雨童の嫁入り~雨女と蔑まれた双子の姉は、龍神に唯一の花嫁として望まれる~

【水殿・雫の部屋・夜】
 雨音だけが響いている。

雫「……りゅうさま」

 自分の口から零れた呼び名に、雫は目を見開く。
 戸口に立つ龍神も、息を止めていた。
 金色の瞳が揺れる。
 長く待ち望んだ声を、ようやく耳にしたかのように。

龍神「今……なんと呼んだ?」
雫「わかりません」

 雫は胸元を押さえる。

雫「勝手に口から出て……」

 龍神が寝台へ近づく。
 雫へ伸ばしかけた手が、頬に触れる寸前で止まった。

龍神「無理に思い出そうとするな」
雫「でも、あの子は私なんですよね?」
龍神「雫」
雫「夢の中の女の子も、この国を懐かしいと感じるのも、龍神様を見た時に胸が苦しくなるのも……全部、雨童だったからですか?」

 雫は龍神を見上げる。
 問い詰めるような言葉とは裏腹に、声は頼りなく震えていた。

雫「私の中に、知らない誰かがいるみたいで怖いんです」

 龍神は手を下ろす。
 代わりに、雫の前へ膝をついた。
 視線の高さを合わせ、静かに語りかける。

龍神「雨童の記憶がお前の中に残っていることは、否定せぬ」
雫「やっぱり……」
龍神「だが、雨宮雫として生きてきた年月も、お前のものだ」

 雫が顔を上げる。

龍神「過去の記憶によって、今のお前が消えるわけではない」
雫「龍神様は……」

 唇が震える。

雫「雨童に戻ってほしいんですか?」

 龍神はすぐには答えない。
 その沈黙が怖くなり、雫は寝具を握り締める。
 やがて龍神は、はっきりと首を横に振った。

龍神「戻ってほしいとは思わぬ」
雫「どうして……?」
龍神「雨童は、もう戻らぬ」

 龍神の声に、深い痛みが滲む。

龍神「あの子は失われた。どれほど願っても、あの日のまま時を戻すことはできぬ」

 雫の胸が締めつけられる。

龍神「今、私の前にいるのは雫だ」

 龍神は雫を真っ直ぐに見つめる。

龍神「お前が何を思い出し、何を選ぶとしても、私は今のお前を否定せぬ」
雫「……」
龍神「今夜は休め」

 龍神が立ち上がる。
 部屋を出ようとした背中へ、雫が声をかける。

雫「龍神様」

 龍神が振り返る。

雫「さっきの呼び方……嫌でしたか?」

 龍神の目が僅かに見開かれる。
 次いで、寂しそうな微笑みが浮かんだ。

龍神「いいや」

 静かな声。

龍神「もう一度聞くことを、長く願っていた」

 龍神が部屋を出る。
 戸が閉じたあとも、雫はしばらく動けない。
 胸の奥に残された言葉へ、確かめるように手を当てた。

【水殿・翌朝】
 雨は夜明けとともに弱まり、細かな霧雨へ変わっていた。
 雫は侍女に着付けてもらいながら、鏡に映る自分を見る。

 淡い水色の着物。
 銀糸で刺繍された蓮と雨粒。
 髪には、昨日少年からもらった小さな蓮の花が挿されている。

侍女「とてもよくお似合いでございます」
雫「ありがとうございます」
侍女「本日は龍神様が政務で席を外されております。何かございましたら、すぐにお呼びくださいませ」
雫「政務?」
侍女「各地の水脈の状態を確認されるそうです。雨嫁様がお越しになったことで、水が戻り始めておりますので」

