また次の日も蛍とともに外へ出る。
全く手がかりは得られないが、なんでもいいので取っ掛かりが欲しい。
***
理由さえ出来れば踏ん切りがつく。
だが同時に自己嫌悪も酷くなった。
たしかに蛍には楓と母親、三人で家族を取り戻してほしいと願っている。
嘘偽りのない思いのはずなのに、今は紫暮のもとから離れる理由付のために利用しているみたいだ。
何よりも大切で優先したいはずの蛍より、自分の事情を押し付けている。こんなのは嫌悪せずにいられない。
まさに鬼だ。
身勝手で、自分が悪いのに周りに八つ当たりしたくなる怨念に生きる者。
鬼の起源は案外〝怨念から生まれた人間〟なのかもしれないと、自分と重なる部分が多すぎて笑うしかなかった。
「かすみ、ここ……」
見覚えのあるエメラルドグリーンの時計塔を見て蛍が足を止める。
「銀座に来るの久しぶりだね。車を出してくれた那波さんには感謝しないと」
那波は変わらず陰ながら見守ってくれており、こうして足を運ぶには難しい場所へは車を出してくれる。
帝都は広い。私一人ではとても回りきれず、一人では何も出来ないちっぽけさも思い知らされた。
「すみません。人を探しています。南条 楓という男性で、見た目はーー」
手当り次第に尋ねていくのは無謀だ。
これだけたくさん人がいる中で楓を知っている人がいるはずもない。
だが何のツテも持たない私にはこれが最善で精一杯のこと。
それだけ私たちの生きてきた世界は狭かった。
私と楓の間に出来た空白の四年間はますます見える景色に差を生み、追いかけても簡単には追いつけなかった。
歩き続けているうちに蛍の足取りが重くなって、歩幅は小さくなる一方だ。
「少し休んでから帰ろうか」
「うん……」
相当疲れを溜めている。
これ以上は歩き回るのも難しいと判断し、私は蛍を抱き上げて情報収集は一旦切り上げることにした。



