「驚かせてすみません。この子は蛍ちゃん。私の……私の双子の弟の娘です」
誤解はしっかり解く。
その上で蛍の手は絶対に話さないと意志を込め、汗ばむ手で何度も蛍の手を握り直す。
彼からすると婚姻相手が爆弾を連れてきたようなものだ。頭を抱える問題なのも無理はない?
それでも私はこうするしかなかった。
蛍を守る為ならば、これ以上元いた南条家に居られないと判断し、求婚先を頼る以外に選択肢をなくしていた。
これで追い出されればその日暮らしの危険が付きまとい、母代わり失格の生活になる。
だから何としてでもこの婚姻を利用するしかなかった。
「そういえば双子だったな。楓……というのが弟か?」
大きなため息がして、青年は悩ましいとこめかみを押さえ込み、眉間に深いシワを寄せた。
「そいつは今どこにいる?」
もちろん、頼る以上話す気ではいた。
何も言わないのは礼儀に欠けるもので、最低限迷惑をかけない意思を伝えなくてはならない。
とはいえ、ここまでの道中に必死で考えてきた言葉が頭から飛んでしまい、狼狽えて青年の目を直接見ることが出来なくなっていた。
改めて考えると、花純は母親と楓以外ろくに本音で話したことがないと気づき、言葉に悩んでしまう。
そこに肩を落とすため息を吐く音がした。
早くも受け入れてもらえそうにない。
結婚はダメでも、下仕えとして置いてもらえないかと提案を切り替えた方がいいと、私は深く腰を曲げ、青年に懇願した。
「お、弟が……ゆ、くえ不明、なんです……」
「行方不明?」
意外にも穏やかな声で相づちが返され、私は会話が続きそうな予感に詰めいるべきだと気持ちを加速させる。