 侍女は嬉しそうに微笑む。

侍女「龍神様も、昨日から随分とお顔が明るくなられました」
雫「そうですか……?」
侍女「はい。雨嫁様をお迎えして以来、別人のようでございます」

 雫は昨夜の龍神の顔を思い出す。

『今、私の前にいるのは雫だ』

 胸の奥がくすぐったくなり、雫は鏡から目を逸らす。

雫「少し、庭を歩いてきてもいいですか?」
侍女「もちろんでございます。ただ、水殿は大変広うございますので、遠くへ行かれませんよう」
雫「はい」

【水殿・回廊】
 雫は一人で回廊を歩く。
 青白く光る水路。
 透明な床の下を泳ぐ魚。
 天井から垂れ下がる水晶が、雨雲の薄明かりを受けて輝いている。

雫モノローグ「少しだけ歩くつもりだった」

 蓮池まで行き、昨日の少年に花のお礼を言おうと思っていた。
 けれど、回廊は幾つにも枝分かれしている。

 同じ形の橋。
 同じ白い柱。
 同じ青い水路。
 角を曲がるたび、見覚えのない景色が現れた。

雫「……あれ?」

 雫は立ち止まる。
 後ろを振り返る。
 来た道さえ、わからなくなっていた。

雫「ここ、どこ……?」

 遠くで雷が低く鳴る。

 ぽつり。
 頬へ雨粒が落ちた。
 水殿の外へ出てしまったらしい。
 気がつけば、静かな雨が降り始めていた。

雫「また迷子……」

 小さくため息をつく。
 雨脚が少しずつ強くなる。
 見回すと、木々の向こうに古い東屋が見えた。
 雫は裾を持ち上げ、濡れた石畳を慎重に歩いていく。

【古い東屋】
 屋根を叩く雨音。
 東屋の周囲には、手入れのされていない蓮池が広がっている。
 池の大半はまだ泥に覆われているが、雫が近づいた場所から少しずつ水が滲み出していた。

