眩しい光に雫は思わず目を閉じる。
次に目を開いた時、そこは見知らぬ場所だった。
青白い光を放つ水路。
天井から垂れる水晶。
水面に揺れる無数の灯り。
雫「……ここ、どこ……?」
龍神「龍神である私が統べる国、『龍國』だ」
雫「……りゅうこく……?」
抱き上げられたままの状態。
龍神は当然のように空の上を歩いている。
雫「お、降ろしてください!」
龍神「嫌だ」
雫「なんで!?」
龍神「離したら逃げるだろう」
雫「逃げます!」
龍神「今、降ろすとお前は真っ逆さまだぞ」
雫「へぁっ!?」
足元を見てあまりの高さに、思わず龍神に抱きついてしまう。
龍神「ふっ。相変わらずで、少し安心した」
雫モノローグ「相変わらず……?」
【龍神の国】
巨大な門の先に広がる異世界。
そこは――
雫が想像した神の国とは違う。
雫「これ……」
大地はひび割れ。
川は細く。
蓮池は干上がっている。
雫「……龍神って、水の神様なのに?」
龍神「だから困っている」
やがて、大きな建物の屋上にふわり、と龍神は降りたつと、雫をそっと降ろす。
龍神「名は何という?」
雫「……雨宮、雫……」
龍神「雫。私はお前を雨嫁として迎える」
雫「……あめ、よめ!?」
その瞬間。
ぽつり。
雨粒が落ちる。
ぽたり。
ぽたり。
やがて静かな霧雨。
民たちが空を見上げる。
老人「雨だ……」
女「雨が降っている……」
子供「ほんとだ!」
歓声が広がる。
その光景を見下ろしながら、雫は目を見開く。
雨脚が強くなる。
干上がった土が潤い、枯れていた草が揺れる。
遠くの蓮池に水が戻る。
人々は涙を流して喜んでいる。
民「雨嫁様だ!」
民「龍神様が花嫁を見つけてくださった!」
民「ありがたや……!」
喜ぶ人々。
跪く人々。
涙を流す人々。
しかし雫の顔は曇る。
雫モノローグ「なに、これ……?みんな喜んでいるのに」
雫モノローグ「どうして私は、苦しいんだろう」
【龍神の住処】
夜。
水殿。
美しい部屋。
柔らかな寝台。
食事も豪華。
侍女までつく。
髪の毛も乾かされると、綺麗に結い上げられる。
濡れた制服から綺麗な着物に着替えさせられる。
侍女「お支度整いました」
侍女「雨嫁様」
雫モノローグ「……またその呼び方」
一人になると、窓の外の雨を見ながら、雫は膝を抱える。
雫モノローグ「いつも、雨女と言われていた」
雫モノローグ「でも、ここでは……私を必要としてくれるの……?」
雫「それでも……結局、どこへ行っても、見られているのは私じゃない。雨だけなんだ」
部屋の外。
龍神は襖越しにそれを聞いている。
静かに目を伏せる。
龍神
「雨だけではない……私は……」
その夜。
龍神の国から遠く離れた場所。
暗い祠に無数の蛇が蠢いている。
ひとりの男が目を開く。
黒髪。
片目には眼帯の妖しく美しい男。
男「見つかったか」
男「雨童」
眼帯の隙間から金色の目が覗く。
男「龍神め…!」
男「今度こそ渡さぬ」
次に目を開いた時、そこは見知らぬ場所だった。
青白い光を放つ水路。
天井から垂れる水晶。
水面に揺れる無数の灯り。
雫「……ここ、どこ……?」
龍神「龍神である私が統べる国、『龍國』だ」
雫「……りゅうこく……?」
抱き上げられたままの状態。
龍神は当然のように空の上を歩いている。
雫「お、降ろしてください!」
龍神「嫌だ」
雫「なんで!?」
龍神「離したら逃げるだろう」
雫「逃げます!」
龍神「今、降ろすとお前は真っ逆さまだぞ」
雫「へぁっ!?」
足元を見てあまりの高さに、思わず龍神に抱きついてしまう。
龍神「ふっ。相変わらずで、少し安心した」
雫モノローグ「相変わらず……?」
【龍神の国】
巨大な門の先に広がる異世界。
そこは――
雫が想像した神の国とは違う。
雫「これ……」
大地はひび割れ。
川は細く。
蓮池は干上がっている。
雫「……龍神って、水の神様なのに?」
龍神「だから困っている」
やがて、大きな建物の屋上にふわり、と龍神は降りたつと、雫をそっと降ろす。
龍神「名は何という?」
雫「……雨宮、雫……」
龍神「雫。私はお前を雨嫁として迎える」
雫「……あめ、よめ!?」
その瞬間。
ぽつり。
雨粒が落ちる。
ぽたり。
ぽたり。
やがて静かな霧雨。
民たちが空を見上げる。
老人「雨だ……」
女「雨が降っている……」
子供「ほんとだ!」
歓声が広がる。
その光景を見下ろしながら、雫は目を見開く。
雨脚が強くなる。
干上がった土が潤い、枯れていた草が揺れる。
遠くの蓮池に水が戻る。
人々は涙を流して喜んでいる。
民「雨嫁様だ!」
民「龍神様が花嫁を見つけてくださった!」
民「ありがたや……!」
喜ぶ人々。
跪く人々。
涙を流す人々。
しかし雫の顔は曇る。
雫モノローグ「なに、これ……?みんな喜んでいるのに」
雫モノローグ「どうして私は、苦しいんだろう」
【龍神の住処】
夜。
水殿。
美しい部屋。
柔らかな寝台。
食事も豪華。
侍女までつく。
髪の毛も乾かされると、綺麗に結い上げられる。
濡れた制服から綺麗な着物に着替えさせられる。
侍女「お支度整いました」
侍女「雨嫁様」
雫モノローグ「……またその呼び方」
一人になると、窓の外の雨を見ながら、雫は膝を抱える。
雫モノローグ「いつも、雨女と言われていた」
雫モノローグ「でも、ここでは……私を必要としてくれるの……?」
雫「それでも……結局、どこへ行っても、見られているのは私じゃない。雨だけなんだ」
部屋の外。
龍神は襖越しにそれを聞いている。
静かに目を伏せる。
龍神
「雨だけではない……私は……」
その夜。
龍神の国から遠く離れた場所。
暗い祠に無数の蛇が蠢いている。
ひとりの男が目を開く。
黒髪。
片目には眼帯の妖しく美しい男。
男「見つかったか」
男「雨童」
眼帯の隙間から金色の目が覗く。
男「龍神め…!」
男「今度こそ渡さぬ」



