蛍を間に挟む形で鍛えられた腕に寄せられ、足が絡みだす。
(ひっ!? な、なに!? こんなのまるで初夜……!)
「手は出さない。蛍がいるからな」
「あっ……!」
当たり前だ、と訴えきれず泣きっ面になる私に紫暮はくしゃりと目元にシワを刻んで笑うだけ。
初対面の人に嫁いでそのまま身体を重ねる、なんてことは世の中当たり前。
女性に拒否する権利はないに等しい。
なのに紫暮は私を番だと求めながらも、無理強いはしてこない。
蛍を大事にする意思も見せてくれたことで、うららかな暖かさに泣きそうになった。
腕の中で蛍がもぞもぞと動き、顔を出す。
至近距離で蛍と目が合うと気恥ずかしくなり、唇を丸めてなんとか見つめ返した。
「おやすみ、蛍ちゃん。……おやすみなさい、紫暮様」
「おゃ……み……」
か細い蛍の声に胸が熱くなる。
楓が見つかるまで、精いっぱい蛍を愛し抜こう。
絶対に愛されるべき子なのだから、楓がどうしていなくなってしまったのか理由を知って、ちゃんと親子として生きてほしい。
(そのとき、私はどうなっているのかな……)
紫暮にやさしくされると罪悪感がつのる。
番だと好意を示してくれるが、おそらく誤りのため気持ちを寄せるのはためらわれる。
竜人という尊き存在に、鬼子が番として一緒にいるのは許されない。
少しでも紫暮を傷つけることなく、平穏に感謝でお別れが出来ればいいと願うも、どこかで否定したい気持ちもある。
混ざりすぎて不透明な気持ちに、今は考えるのをよそうと目を閉じた。
額にやさしい温もりが触れた気がする。
だがあまりに人肌が心地よく、ウトウトして一瞬で眠りにおちた。



