第二問目のルービックキューブの問題は、七艘の船、全て正解だった。
『さすがに正解だったね。……だが、IQ百五十以上の君たちには、これでは簡単すぎたかな?』
ゲームマスターの声が、スピーカーから皮肉げに響いた。
直後、スピーカーから、さらに無機質な追加の指示が流れる。
『それでは、ここから――問題の続きを言おう。
第五手、底面を、底から見下ろして反時計回りに九十度回転。
第六手、右側の面を、奥(上)に向かって九十度回転。
さあ、現在の『正面の九マス』の色はどうなっているかな?』
皆が、しん……と固まった。
四手先ですら、何とか工夫して正解をもぎ取ったのだ。
勝利の余韻で、すでにほかの面のことなど記憶から消えている。
そこからさらに二手。しかも底面と右面の複合的な回転が加わったのだ。
「……第五手は、底面を反時計回り……!」
小笠原が低く唸り、手を伸ばす。
脳内で再びキューブを操作しはじめた。
第五手。底面が回りだす。
その上に、さらに第六手へ移る。
さっちんは、色を逃さないように、頭にパレットを浮かび上がらせる。
ハムスターは慌てて、これまでの手順と結果の下に、忘れないよう殴り書きのメモを更新した。
(第五手 D(底)を反時計……)
(第六手 R(右)奥……)
「上段は……、中段は……」
小笠原が、搾り出すように脳内の色の情報を口にする。
彼が見つめる虚空には、透明な、回転する光のキューブが、複雑な軌跡を描いて浮かんでいた。
一方、未知(ナイチンゲール)の乗る船一では、意外なことが起きていた。
「ごめんなさい。もう追えない……!」
未知が、限界を迎えた。
悔しそうにタッチペンを置き、下を向いた。
船底のパッキンが、今にも開いて水が入り込んでくるかもしれない。
チャプチャプと不気味な水の音が船底から聞こえてくる。
その時だ。同乗する『たこ星人』が、静かに口を開いた。
「これ、一面だけ完成させちゃ意味ないんちゃう? 三次元で考えな」
未知と『ジェダイ』が、ハッとしてたこ星人を見る。
そう、この問題は、頭の中で三次元を回転させ続ける「空間認識」の処理だ。正面のその裏に控える他の五面がどう動いているか――それを想像できるかどうかが正解の鍵だった。
「さっきまでの四手で、正面がどうなったかだけに気い取られてると、足元をすくわれるで。
第五手で『底面』が回ったとき、正面の下段にスライドしてきた色はどこから来た?
……せや、『右面の下段』にあった色やん」
「右面の……下段……?」
未知が呟く。たこ星人は力強く頷き、宙に立方体を描く。
「そう。四手目までで、右面の下段には『オレンジ・青・青』が並んでたはずや。
それが第五手で、そのまま正面の下段に滑り込んでくる。
ほんで第六手で右面を奥に回せば、今度は底面の右端にあった色が、下からせり上がってくるんちゃうか?」
関西弁交じりのたこ星人の言葉に、大きくうなずく。
「ありがとう、たこ星人」
未知が頭を下げると
「たまたまや。立体パズルならまかしとき」と笑い、ジェダイがタッチペンを持って操作した。
「これで入力するぞ」
【第六手終了時の正面】
黄・黄・赤
赤・赤・黄
オレンジ・青・オレンジ
すぐに、画面に大きく『正解!』の文字がポップアップした。
船一の三人は、ほっと大きく息を吐き出す。
「やった……」
他の船の結果も次々と確定していく。
船一に続いて、船五、そして船六も正解だった。
船六は、チャーミーが手持ちのクリアケースにネイルシールを貼り、実際にそれを回転させるという、アナログだが確実な方法で正解にこぎつけていた。
しかし――
船二、船三、船四、船七のタブレットには、無情にも不正解の文字が点灯した。
「いやあああ!」
「水だ! 水が入ってくる!」
不正解の船の底から、容赦なく水が噴き出す。
今回不正解となった船三のキュービーたちは、最初のデモンストレーションでも浸水しているため、すでに足首の上まで水が来ている。
さらに深刻なのは、船七だった。
第一問に続く、二回目の浸水。小さなボートの中に、合わせて『一四〇リットル』もの水が溜まっている計算になる。
「誰か助けて!!」
「沈む! 沈むってば!」
船七の『べろんちょ』たちの悲痛な悲鳴が、湖上に響き渡る。
※解説
第五手で、底面が反時計回りに回る。
各面の一番下の段が「右面 → 正面 → 左面 → 背面」の順にスライドし、右面の下段にあった「オレンジ・青・青」が、そのまま正面の下段へと滑り込む。
(第五手終了時の正面)
黄・黄・青
赤・赤・青
オレンジ・青・青
そして、続く第六手。右面を、上に向かって九十度回転させる。
正面の右端の縦一列が上面へ押し出され、代わりに、第五手で形成された底面の右列「赤(手前)・黄(中央)・オレンジ(奥)」が、下からそのまませり上がってくる。
(第六手終了時の正面)
黄・黄・赤
