「ずっと考えた。俺は誰を愛してるんだって。俺の番は誰だって」
胸がズキッと痛む。
聞きたいような、聞きたくないような……。
不安定さに私はだらりと伸ばしたままだった腕を曲げ、紫暮の着物に指を引っかけた。
(番は……梨亜奈さん。私はニセモノ……)
ひまわりのような長い髪を二つに結った若々しい竜人。
まぶしく照りつける太陽のように自信に満ちた、自己主張のはっきりした女性だ。
対して私は卑屈で、自分の気持ち一つ口に出せない臆病者。
紫暮の番としてふさわしいか、こうもハッキリとした明暗に分かれるのだから答えは出ている。
これは私が無自覚に使ってしまう誘惑で、紫暮の心を惑わせているに過ぎないと――。
「花純。聞いてほしいことがある」
私を気づかい、言葉だけで顔色を覗こうとはしない。
怯えていては紫暮の本当の言葉も拾えないだろう。
もし、今ここで言葉に耳を傾けたら”私のための想い”を見つけられる?
そんなものはないと知りながら、こうも身を斬られるような苦しさに身をゆだね続けるのか?
――あの時と逆だ、と息を呑む。
蛍の気持ちを聞いたとき、私はどう蛍に接していただろう。
答えを焦らせてはいけない。
自分から心を開かなくて蛍に届くはずもないと、口にするのを怖がっていた想いを伝えた。
今は紫暮が心を開いて、何を考えているか伝えようとしてくれている。
心が見えそうな時、拒絶するのは余計に恥ずかしい。
紫暮が心を開いてくれているのに、私が開かないのはズルいと、蛍と繋いできた時間が教えてくれた。
「――はい」
消え入りそうな返答に紫暮は私の顔を凝視してくる。
花純は涙でぐしゃぐしゃになった顔を、決死の想いで微笑ませて紫暮の手を両手で包み込んだ。
「つ、番ではない、です。でも、否定したくない……から。聞かせてください」
「……あぁ」
長いまつ毛がふせられ、強張っていた頬がゆるんで唇がやわらかく笑んだ。
まつ毛の隙間からのぞく空色に、自由な竜人を見たと懐かしくなって私もまた微笑んだ。