 雫は柱へ背を預ける。

雫モノローグ「迷子になったのなんて、久しぶりだ」

 雨に煙る景色を眺めていると、幼い頃の記憶が蘇る。

【過去回想・観光地】
 家族旅行で訪れた、山あいの観光地。
 急に降り始めた大雨。
 観光客が一斉に傘を広げ、細い参道が混雑している。

 幼い雫は、人の波に押されて家族とはぐれてしまう。

幼い雫「お母さん……?」

 リュックよりも小さな背中。
 濡れた髪が頬に張りついている。

幼い雫「お父さん……?」

 傘の間から、必死に家族を探す。
 やがて、少し離れた場所から母と父の声が聞こえた。

母「晴香ー!?」
父「晴香はどこだ!」

 二人が呼んでいるのは、妹の名前だけ。
 雫は声の方へ進む。
 人混みの先で、両親が晴香を見つける。

母「晴香!」

 母が晴香へ駆け寄り、強く抱き締める。

父「よかった。怪我はないか?」
晴香「怖かった……」
母「もう大丈夫よ」

 父も母も、晴香の顔を覗き込んでいる。
 すぐ近くに立つ雫には、気づかない。
 雫は自分から一歩近づく。

幼い雫「お母さん……」

 ようやく母が顔を上げる。

母「あら、雫もいたの」

 安堵ではなく、驚いたような声。

母「晴香とはぐれないようにしてくれないと困るでしょう」

 雫は俯く。

幼い雫「ごめんなさい……」

【古い東屋・現在】
 雫はしゃがみ込み、膝を抱える。

雫モノローグ「そういえば」
雫モノローグ「私のことを、誰かが迎えに来てくれたことなんて……なかったな」

 屋根から落ちる雨水を見つめる。

雫「……大丈夫」

 自分へ言い聞かせる。

雫「こんなの、慣れてる」

 その時。

龍神「雫」

 雫の肩が跳ねる。
 顔を上げる。
 雨の向こう。
 銀髪を濡らしながら、龍神が立っていた。

 片手には白い傘。
 普段は崩れない衣の裾が泥で汚れ、呼吸も僅かに乱れている。
 急いで探してきたことが、一目でわかる。

雫「龍神様……」

 龍神は東屋へ入り、雫の前へ膝をつく。

龍神「探したぞ」
雫「どうして……?」
龍神「お前がいなくなった」
雫「それだけで?」

 龍神が眉を寄せる。

龍神「ほかに理由が必要か?」
雫「だって……」
龍神「お前が見当たらぬなら、探すのは当然だ」

 雫は何も言えなくなる。
 龍神は肩にかけていた羽織を外し、雫へ被せる。

龍神「冷えていないか?」
雫「大丈夫です」
龍神「手を見せよ」
雫「え?」

 龍神が雫の手を取る。
 触れた指先の冷たさに、表情が険しくなる。

龍神「大丈夫ではない」

 龍神は雫の両手を、自分の手で包み込む。
 龍神の手から伝わる熱が、冷えた指先へ染みていく。
 雫の頬が僅かに赤くなる。

雫「……龍神様、政務中だったんじゃ」
龍神「切り上げてきた」
雫「私のために?」
龍神「ほかに誰がいる」

 あまりにも当然のように言われ、雫は目を伏せる。
 胸の奥が熱い。

龍神「ここへ来たのも久方ぶりだ」

 龍神が東屋の外へ目を向ける。
 荒れた蓮池。
 崩れかけた石灯籠。

雫「前は、よく来ていたんですか?」
龍神「ああ」

 龍神の視線が、懐かしむように細められる。

龍神「騒がしい童が、この池を気に入っていた」

 雫は池を見る。
 風が吹き、水面に細かな波紋が広がる。
 胸の奥が微かに痛んだ。

雫「雨童……?」

 龍神は答えない。
 雫の肩から羽織がずれないよう、そっと引き寄せる。

龍神「戻ろう」

 立ち上がろうとした龍神へ、雫が声をかける。

雫「龍神様」
龍神「なんだ」
雫「私がいると、雨が降ります」
龍神「ああ」
雫「だから、迷子になった時まで雨になって……」

 雫は雨の向こうへ視線を落とす。

雫「やっぱり、迷惑ですよね」

 龍神は驚いたように雫を見る。

龍神「なぜ、そのように思う」
雫「現代では、いつもそう言われていました」

 修学旅行の新幹線。
 駅弁を囲む晴香たちの笑い声。

『誰かさんのおかげで』

 雫の指が羽織の端を握る。

雫「私の雨は、誰かの予定を壊して、困らせるだけでした」
龍神「違う」

 即座に否定され、雫が顔を上げる。

龍神「雨が降ったから、お前を見つけられた」
雫「……え?」
龍神「お前がどこへ行ったのか、誰も知らなかった。だが、この場所にだけ雨が集まっていた」

 龍神が傘を開く。

龍神「お前の雨は、私に居場所を教えてくれる」

 雫は息を止める。

龍神「私にとっては、道しるべだ」

 龍神が淡く微笑む。

龍神「私を、お前のもとへ導いてくれる雨だ」

 今まで。
 雨は嫌われる理由だった。
 誰かに責められる理由だった。
