あやめも知らぬ恋

蛍に出会う前から私の望みは、行方不明になってしまった楓を見つけることだった。

行方不明になってからの四年間、ずっと楓の手がかりを求めてひっそりと動いてきたが、何も見つけることは出来ず。

十日前に楓の娘と名乗る蛍が現れた。

これは楓に繋がる道が開かれたのかもしれないと、希望を抱く。

蛍を守り抜いてみせるから。

楓に会わせるためならば私は無様であろうとも何にだって縋りついてくんだ。

「なんでも構いません。ここに置いていただけるならこの身を紫暮様のお好きに……。ただ、蛍ちゃんだけはここで一緒に暮らすことを許して――」

「わかった」

気を張りつめて申し出たが、目の前から返ってきた答えは存外あっさりとしていた。


「気持ちはわかった。番のお願いを聞くのも俺の役目だ」

「あ……あの……?」

戸惑う私に紫暮はにっこりと完成された笑顔を向けてくる。

まるで氷の貴公子が滅多に見せない甘ったるさを表したみたいな、格別の眩さだ。

「少し早いが、子が出来たと思えばいい。双子の弟の娘ならかわいいものだろう」

「えっ……ぇえ……? どういう意味で……」

「俺の番は花純だ。他はありえない。とはいえ、花純は竜人でないのだから、竜人の考えとは違うだろうし、今に至っては事情もあるからな」

どうやら紫暮は私の譲れないこととして蛍を認識したようだ。

番であることに変わりなく、結婚しないという考えはそもそも弾かれていそうだが。

番とは初対面からここまで折れずに求愛出来るもの?

愛情というよりは、当たり前にそれを受け入れているように見受けられるが、紫暮の淡白な表情が原因か。

そこに心が備わっているかは別問題のような気がしてしまった。