「アタシはずーっと番に出逢えるのを待ってました! 高貴な方と結ばれる! そう信じて、やっと旦那様に出逢えた! なのにどうしてよ!!」
「……すまない」
本当に申し訳なさそうに目を伏せて、紫暮は手のひらに氷の結晶を生み出すと梨亜奈に向かって放つ。
パチパチと音を立てて梨亜奈の足元から凍りついていき、あっという間に梨亜奈は氷漬けにされてしまった。
「紫暮様なにを!!」
「大丈夫だ。彼女は竜人だ。明日には氷も溶けて出られるだろう」
人間ならば数分で死に至るだろう。
竜人とはそれだけ屈強で神に祝福された生き物。
怨念から生まれたかもしれない鬼の血を引く者と真逆の尊さ。この穢らわしい身を紫暮に触れさせるのは耐え難いと、身を捩って逃げ出そうとした。
「逃げるな。もう俺は優しくしない」
熱い吐息混じりの声に身体は勝手に震えてしまう。
これ以上はダメだ。
気がおかしくなってまた取り返しのつかない事態を招いてしまう!!
「ごめんなさい……! 私、全然自覚なかったんです。でもニセモノってわかりましたから。紫暮様はどうか梨亜奈さんと幸せになってください。私は蛍ちゃんと京へ出ますので!」
「――何を言っている?」
荒々しく柱に背中を打ち付けられ、反動で涙がはじけ飛ぶ。
思わず息を引っ込めると紫暮の顔が近づいて唇に涙を吸い取りだし、勝手に声が漏れるのが嫌で紫暮の胸を押して抵抗する。
「やめてください! 私はもうっ……!」
腕で赤くなった顔を隠し、乱れて何度も横に首を振った。
それを受け、紫暮は目を鋭くして口を開き、空気を押し出すようにゆっくりと声を出す。
「離れるのは許さない。ーー俺の恋人は。妻となるのは花純だけだ」
一体どういうこと? と考えるより先に後頭部に手がまわり、小さな唇に覆いかぶさるように紫暮の口が重なった。
「んっ……! んんっ……は、しぐっ……!」
のまれてしまう。こんなこと、ありえない。
これもまた竜人を誘惑している結果なのか?
だったら突き放さなくてはと理性で考えようとするも口のなかで距離を詰めようとされれば思考は吹き飛んだ。