 誰かが自分を見つけ、迎えに来てくれる理由になったことなど、一度もない。

 雫の瞳に涙が滲む。

龍神「なぜ泣く」
雫「わかりません……」

 雫は慌てて目元を拭う。

雫「そんなこと、言われたことがなかったから」

 龍神の手が、雫の頬へ伸びる。
 指先で涙を拭う。

龍神「ならば、これから何度でも言おう」

 雫が龍神を見上げる。

龍神「お前の雨は、心地よい」

 雨音の中。
 金色の瞳には、雫だけが映っている。

【水殿への帰り道】
 龍神が傘を持ち、雫と並んで歩く。

 一つの傘の下。
 二人の肩が時折触れる。
 雫が濡れないよう、龍神は傘を雫側へ傾けている。
 その分、銀髪と片方の肩が雨に濡れていた。

雫「龍神様の方が濡れています」
龍神「私は水の神だ。濡れたところで困らぬ」
雫「でも」

 雫は傘の柄を持つ龍神の手へ、自分の手を添える。
 傘を二人の中央へ戻す。
 龍神が雫を見る。

雫「半分ずつでいいです」

 少しの沈黙。
 龍神の口元が柔らかく緩む。

龍神「そうか」

 二人は、再び歩き始める。

雫「前にも……私を探したことがあるんですか」

 龍神の足が止まる。

龍神「ある」
雫「いつですか?」
龍神「ずっと昔だ」
雫「それは……雨童を?」

 龍神は答えない。
 けれど、傘の柄を握る指に力が入る。

雫「私、なんですか?」
龍神「……」
雫「その雨童は、私なんですよね?」
龍神「今はまだ、無理に思い出さなくてよい」
雫「ずっとそればかり……」
龍神「お前が」

 龍神は目を伏せる。

龍神「お前でなくなってしまう気がする」
雫「……?」
龍神「私は、過去の誰かを取り戻したいのではない」
雫「でも、雨童をずっと待っていたんですよね」
龍神「ああ」

 龍神は否定しない。

龍神「それでも、今ここにいるのは雫だ」

 龍神が雫へ向き直る。

龍神「思い出したくないことを、私のために思い出す必要はない」
雫「龍神様のため……」
龍神「お前を再び傷つけるくらいなら、過去は眠ったままでよい」

 龍神の表情は、痛みを堪えるように真剣だった。
 雫にはまだ、その言葉のすべてを理解できない。

 それでも。
 この神だけは、自分を雨を降らせる器として扱っているのではないのかもしれない。
 そんな小さな期待が、胸の奥に芽生える。

【潤野市・数日後】
 雫が消えてから数日。
 例年なら雨雲が低く垂れ込める潤野市には、雲一つない青空が広がっていた。

 強い日差し。
 乾いた風。
 生姜畑の土には、細かな亀裂が入り始めている。
 農家の男がしゃがみ込み、土を指で崩す。

農家「乾きすぎだ」
農家「このままじゃ、生姜が太らんぞ」

 別の農家が、空を仰ぐ。

農家「この時期に、ここまで雨が降らないなんてな」

 山あいの山葵田。
 普段なら勢いよく流れている清流が細くなり、石の間に浅い水が残るだけになっている。

農家「沢の水まで減ってきた」
農家「今年は収穫が落ちるかもしれん」

【テレビニュース】
『潤野市では、記録的な少雨が続いています』

 画面に、ひび割れた畑と水量の減った山葵田が映る。

『生姜や山葵など、地域の特産品への影響が懸念されています』

 町の人々が、店先のテレビを見ている。

町の人「そういや、雨宮さんとこの娘さんがいなくなったんだって?」
町の人「修学旅行先で行方不明らしいな」
町の人「その子がいなくなってから、雨が降ってないんじゃないか?」
町の人「まさか。偶然だろ」

 否定しながらも、人々は晴れ渡った空を見上げる。

【雨宮家】
 居間。
 テレビでは、記録的少雨のニュースが続いている。
 母と父が食卓に座り、晴香は少し離れたソファにいる。

母「困るわね」
父「農家も大変だな」
母「生姜が不作になったら、町全体に影響が出るでしょうね」

 母は窓の外を見る。
 夕方になっても、空は明るい。

母「あの子、どこへ行ったのかしら」

 晴香の肩が僅かに動く。
 雫が龍神に抱き上げられ、光の中へ消えた瞬間を思い出す。

父「警察も探している。いずれ見つかるだろう」
母「でも、早く帰ってきてもらわないと」

 晴香が母を見る。

晴香「……お姉ちゃんが心配だから?」
母「もちろん、それもあるけれど」

 母はニュース画面に映る畑を見る。

母「このまま雨が降らなかったら、みんな困るでしょう」

 晴香は黙る。

 母の言葉は、雫の無事を案じているようには聞こえなかった。
 けれど晴香の胸に浮かんだのは、姉への同情ではない。

 これまで散々迷惑だと責められていた姉が、いなくなった途端に必要とされ始めている。
 雫が雨を降らせているなんて、そんなことあるわけない。ただの偶然に違いないのに。

