あやめも知らぬ恋


やめて。苦しいの。

舌が奥に押し付けられるたびに息が出来なくなって、ぐちゃぐちゃに溶けてどちらの唾液がわからなくなる。

酸素恋しさに口を開けばますます深く重なろうとしてくるのでキリがなかい。

喉に流し込まれる竜人の激情。

下へ下へ落ちていくほどに熱くなり、胸だけでなく下腹部がキュウキュウ音を鳴らして締めつけが強くなる。

嫌だと否定しても、身体は紫暮を欲して甘く誘惑するのを止めていなかった。


舌と舌が触れあう湿った感触。

どちらが毒を流したのか。

先に汚染されたのはどっちだ?

少し距離が開いてリップ音が鳴ると、耳の奥まで蹂躙される。

またぬめりと奥に伸ばされて、口蓋を滑って絡みつく。

ようやく空気を取り込めたとき、涙は止められなくなって目尻から落ちると耳に流れていった。

後頭部を引かれると、紫暮の肩に顔が埋まる。

互いに上下する呼吸を感じながら、私は唇を噛みしめて肩をすくめて目を閉じた。

「俺は花純が好きだ」

紫暮の妖艶な声が耳に直接届く。

耳たぶを甘噛みされ、喉奥で声を漏らすと頭頂部や額に何度も唇が降ってきた。

何度も向けられた好意に胸が締めつけられ、偽りと知りながら愛情を向けられることに頬が熱くなった。

「わ、たしは……鬼子です。紫暮様の番じゃ……」

「大事なのは”番”だからか? 一言で片付く想いなのか?」

詰め寄る言葉にどちらの反応もできない。

汗ばむ身体に余裕がなくなり、感じる熱さが紫暮のものなのか、はたまた季節の熱なのかも判断できずにいた。