探偵研究部。――カケラノセカイ―― ③ サマーゲームパーティー

【船三:キュービー/豆電球/いぬだいすき】
 
 情報リレーの間、キュービーは頭をひねっていた。
「え?? え? 今の何? 高度過ぎて意味が分かんないんだけど!」
 
 いぬだいすきは、ため息をついて
「そうだよなあ。
 じゃあさ、僕と豆電球がちょっと代わりにやってみるから見てて。まあ、豆電球が、正直者だとしよう。で、僕は、うそつきだとしよう。仮にここでは「ホホ=はい」、「ナナ=いいえ」だった場合だ。
 どんな答えになると思う?
 ほら、キュービー、質問してみて」

「ええと
『もし私が『Bは気まぐれ者ですか?』と尋ねたら、
 あなたは『ホホ』と答えますか?』だな」
「そう。じゃあ、 相手が【正直者】の場合」いぬだいすきがうなずく。

豆電球が答える。
「Bは気まぐれ者だから、普通に聞かれたら『ホホ(はい)』と答えるな。
 そして、質問への回答については、自分は『ホホ』と答える人間なので、嘘偽りなく『ホホ(はい)』と答える」
「そう結果 「ホホ」となるんだ」
ここまでは理解できるとキュービーは首をこくこくと振った。

「じゃあ、今度は【うそつき】の僕が答えるよ。質問して?」

「『もし私が『Bは気まぐれ者ですか?』と尋ねたら、
  あなたは『ホホ』と答えますか?』」

「僕はこんなことを考えるよ。『Bは気まぐれ者だ。でも俺は嘘つきだから、普通に聞かれたら『ナナ(いいえ)』と嘘をついてやるぜ』と。

でも、次にこんなことを考える。
『おっと、今の質問は『お前はホホと答えるか?』だったな。俺の予定では『ナナ』と答えるつもりだから、本当なら『いいえ』だ。
だが俺は嘘つきだ!
『いいえ』なんて正直に言わないぜ!嘘をついて『ホホ(はい)』って言ってやる!だから「ホホ」と答えるんだ。
二つの質問に対して、嘘に嘘を重ねた結果、正直者と同じ答えになるんだ」

「ひえーー! 嘘つきが嘘をつけなくなる質問だったんだな」
キュービーが目を見開き感心する。

「でもさ。ホホとナナはどっちがどっちか分かんないんだろ?
「ホホ=いいえ」「ナナ=はい」だった場合どうなるんだ?」
 豆電球が疑問を口にした。

「じゃあ、また、豆電球やってみて」

「相手が【正直者】の場合だな?
『Bは気まぐれ者だ。だから、普通に聞かれたら『ナナ(はい)』と答えるぞ。今の質問は『お前はホホ(いいえ)と答えるか?』だな。自分は『ナナ』と答える予定だから、正直に『ホホ(いいえ、違います)』と答えよう。
すると結果 は「ホホ」だ!」

「じゃあ、相手が【嘘つき】の場合だ。『Bは気まぐれ者だ。でも俺は嘘つきだから、事実を曲げて『ホホ(いいえ)』と答えてやるぜ! おっと、今の質問は『お前はホホと答えるか?』か。俺の予定では『ホホ』と答えるつもりだから、本当なら『ナナ(はい、そうです)』だ!
 だが俺は嘘つきだ!『ナナ(はい)』なんて正直に言わないぜ!嘘をついて『ホホ(いいえ)』って言ってやる!
で、結果 は「ホホ」になるんだ。
 つまり、この一回目の質問を通すと、【正直者】も【嘘つき】も「ホホ」以外を言えない仕組みなんだよ。そして、この質問を、【正直者】と【うそつき】三人にたたきつければ、【気まぐれもの】はあぶりだせるって訳!」

「へ――――!」
 感心したように、キュービーは未知の方を向いた。

【船五:スパロウ(小笠原)/さっちん/ハムスター】

 小笠原は解説する。
「そう、 マイナスとマイナスを掛けるとプラスになる。
 嘘つきは、『自分がつくはずの嘘』について質問されると、さらに嘘をつかなきゃいけなくなるってわけだ。嘘に嘘を重ねて、結局『真実』を喋らされる。
 そして、ホホとナナの意味がどっちだとしても、この『二重の質問』というフィルターを通せば、言葉の矛盾も勝手に相殺される。
 だから、相手が正直者でも嘘つきでも、言葉の意味がどっちでも関係ない。
『真実』なら絶対にホホ、『嘘』なら絶対にナナとしか答えられなくなる。
 ――気まぐれ者以外は。
 ナイチンゲールらしい、美しい論理の導き方だな」

 安堵の沸き起こる空気の中で、小笠原は何か納得がいかないように、胸がざわめいた。

(論理は合っている。ーー論理は)

 でも、相手はあの『ゲームマスター』だ。
 「新宿」に行って置いてきぼりにされた参加者が多かったと、伝え聞いた。
 あの免責事項の裏の、細かいフォントの違いから「東京駅中央口」を示した。
 あれに気づいたのは、よっぽど疑い深い自分のような人間や、洞察力の鋭い者。直感が鋭い者だ。

(ゲームマスターは、不要なヒントは出さないはずだ)

 はっと、気づいた、小笠原は大声を出す。
「まて! 送信するな! その回答はブラフだ!!」
 皆が手を止めて小笠原のほうを向いた。

(そうだ、第三問が流れ終わった時だ。
 ノイズのように、一瞬ガサガサと音が入り込み、再びゲームマスターの声が流れた。
『おっと!言い忘れた。
 ――ただし、噓つきは一度だけ真実を語る』
 わざわざ、問題が終わってから言った。しかもこれ見よがしに第四問は、第三問と同じ『論理パズル』……!)

 ぎり、と奥歯をかみしめた。

「待ってくれ! 『噓つきは、一度だけ真実を語る』の条件が抜けてる!!」

「え? どういうこと? どうなっちゃうの」
 ハムスターは声を上げた。 

「美しい論理だったのに……。
 ちくしょう! こっちが正解を導き出すことを見越して、罠を張ってやがった!!

 嘘つきが、一度だけどこかで『真実』を語ったなら、この二重の質問で『ホホ』を導き出せることはなくなるんだ。
 これではもう、情報不足で、三つの質問の中で『気まぐれものを見つけること』は不可能だ。
 どうする……ナイチンゲール」

 ふらり、船の上で未知がよろめいた。すかさずたこ星人とジェダイが支える。
 未知はゆっくりと立ち上がり、タブレットに書き込む。

「みんなで同じ回答をすることが、このゲームを勝利する条件よね。
 『勝利』って何?
 ゲームに勝つこと?

 違う。 

 みんなでこのバカげたゲームから脱出することよ。
 ゲームマスターは、最初からフェアプレーなんか捨てている……!
 だったら、私たちが出す答えは、『これ』よ!」
 未知は、タブレットを船頭のホルダーからもぎ取り、後続の皆に掲げた。

「回答拒否」