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蛍に無理をさせないことを大前提に、五日かけて車を走らせ京に到着した。
夕暮れということもあり、京の街並みは紅く染まっており、夏の暑さも過ぎ去ろうとしている気配がした。
肌に汗は伝うけれど、風が吹くたび髪が後ろになびいて心地よい。
京は神社仏閣が多く、昔ながらの風情ある景色にホッと安堵する。
京も帝都に負けず劣らず発展を遂げているが、なんでも建設していくチグハグさはなく、景観維持が重視されており目に優しい光景だった。
「媛巫女の住む御殿はこのあたりと聞くが……」
道中、人づてに媛巫女の情報を集めてまわりこの場所に行き着いた。
「ママ……」
蛍が私の袖を掴み、顔を見られたくないと埋めてくる。
元々蛍は母親のところにいた。
どんな事情があったにせよ、蛍からすれば母親と離れることになって不安で不安でたまらないはず。
いきなり知らない家で暮らすよう連れてこられ、そこでも愛情を受けることなく「鬼子」と忌避された。
最初はどう接すればいいかわからず、そこに紫暮との婚姻話が出て転がるように連れて出た。
目まぐるしい環境変化に苦しめてしまったけれど、南条家から抜け出して蛍と向き合い、今では涙が込み上げるほどに愛おしい存在になっていた。
「ママに会いに行こうね。楓もいるといいんだけどなぁ」
「かすみは……楓にあいたい?」
袖から顔を出し、丸っこい目をして見上げてくる蛍。
その心づかいといじらしさが琴線に触れ、たまらずその場に膝を着いて蛍を抱きしめた。



