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行く先々であやかしの情報を聞き、綾芽が退治しに行く。
女一人での旅はどうかと思ったが、綾芽は巫女としてかなり優秀なようで並大抵の男は近づくことも敵わなかった。
馬鹿力であり、気配に敏感で、隙がない。
一人でも平然とした姿はとことん女らしくないと、紫暮は面白おかしいと笑って”相棒”となっていた。
「いやぁ、竜人が相棒とはまさに無敵だ」
軽口を叩きながらも笑みを絶やさず、姿勢を正し、凛とした横顔で進み続ける。
綾芽とはそういう巫女だと思っていたが、最終的にはまったく異なる認識となった。
「鬼が出るときいて来たが……」
鬼の噂をたどり、ようやく出会えたと絢芽は弓を構える。
剣と弓を使い分ける綾芽であったが、特に弓裁きは達人の域。
本数が無限にあれば、弓で戦い抜ける実力者であった。
「鬼だが……鬼とは思えないな」
「ごっ……ごめんなさい……」
(嘘だろ……)
鬼とは怨念が固まって誕生したもの。
起源を考えれば自己中心的で暴力的、荒っぽさは他のあやかしに勝るはず。
だが目の前で腰を抜かす二本角の鬼はとてもではないが、鬼らしさが全くない。
綾芽に矢を射られ、顔面スレスレに刺さったことで腰を抜かし、メソメソと泣いている。
村を荒らしているとされる鬼とは別人だろうと、綾芽は肩を落として鬼に近づいた。
「泣くな。お前、男だろう?」
「ひぃっ! ごめんなさい……! 何もしないから退治しないでぇ……!」
さすがに悪意のない相手を無理やり退治はできない。
退治とはいっても、あやかしが生きる世界への道を開くのが巫女の役割。
悪いこともしない。
帰る場所もない。
あやかしにも人格はあると綾芽は手を引いた。
「このあたりで悪さをする鬼が出ると聞いた。心当たりはあるか?」
「えっ……と……あるといえばある……?」
「ハッキリ言わんか、泣き虫が」
「あああります! ごめんなさい……」
「なぜ謝る。怒っていないし、謝られる理由もない」
(この匂い……。そういうことか)
綾芽は不服そうにしているが、嗅覚が人よりもずっと優れた紫暮には鬼の歪さが嗅ぎ取れた。
ズンズンと大股に進むと、鬼の着物を掴んで思いきり肩から破る。
鬼は「キャー」と女みたいな悲鳴をあげたが、あらわになった肌に綾芽が目を見張り、表情をしかめた。
「……なるほどな。少し考えを改める必要がありそうだ」
後に判明したのは村を荒らしていたのは、他のあやかしの仕業ということ。
鬼はまったくの無実だった。
さらに鬼の身体には石を投げられた打撲痕が多数見られ、古傷も多くあると判明した。
綾芽は人を襲わない鬼と判断し、種族のわりに貧弱な男を強引に旅につれていった。



