あやめも知らぬ恋

縁側を歩いていると、閉め忘れた木戸の向こう側に群青色の夜空が見えた。

半分に浮かぶ月と、時折空から流れ落ちる星に魅了され、目が離せなくなる。

楓もこの夜空を観ているだろうか……。

「楓。早くしないとどんどん大きくなるんだからね」

小さな手を握り、私は木戸を閉めると蛍と部屋に入る。

これから布団を敷いて寝よう、そう思っていたのに襖を開けると……。

「戻ったか」

「えっ!? し、紫暮様!?」

「サイズが合っていてよかった。少し気が早かった自分に感謝だ。那波もまたタイミングの良いデザインを選んできたことだ」

部屋にはなぜか紫暮がおり、敷布団の上で本を読みながらあぐらをかいていた。

少し気が早かったとはどういう意味だろう?

追及すると墓穴を掘ることは容易に想像出来たため、ぐっと口を噤む。

そんな私の心理を見透かしてか、紫暮はニヤリと口角を上げると本を閉じ、膝立ちに近寄って蛍を軽々と持ちあげた。

「軽いな。子どもとはこんなにも軽いものか」

「…………」

「そう怒るな。これからもっと食べて肉をつけろ」

紫暮のスキンシップに蛍はムスッとしてそっぽを向いてしまう。

だが決して突っぱねようとはしておらず、むずがゆそうにする様子に、紫暮は面白おかしいと笑いだした。

そして蛍を抱き寄せると、転がるように敷布団の上に倒れて布団を被せる。

一枚の敷布団に紫暮が蛍と一緒に寝転んでしまったので、私はどうしようかとあたりを見回して布団をさがした。


「何している? 花純も来い」

スッと手を差し伸ばされ、一気に私の頬は熱を高めてお風呂上がりの潤いを蒸発させていく。


「こっ!? いえっ! 私は……!」

動揺に声を震わせていると、じれったいと言わんばかりに紫暮は私の手首を掴み、無理やり引っ張って布団の中に収めてきた。