あやめも知らぬ恋


「三、四日もあれば京に着く。本当は飛んだ方が早いが、速度に花純も蛍も耐えられないだろうからな」

「で、では私が運転を……」

「出来ないだろう?」

ニヤリと口角を上げられると、グッと引き下がるしかない。

たしかに免許はないので運転が出来ない。とはいえ紫暮だって地上の許可証なんて持っているはずはーー。

「免許はある」

とことん逃げ道は奪われてしまった。
これはもう頼るしか道がない。
だが頼りっぱなしは嫌なため、何か紫暮に返せるものがえればと思案した。

「では京までの道。紫暮様にお願いごとがあれば聞きます」

「ほぉ?」

「マッサージでもなんでも! お料理も食べたいものがあれば帰ってきてから作りますよ! 最近だとオムレツはプロ級に……」

顔前に影がかかって顔をあげると、爽やかなミントの香りと共に紫暮の唇が降ってきた。

イタズラに口内をかき回され、チュルリと音をたてて舌を突き、銀の糸を伸ばして唇が離れた。

卑猥な繋がりに私は手の甲で口元を隠し、思いきり背中を仰け反らせる。

「帰ったら番う。ケジメをつけて、花純を嫁にするさ」

「きゃっ!?」

足元が浮き、紫暮の腕に尻をのせて抱き上げられる。

いつもより高い視点に頬を熱くしていると、下から見下ろす紫暮と目が合った。

今、私に出来る愛情と感謝なんてこれくらいしかない。

紫暮の両頬を包み込み、優しいキスの雨を降らせた。