろ」
紬「夢がないなー!」
わいわい
澪「……神域」
紬「ん?」
澪「ううん」
「なんでもない」
胸の奥が、ほんの少しざわつく
〇夜・神域
澪「明日、陽神様が来るそうです」
久遠「ふぅん」
澪「どんな神様なんですか?」
久遠「うるさい」
澪「えっ」
久遠「騒がしい」
「暑苦しい」
「距離が近い」
澪「……」
澪、少し困ったように笑う
澪「仲が良いんですね」
久遠「別に」
即答
久遠「そんなに気になるの?」
澪「え?」
久遠「日輪」
澪「そ、それは……」
澪「四柱のお一人ですし」
澪「お会いしたこともないので……」
久遠「ふぅん」
少し不満そう
澪(なんだろう)
(ちょっと機嫌が悪い……?)
〇翌日・神統学舎
講堂
全校生徒が集まっている
麗華の姿もある
ざわざわ
紬「緊張する……」
女子生徒「本物の日輪様だよ……」
朔「騒ぎすぎだろ」
紬「うるさいな」
澪も壇上を見つめる
天城「静粛に」
しん
空気が張り詰める
天城「これより特別授業を開始する」
天城「講師を務めてくださるのは――」
天城「四柱が一柱」「陽神・日輪様」
ざわっ
大扉がゆっくりと開く
まるで朝日が差し込んだかのように眩い光
生徒たちが思わず目を細める
その中を、一人の神が歩いてくる
柔らかな金髪
金の瞳
人好きのする笑顔
日輪「やあ」
講堂がどよめく
生徒たち
「日輪様……!」
「本物だ……」
「すごい……」
誰もが目を奪われる
日輪「そんなに緊張しなくていいよ」
にこりと笑う
女子生徒たち「きゃー!」
紬「眩しい……!」
朔「うるせぇ」
澪「……!」
日輪の視線が講堂を見渡す
澪(この人が陽神様……)
日輪「さて」
日輪「まずは一人」
日輪「面白い子を見つけた」
講堂がざわつく
生徒たち「誰だ?」
「甲組か?」
「麗華さんじゃない?」
麗華、期待する顔
麗華(まさか……)
日輪、笑う
そして一人を指差す
日輪「君」
日輪、にっこり笑う
日輪「神代澪」
澪「……え?」
澪、一人で神具と向き合う
ぴかっ
自主練の成果で、一瞬だけ光らせることができた
でもすぐに消える
澪「流しすぎず……イメージ……」
そこへ久遠
久遠「まだやってたの」
澪「久遠様」
澪、手を止める
澪「……今日も駄目でした」
澪「あれから全然、進展がなくて……」
久遠「手」
澪「え?」
久遠「かざして」
澪、言われるまま手をかざす
久遠、澪の後ろへ回る
澪「っ」
肩が跳ねる
久遠「力入れすぎ」
後ろからそっと手を添える
澪(ち、近い……)
どくん
心臓が鳴る
久遠「もっと自然に」
久遠「息をするみたいに」
神気が流れる
ふわっ
神具が柔らかく光る
今までより、ずっと長く
澪「……!」
久遠「そう」
澪「できた……」
久遠「うん」
澪「できました……!」
久遠、少しだけ微笑む
久遠「澪ならできるって信じてた」
とくん
澪の胸が高鳴る
澪(ここに来たばかりの時は)
(怖いだけだったのに)
神具を見る
柔らかく光る銀の鏡。
澪(今は、こんなにも――)
久遠の手は、まだ自分の手の上にある
澪「……どうして」
久遠「え?」
澪「どうしてここまでしてくださるんですか」
久遠、一瞬だけ黙る
久遠「澪が困っていると放っておけないんだ」
久遠「……昔からね」
澪「え……?」
神具の光が静かに揺れる
少し沈黙
久遠「最近」
澪「?」
久遠「楽しそうだね」
澪「あ……」
紬や朔たちの顔が浮かぶ
澪「はい」
澪「みんな良い人で」
澪「自主練も楽しくて」
久遠「うん」
静かに頷く
久遠「よかった」
本当に嬉しそうに笑う
久遠「澪が笑うようになって」
久遠「安心した」
澪「……久遠様」
少し間
久遠「でも」
澪「?」
久遠「帰ってくるよね」
澪「え?」
久遠「ここに」
神域を見渡す
久遠「友達ができても」
久遠「学舎が楽しくても」
久遠「澪が帰ってくる場所は」
久遠「ここだよね?」
どくり
胸が鳴る
澪「それは……もちろんです」
久遠「ならいい」
久遠、満足そうに微笑む
澪(なんだろう)(今の……)
(少しだけ、寂しそうだった)
ふわり
神具がもう一度光る
柔らかな光が二人を包む
久遠「ほら」
澪「え?」
久遠「今の方が綺麗だった」
神具の光が、静かに二人を照らしていた
〇神具実習室
昼休み
澪、神具の前
そっと神気を流す
ふわっ
神具が柔らかく光る
以前より長く、以前より安定して
