これも惚れた弱みと言うべきなのだろうか……。
結局、久美子を支配したのは美しい殿方への独占欲、周りに誇示したいプライドの高さだった。
そして何より、南条家を一人で支えてきた苦悩と鬱憤を刺激されて狂気的な思い込みをしてしまったんだ。
ちょっとしたことでこうも崩れてしまうのはいささか虚しいものがある。
片想いをしていた孝成からすると一生癒えぬ傷をつけられたようなものだから。
「どうか、ご無理はなさらず。南条家にとっても、西賀家にとっても良い方向へ進むことを祈っております」
それ以上、かける言葉が見つからなかった。
すると孝成が立ち上がり、苦悩のにじむ顔を深く腰を折って隠してしまう。
唐突な行動からは孝成の苦境に立たされた状況を明確に示していた。
「僕は西賀家で落ちこぼれ扱いで、南条家の婿入りもただの政略結婚として受け入れていた」
西賀家の詳細はわからない。
だがなんとなくではあるが、孝成の立ち位置と私の境遇は大して差がないのではないかと想像した。
「僕は……君が僕より辛い目に合っていることに安心してたんだ。……鬼子である君を見下して己の平穏を得ていた弱虫だった」
「孝成さ……」
「申し訳、ございませんでした。ごめんなさい。本当に……」
自分を守るために誰かを下に見る。よくあることだ。
非を認めることは難しい。
このことで私が傷ついていたわけでもないが、うら切ない気持ちを消しきれないのは、見知らぬ外の人だったから。
謝罪をする孝成に、私は何も言葉を告げなかった。
いや、何も言えなかった。
孝成が南条家に戻る後ろ姿を見送って、一つの別れを身をもって実感した。



