「花純、行こう。蛍が待ってる」
「あっ……」
密着していた身体を離し、腰を折って手を差し伸べてくる。
身体は熱いのに指先は冷たい。
この怯えを感じ取られたくないと願いつつ、真っ直ぐに私にだけ向けられる手に胸が熱くなって、自然と手を握り返していた。
「なっ……何をおっしゃっていますの!? 鬼子を二人も! その者たちは存在が罪! 南条家の外にお出しするわけにはいきませんわ!」
「外に出さない……か。“瀧澤“と結婚するために送り出してくれたと思っていたのだが」
「そっ……れは……。まっ、間違いなのです! 本当はわたくしが行こうとしたのです! 鬼子と知らないかもしれない! 鬼子を差し出すなんて出来ませんもの! それにも関わらずその鬼子が騙して向かったのです!」
久美子は強ばってはいたが笑顔を取り繕い、自分こそがあなたの妻だと主張し紫暮に手を伸ばす。
しかし腕に久美子の指先が触れようとして、紫暮は舌打ちをすると目に閃光を走らせて久美子の手を振り払った。
「きゃあっ!?」
「許可なく竜人に触れようとは、お前は本当に巫女か?」
「わ、わたくしは……」
声を震わせ、怯えた目をする久美子。
紫暮の気に圧倒されているはずなのに、その見目麗しさを求める本能が期待を失わずに艶めいている。
恐怖よりも手にしたい欲求。それほどまでに紫暮の美しさは人の心を支配する輝きだった。
南条家の当主として言葉を失う白彦と、どうにか紫暮の気を引こうとぎこちなくも笑みを貼り付ける久美子。
対照的な二人の態度に、紫暮は忌々しいと拳を握り、爪を手のひらに立ててしまう。
血の匂いが嗅覚を刺激したことで花純は目をかっぴらいて紫暮の指を強引に解いた。
「爪が……。あまり力を入れると血が出てしまいます……」
あまり紫暮には怒ってほしくない。
私には優しくしてくれるが、内心はうじうじしててめんどくさい女だと思っているかもしれない。
鬼子が番なんて信じたくないだろうが、尾が証明しているせいで気持ちを鎮めようと必死なはず。
憤りを明かさない紫暮に、番のふりをして要求をぶつける。
恥知らずの鬼子には、どうしても叶えたい楓との再会という目標があるため、悪女になろうともなりふり構っていられなかった。
「あっ……」
密着していた身体を離し、腰を折って手を差し伸べてくる。
身体は熱いのに指先は冷たい。
この怯えを感じ取られたくないと願いつつ、真っ直ぐに私にだけ向けられる手に胸が熱くなって、自然と手を握り返していた。
「なっ……何をおっしゃっていますの!? 鬼子を二人も! その者たちは存在が罪! 南条家の外にお出しするわけにはいきませんわ!」
「外に出さない……か。“瀧澤“と結婚するために送り出してくれたと思っていたのだが」
「そっ……れは……。まっ、間違いなのです! 本当はわたくしが行こうとしたのです! 鬼子と知らないかもしれない! 鬼子を差し出すなんて出来ませんもの! それにも関わらずその鬼子が騙して向かったのです!」
久美子は強ばってはいたが笑顔を取り繕い、自分こそがあなたの妻だと主張し紫暮に手を伸ばす。
しかし腕に久美子の指先が触れようとして、紫暮は舌打ちをすると目に閃光を走らせて久美子の手を振り払った。
「きゃあっ!?」
「許可なく竜人に触れようとは、お前は本当に巫女か?」
「わ、わたくしは……」
声を震わせ、怯えた目をする久美子。
紫暮の気に圧倒されているはずなのに、その見目麗しさを求める本能が期待を失わずに艶めいている。
恐怖よりも手にしたい欲求。それほどまでに紫暮の美しさは人の心を支配する輝きだった。
南条家の当主として言葉を失う白彦と、どうにか紫暮の気を引こうとぎこちなくも笑みを貼り付ける久美子。
対照的な二人の態度に、紫暮は忌々しいと拳を握り、爪を手のひらに立ててしまう。
血の匂いが嗅覚を刺激したことで花純は目をかっぴらいて紫暮の指を強引に解いた。
「爪が……。あまり力を入れると血が出てしまいます……」
あまり紫暮には怒ってほしくない。
私には優しくしてくれるが、内心はうじうじしててめんどくさい女だと思っているかもしれない。
鬼子が番なんて信じたくないだろうが、尾が証明しているせいで気持ちを鎮めようと必死なはず。
憤りを明かさない紫暮に、番のふりをして要求をぶつける。
恥知らずの鬼子には、どうしても叶えたい楓との再会という目標があるため、悪女になろうともなりふり構っていられなかった。



