あやめも知らぬ恋

「や、約束していただけますか? 楓を見つけて、蛍ちゃんと会わせるまでここに置いてくださると。それさえ守っていただけるなら私、しっかりとお勤めさせていただきます」

立ち位置だけははっきりさせたい。

自分のためにも、蛍のためにも。

だが直接的な言葉にするのはためらってしまい、最後はぼそぼそとした声になってしまった。

それに紫暮はクスリと鼻を鳴らして笑う。


「わかった。結婚を条件に。花純の望みを最優先に。安心できるよう努めよう」

喜ばしい言葉のはずなのに、胸がチクリと痛む。

鬼子が番になるはずもないのに、紫暮は心から愛でようとしている。

(私を好きというより、番だから欲しがってるだけ……)

今は”番ではない”ときっぱり言いきれる材料がない。

紫暮が反応している以上、私は受け入れるしかないので罪悪感はあおられるばかり。

蛍の安全を対価に、番であるとささやく紫暮の好意をしようする。

なんてあざとい行動かと鼻で嗤い、私の誤りを正すより己の目的を叶えることを優先した。

(というか、求婚は撤回されないのね……)

本気で紫暮が行動をすれば、おそらく私の心はわしづかみにされる。

それは避けなくてはと意思を固め、”番ではない”と心に言い聞かせて優しさを愛情と勘違いしないよう背を背けた。

恋に至らないもの寂しさに、私は蛍を抱きしめて守り抜く覚悟を強めていった。