澪「……!」
紬「おお!」
朔「また光った」
女子生徒「すごい……」
澪「ま、まだ少しだけだから」
澪、照れる
紬「でも最初は全然だったじゃん」
朔「確かに」
女子生徒「私も頑張ろうかな……」
澪「一緒に頑張ろう」
女子生徒、少し驚く
女子生徒「……うん」
別の女子生徒「神代さんって」
澪「?」
女子生徒「もっと話しにくい人だと思ってた」
澪「……そうかな」
女子生徒「だって」
女子生徒「影神様の推薦だし」
朔「ましてや神域に住んでるしな」
女子生徒「なんていうか……」
「近寄りがたい感じだった」
澪「……そう見えてたんだ」
女子生徒「うん」
少し申し訳なさそうに笑う
女子生徒「でも違った」
女子生徒「普通だった」
紬「ただの澪だった」
朔「ただの神代だったな」
澪「あ、ありがとう……?」
くすくす
小さな笑いが起こる
以前なら考えられなかった
誰かと笑い合う時間
澪も笑う
八雲、少し離れた場所からその様子を見る
八雲(馴染んできたな)
初めて会った頃
俯いて、誰とも目を合わせなかった少女
今は違う
自然と人が集まっている
八雲、ふと思い出したように言う
八雲「そういや」
八雲「お前ら明日は自主練中止な」
全員「え?」
紬「なんで!?」
八雲「特別授業があるんだよ」
朔「特別授業?」
八雲「陽神が来る」
しん
全員固まる
女子生徒「……は?」
男子生徒「陽神様?」
紬「えっ」
紬「日輪様!?」
八雲「そう」
ざわあああっ
女子生徒「本物!?」
紬「やばい!」
朔「なんでそんな大事なこと今言うんだよ」
八雲「今思い出した」
紬「絶対嘘!」
わいわい
澪「日輪様……」
澪(久遠様と同じ、四柱のひとり)
紬「澪、反応薄くない?」
澪「そ、そうかな?」
紬「そうだよ! だって、あの四柱だよ!?」
朔「まぁ」
「普通に生きてりゃ神様なんてまず会えないしな」
女子生徒「ましてや四柱なんて」
男子生徒「一生お目にかかれない人の方が多いだろ」
紬「そうそう!」
「神子候補になったからって会えるわけでもないし!」
女子生徒「あー、でも」
「神隠しの話は聞いたことある」
澪「神隠し?」
紬「あっ、知ってる!」
「六歳くらいまでの子供が、たまに神域に迷い込むってやつ!」
女子生徒「帰ってきても神域の記憶はなくなるんだって」
紬「神様と遊んだとか言い出す子もいるらしいよ」
朔「作り話だろ」
紬「夢がないなー!」
わいわい
澪「……神域」
紬「ん?」
澪「ううん」
「なんでもない」
胸の奥が、ほんの少しざわつく
〇夜・神域
澪「明日、陽神様が来るそうです」
久遠「ふぅん」
澪「どんな神様なんですか?」
久遠「うるさい」
澪「えっ」
久遠「騒がしい」
「暑苦しい」
「距離が近い」
澪「……」
澪、少し困ったように笑う
澪「仲が良いんですね」
久遠「別に」
即答
久遠「そんなに気になるの?」
澪「え?」
久遠「日輪」
澪「そ、それは……」
澪「四柱のお一人ですし」
澪「お会いしたこともないので……」
久遠「ふぅん」
少し不満そう
澪(なんだろう)
(ちょっと機嫌が悪い……?)
〇翌日・神統学舎
講堂
全校生徒が集まっている
麗華の姿もある
ざわざわ
紬「緊張する……」
女子生徒「本物の日輪様だよ……」
朔「騒ぎすぎだろ」
紬「うるさいな」
澪も壇上を見つめる
天城「静粛に」
しん
空気が張り詰める
天城「これより特別授業を開始する」
天城「講師を務めてくださるのは――」
天城「四柱が一柱」「陽神・日輪様」
ざわっ
大扉がゆっくりと開く
まるで朝日が差し込んだかのように眩い光
生徒たちが思わず目を細める
その中を、一人の神が歩いてくる
柔らかな金髪
金の瞳
人好きのする笑顔
日輪「やあ」
講堂がどよめく
生徒たち
「日輪様……!」
「本物だ……」
「すごい……」
誰もが目を奪われる
日輪「そんなに緊張しなくていいよ」
にこりと笑う
女子生徒たち「きゃー!」
紬「眩しい……!」
朔「うるせぇ」
澪「……!」
日輪の視線が講堂を見渡す
澪(この人が陽神様……)
日輪「さて」
日輪「まずは一人」
日輪「面白い子を見つけた」
講堂がざわつく
生徒たち「誰だ?」
「甲組か?」
「麗華さんじゃない?」
麗華、期待する顔
麗華(まさか……)
日輪、笑う
そして一人を指差す
日輪「君」
日輪、にっこり笑う
日輪「神代澪」
澪「……え?」


