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夜になってようやく落ちついたような気がした。
蛍を寝かしつけたはいいものの、どうしても眠れなくて那波に声をかけて夜風を浴びに行く。
このお屋敷に来てずいぶんと時間が経過したが、日に日に愛着がわくとともにここにいる罪悪感も生まれた。
(鬼の誘惑……)
梨亜奈の前では強気にものを申したが、一人になった途端、自信が引っ込んでしまった。
自信というよりは虚勢。
本心ではあったが、全肯定してまわりを吹き飛ばせるほどキレイなものではないと知った。
この恋は、誰が許してくれるのだろう。
番を定める者がいるならば、その導きを得られなかった者には罰が下るだろうか。
考えれば考えるほど、とんでもないことに紫暮を巻き込んでしまったと血の気が引けた。
チリリリーン……。
風鈴の音、秋が近づく夜の涼しさに洗いざらしの髪を撫でる。
「紫暮様……」
月の光を背に、背中に雄々しい青の両翼を生やした紫暮が私の前に降り立つ。
縁側に置いた硝子ランプと庭の灯籠の明かりだけでは心もとないはずなのに、紫暮の瞳がやけにハッキリと見えた。
「どこかへ行かれていたのですか? 髪が濡れているではありませんか」
風邪を引く、と手を伸ばせばガッと力強くその手を紫暮に捕まれた。
驚きに魅入っていると、紫暮のぎらついた瞳が私の赤い瞳に近づいていく。
「何のイタズラかと思った」
手首を掴む手に汗がにじむ。
肩に紫暮がもたれかかってきて、濡れた髪のせいで浴衣に染みてしまうも突き放すことは出来ない。
ずいぶんと弱々しい声だと首を傾げると、紫暮はやけくそに私の首に牙をたてた。