 家族も、町の人間も。
 そして、あの美しい神まで。

晴香モノローグ「どうして」

 晴香は膝の上で手を握り締める。

晴香モノローグ「どうして、急にお姉ちゃんばかり」

【雨宮家・ベランダ・夜】
 雲一つない夜空。
 数えきれないほどの星が輝いている。
 晴香は一人でベランダに立っている。

 修学旅行の日に撮った写真を、スマートフォンで眺める。

 友人たちに囲まれて笑う自分。
 恋愛成就のお守りを手にした自分。

 その後ろ。
 写真の端に、小さく雫が写っている。
 晴香は指で画面を拡大する。

晴香「お姉ちゃん……」

 雫を羨ましいと思う日が来るとは、考えたこともなかった。
 姉はいつも自分より下にいる存在だった。
 家族にも愛されず、友人もいない。
 行事のたびに責められ、俯いて謝っていた。

 それなのに。
 あの神は、雫を見つめて微笑んでいた。
 誰も自分へ向けたことがないほど、深く慈しむ眼差しで。

???「会いたいか」

晴香「!?」

 すぐそばで声がする。
 晴香は振り返る。
 ベランダの手すりの上に、一人の男が立っていた。

 艶のある黒髪。
 片方の目を覆う眼帯。
 黒と朱の衣が、風もないのに揺れている。

 人間ではない。
 そうわかるほど、妖しく整った顔立ち。
 男が手すりから音もなく降りる。

晴香「誰……?」
蛇神「我は朱雀」

 男は優雅に微笑む。

蛇神「姉を奪った龍神に対抗し得る、火の神だ」

 晴香は一歩後ろへ下がる。

晴香「朱雀……?」
蛇神「姉を返してほしいか」
晴香「返して……」

 すぐに答えたものの、声に力はない。
 蛇神の笑みが深くなる。

蛇神「本当に?」
晴香「え……?」
蛇神「お前は、あの光景を見ただろう」

 蛇神が晴香へ近づく。

蛇神「龍神に抱かれる姉を」

 晴香の脳裏に、銀髪の龍神が浮かぶ。

龍神『私の雨嫁』

 雫だけを見つめる金色の瞳。

蛇神「羨ましかったのではないか?」
晴香「そんなこと……」
蛇神「ないと言い切れるか?」

 晴香は言葉を失う。
 蛇神の眼帯の奥で、金色の光が瞬いた。
 晴香の胸に押し込めていた嫉妬が、急速に膨らんでいく。

蛇神「美しかっただろう、あの男は」
晴香「……」
蛇神「誰よりも美しく、誰よりも高貴な神が、姉だけを選んだ」

 晴香の指が震える。

蛇神「思わなかったか?」

 蛇神が晴香の耳元へ顔を寄せる。

蛇神「どうして姉なのだと」
晴香「私は……」

 晴香の中で、これまで積み重ねてきたものが溢れ出す。

晴香「私は、ずっと頑張ってきた」

 明るく振る舞った。
 友人を大切にした。
 家族にも愛されるよう、期待に応えてきた。

晴香「みんなに好かれるようにしてきたのに」

 雫は何もしていない。
 俯いて、雨を降らせて、周囲へ迷惑をかけていただけ。

晴香「どうして、お姉ちゃんが選ばれるの?」

 蛇神が満足そうに微笑む。

蛇神「その通りだ」

 眼帯へ指をかけ、僅かに持ち上げる。
 隙間から覗いたのは、縦に裂けた金色の蛇の瞳。

蛇神「選ばれるべきだったのは」

 金色の光が、晴香の瞳へ映り込む。

蛇神「お前だ」

 晴香の瞳が、妖しく揺れた。