赤・赤・黄
オレンジ・青・オレンジ
『さすがに正解だったね。……だが、IQ百五十以上の君たちには、これでは簡単すぎたかな?』
ゲームマスターの声が、スピーカーから皮肉げに響いた。
直後、スピーカーから、さらに無機質な追加の指示が流れる。
『それでは、ここから――問題の続きを言おう。
第五手、底面を、底から見下ろして反時計回りに九十度回転。
第六手、右側の面を、奥(上)に向かって九十度回転。
さあ、現在の『正面の九マス』の色はどうなっているかな?』
皆が、しん……と固まった。
四手先ですら、何とか工夫して正解をもぎ取ったのだ。
勝利の余韻で、すでにほかの面のことなど記憶から消えている。
そこからさらに二手。しかも底面と右面の複合的な回転が加わったのだ。
「……第五手は、底面を反時計回り……!」
小笠原が低く唸り、手を伸ばす。
脳内で再びキューブを操作しはじめた。
第五手。底面が回りだす。
その上に、さらに第六手へ移る。
さっちんは、色を逃さないように、頭にパレットを浮かび上がらせる。
ハムスターは慌てて、これまでの手順と結果の下に、忘れないよう殴り書きのメモを更新した。
(第五手 D(底)を反時計……)
(第六手 R(右)奥……)
「上段は……、中段は……」
小笠原が、搾り出すように脳内の色の情報を口にする。
彼が見つめる虚空には、透明な、回転する光のキューブが、複雑な軌跡を描いて浮かんでいた。
一方、未知(ナイチンゲール)の乗る船一では、意外なことが起きていた。
「ごめんなさい。もう追えない……!」
未知が、限界を迎えた。
悔しそうにタッチペンを置き、下を向いた。
船底のパッキンが、今にも開いて水が入り込んでくるかもしれない。
チャプチャプと不気味な水の音が船底から聞こえてくる。
その時だ。同乗する『たこ星人』が、静かに口を開いた。
「これ、一面だけ完成させちゃ意味ないんちゃう? 三次元で考えな」
未知と『ジェダイ』が、ハッとしてたこ星人を見る。
そう、この問題は、頭の中で三次元を回転させ続ける「空間認識」の処理だ。正面のその裏に控える他の五面がどう動いているか――それを想像できるかどうかが正解の鍵だった。
「さっきまでの四手で、正面がどうなったかだけに気い取られてると、足元をすくわれるで。
第五手で『底面』が回ったとき、正面の下段にスライドしてきた色はどこから来た?
……せや、『右面の下段』にあった色やん」
「右面の……下段……?」
未知が呟く。たこ星人は力強く頷き、宙に立方体を描く。
「そう。四手目までで、右面の下段には『オレンジ・青・青』が並んでたはずや。
それが第五手で、そのまま正面の下段に滑り込んでくる。
ほんで第六手で右面を奥に回せば、今度は底面の右端にあった色が、下からせり上がってくるんちゃうか?」
関西弁交じりのたこ星人の言葉に、大きくうなずく。
「ありがとう、たこ星人」
未知が頭を下げると
「たまたまや。立体パズルならまかしとき」と笑い、ジェダイがタッチペンを持って操作した。
「これで入力するぞ」
【第六手終了時の正面】
黄・黄・赤
赤・赤・黄
オレンジ・青・オレンジ
すぐに、画面に大きく『正解!』の文字がポップアップした。
船一の三人は、ほっと大きく息を吐き出す。
「やった……」
他の船の結果も次々と確定していく。
船一に続いて、船五、そして船六も正解だった。
船六は、チャーミーが手持ちのクリアケースにネイルシールを貼り、実際にそれを回転させるという、アナログだが確実な方法で正解にこぎつけていた。
しかし――
船二、船三、船四、船七のタブレットには、無情にも不正解の文字が点灯した。
「いやあああ!」
「水だ! 水が入ってくる!」
不正解の船の底から、容赦なく水が噴き出す。
今回不正解となった船三のキュービーたちは、最初のデモンストレーションでも浸水しているため、すでに足首の上まで水が来ている。
さらに深刻なのは、船七だった。
第一問に続く、二回目の浸水。小さなボートの中に、合わせて『一四〇リットル』もの水が溜まっている計算になる。
「誰か助けて!!」
「沈む! 沈むってば!」
船七の『べろんちょ』たちの悲痛な悲鳴が、湖上に響き渡る。
※解説
第五手で、底面が反時計回りに回る。
各面の一番下の段が「右面 → 正面 → 左面 → 背面」の順にスライドし、右面の下段にあった「オレンジ・青・青」が、そのまま正面の下段へと滑り込む。
(第五手終了時の正面)
黄・黄・青
赤・赤・青
オレンジ・青・青
そして、続く第六手。右面を、上に向かって九十度回転させる。
正面の右端の縦一列が上面へ押し出され、代わりに、第五手で形成された底面の右列「赤(手前)・黄(中央)・オレンジ(奥)」が、下からそのまませり上がってくる。
(第六手終了時の正面)
黄・黄・赤
赤・赤・黄
オレンジ・青・オレンジ



