あやめも知らぬ恋

それに告白が成立していたとしても、結婚するにはあまりに早すぎる。

それこそ紫暮が私を番だと言い、無条件の愛情を注いでくれるように……盲目に……。


「……悲しくなるからやめよ」

考えると負のループに陥ってしまう。

同じことを何度もぐるぐると、果てのない問答を繰り返して答えは出ないまま脳が疲れて、身体に伝染する。

疲れていくはずなのに、眠れなくなる矛盾を抱え込むことになるならはじめから考えないと自制するしかなかった。

気を紛らわそうと手紙の続きを読めば、日付を見るとあまり余裕はない。

届くまでの時間差を含めても、返事を出してすぐに向かう形となる。


(家族扱いなんてされたこともないのに……)

南条家の恥とされながら生きてきたので、どの顔をして行けばいいのか迷いが出る。

家族として? それとも使用人として?

行かないという選択肢はないようなもの。


「どうしよう……」

「花純さん、どうされましたか?」

「きゃっ!?」

買い物から戻った那波がキョトンとして首を傾げている。

手紙をみる顔がそうとう険しかったようで、心配そうに見つめてきて気恥ずかしさに唇を丸めた。


(紫暮様に話す前に……いいよね?)

「おかえりなさい。えっと……南条家から手紙が届きまして」

「手紙……ですか」

私の持つ手紙を見て、内容を確認すると那波は眉をひそめて口元を手で覆う。

「中で話しましょう。外は暑いですから」


台所に残る蛍に声をかけ、ささっと片付けを終わらせると縁側に三人並んで腰かける。

風が吹くと風鈴が爽やかな音を奏で、日光の熱さをやわらげてくれた。

「その日は自分が蛍さんを見ています」

「えっ!? でもそんな……」

「蛍さん。花純さんが紫暮様と二人で外出されてもいいですか?」

「えっ、えぇ? 那波さんってば、何を言って……」