あやめも知らぬ恋

白銀の髪が頬をくすぐり、顔が引かれると空色の瞳に泣くに泣けない私が映っている。

「気負いすぎ。花純が頑張っているのは蛍もちゃんと感じ取っている」

「で、でも……! また嫌な思いさせちゃった! なんで、うまくできない……」

「二人とも緊張しすぎなんだよ。蛍は幼いからビックリしやすいだけ。それと、寂しいだけだ」


寂しい? と顔をあげると間近にせまった紫暮が私の額に唇を落としてきて、とっさの反応で紫暮を突き飛ばそうとしてしまう。

すると紫暮はケラケラと子どもっぽく笑いだし、親指で私の涙を拭ってから大事に大事に抱きしめた。


「ほら、ビックリすると勢いがつくだろう? 蛍は感情を押さえ込めるほど器用じゃない」

「いつも、蛍ちゃんはなにも言わない。……私のことが嫌いだから」

「我慢してるだけだって。怖いんじゃないか? 花純もいなくなったらって」

その言葉にハッとし、私は気が気でないと怯えた表情をして紫暮の着物を汗ばんだ手で握りしめる。


「いなくならない。だって蛍ちゃんが大事で……。か、楓の子だからというのも大きな理由ですが、私は私で蛍ちゃんが大事だから……!」

最初は楓の子だと聞いて驚きが大きく、どう向き合えばいいかわからなかった。

だがすぐに愛おしいと思うようになり、小さな存在を守りたいとやさしい気持ちを抱いた。

四年前から行方不明の楓。

手がかりさえつかめない楓を思い、せめて蛍は守ろうと覚悟を決めた。

きっかけは楓の子だからではあるが、今はそれ以上に蛍だから大事に想っていた。

いつか家族のもとへ戻る日まで、たくさんの愛情を与えたいと。

――弱さが愛情を曇らせていた。

「ずっとわからないのです。どうして楓が蛍ちゃんを置いていなくなったのか。母親は誰なのかって。どうしてこんなにもかわいい子を手放したのかって」